第136話

今日の業務も無事終了。 帰ったら刹那や子供達に出張の話をしないとな。


荷物を纏めていそいそと自宅へ帰宅した。


マンションに到着し玄関の扉を開け


「ただいま~」


多分俺の耳に聞こえてくる声は明るく " お帰りお父さん " と言う久遠の声だろうな。


そう想像していたのだが


「お帰りなさい圭介さん♡ お風呂にしますか? それともご飯にしますか? それとも…ウ・チ・に・し・ま・す・か?♡」


聞こえてきたのは俺の愛しの妻である刹那の甘い声だった。


「ただいま刹那。第一声が刹那の声で幸せだよ。とりあえず喉が渇いたから葡萄チューハイかな?」


「んもぅ。圭介さんのいけず。ここは " 刹那を美味しく戴こうかな? " じゃないんですかぁ?」


「それは後の楽しみに取っておくね。 一番の楽しみは最後にする主義なんだよ俺」


「も、もぅ////// 圭介さんたらっ//////」


刹那は物凄く上機嫌になって俺の手からビジネスバッグを受け取り、若干スキップをしながらリビングへと向かって行った。 やっぱり俺の奥さんは世界一可愛いな。


リビングでは久遠と瞬がソファーに座りテレビを観ていた。 おっ、丁度皆居るから、夕御飯の前に皆に来週からの出張の事を話しておくか。


俺はネクタイを緩めながら


「刹那、久遠、瞬。お父さん来週から出張だから」



…………ん? どうした刹那? 何故俺を凝視してその場に固まる?


久遠は " お父さん、出張は何処に行くの? " とニコニコしながら聞いてくる。


瞬は " 良いなぁちょっとした旅行じゃん。お父さんお土産宜しく! その土地限定のお菓子が良いな " とお土産の催促をしてきた。


刹那の様子が少しおかしいのが気になるが、まぁ良いか。


「行き先は北海道のすすき野だ。お土産は北海道だから○い恋人でも買ってくるよ」


俺が笑顔でそう言うと、刹那は身体をプルプルと震わせながら


「あ、あの…圭介さん、出張っていつまでですか? 直ぐに帰って来られるんですよ…ね?」


「えっと、期間は1ヶ月だね。だから直ぐに帰るのは無理かな」


俺がそう答えると


" バターーーンッ!! "


刹那が真っ青な顔をしてその場に倒れ込んでしまった。


せ、刹那!? だ、大丈夫か!? 今倒れた拍子に後頭部を床に思いっきりぶつけたぞ!?


俺は慌てて刹那の元に駆け寄り、倒れた刹那を抱き抱えた。 ……あっ、気絶してる。


刹那を抱き抱えた体制でおろおろしていると、気絶していた刹那が急に目を醒まし


「こうしちゃ居られない!!」


と言って勢い良く起き上がり、寝室へと走って行ってしまった。


……呆気にとられその場で呆然とする俺、久遠、瞬の三人。


……はっ! そうだ! 刹那は何故寝室に走って行ったんだ?


俺は刹那の様子を確認する為に寝室へと向かった。 俺の後を久遠と瞬も着いて来た。


寝室では刹那が何かごぞごぞしている。 よく見ると、刹那は大きめのスーツケースに俺の衣類と自分の衣類をぎゅうぎゅうと詰め込んでいた。


「せ、刹那!? 何やってるの!?」


「見て分かりませんか? 荷造りをしているんですよ。1ヶ月分だからなかなか入らなくて。圭介さんも手伝って下さいよ! あっ、久遠、瞬。貴方達も支度をしなさい。えっと、久遠と瞬のスーツケースはあったかしら?」


も、もしかして……。


「せ、刹那さんや? もしかして一緒に着いてくるつもりじゃ」


「当然です!! 何当たり前の事を言っているんですか?」


「「「いやいやいやいや!!」」」


「俺は仕事に行くんだよ!? 分かってる!?」


「分かっていますよ? 何言ってるのですか?」


「お母さん!? 何故クー達も行く様になってるの!?」


「お父さんが1ヶ月も家に居ないんですよ? 着いていくのは当然の事でしょう?」


「学校はどうするのさ!? 1ヶ月も学校休んだら勉強遅れちゃうぜ!?」


「1ヶ月位なら大丈夫大丈夫。貴方達なら直ぐに遅れは取り戻せますよ」


「「「いやいやいやいや!!」」」


俺と瞬は刹那に近寄り刹那を説得に掛かる。 しかし刹那は聞く耳を持たず荷造りを止めない。


すると久遠が冷静にスマホを取り出して何処かに電話をし始めた。 そして電話先の相手と少し話をした後、スマホを刹那に


「お母さん、はい通話して」


と言いながら手渡した。


「今忙しいのに電話なんて」


そう言いながら刹那はスマホを自分の耳に当て


「もしもし?」


その後、刹那の動きが止まった。 そして電話先の相手と何か口論をし始めた。 電話の相手は誰なんだろう?


「久遠、電話の相手は誰なんだ?」


「ん? ばあばだよ」


久遠がばあばと言う人は一人しか居ない。お義母さんだ。


「ばあばならお母さんを説得してくれると思って電話したんだ」


流石久遠だ。機転が効く。


刹那は暫くお義母さんと通話し、通話後久遠にスマホを返した。そして引っ張り出していたスーツケースをクローゼットの中にしまい


「お母さんにめっちゃ怒られました。だから北海道に一緒に行くのは止めます」


とシュンとしながらそう言ってきた。


……お義母さん、刹那に何て言ったんだ? 暴走していた刹那が大人しくなるなんて……。


恐るべしお義母さん……。



何はともあれ、月曜日に俺は赤坂と共に北海道へ出張に出掛けた。 涙目で送ってくれた刹那の姿を背にして。




ここまで読んで頂きありがとうございますm(__)m


面白いと思われたら♡ ☆評価 コメント レビューを頂けたら嬉しいです(* ̄∇ ̄*)


今後とも拙作を宜しくお願い致しますm(__)m






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