第133話

愛娘 久遠のボタン操作によりビンゴのルーレットが回り、次々と数字が止まっていく。


……なかなかビンゴにならないなぁ。 かなり前にリーチになっているのになぁ。 早くビンゴにならないと憧れの4Kテレビが他の誰かの物になってしまうぞ。


焦りを感じだした俺。 そんな時、俺の横に座ってビンゴカードを真剣な表情で眺めていた瞬から


「いぃぃっやった~ぁ!! ビンゴだぁ!!」


と大きな声が聞こえてきた。


そしてすかさずその場に立ち上がる瞬。


「やったじゃないか瞬」


「へへっ。任っかせなさ~い♪ やっぱり持ってるなぁ俺♪」


瞬は揃ったカードを持って意気揚々と壇上に向かって歩いて行く。


「はい。次のビンゴになったのはこのイケメン少年だ。じゃあ皆に軽く自己紹介をお願いね」


幹事の男子社員からマイクを向けられ、自己紹介をする様に言われた瞬は、元気良く


「はい! 丹羽瞬と言います! 中学1年生です!」


「ん? 丹羽? という事は、君は営業一課の」


「はい! 丹羽圭介の息子です!」


……おっと、物凄く大きな声で俺の名前を呼ばないで欲しいなぁ。 お父さんめっちゃ恥ずかしいぞ//////


ほら瞬、お前の隣を見てご覧なさいな。 お姉ちゃんが怖い顔でお前を睨んでいるぞ?


瞬の隣では俺が言った通り、久遠がストップボタンを握り締めながら真っ赤な顔をして瞬の事を睨んでいる。


「……瞬ちゃん、クー 物凄く恥ずかしいよ。 後で瞬ちゃんとはオ・ハ・ナ・シ・ア・イが必要だね」





「じゃあ丹羽君、このBOXに手を入れて紙を1枚取ってくれるかな」


「はい! 分かりました!」


瞬が意気揚々とBOXの中に手を入れようとした時


「因みに丹羽君は何が欲しいのかな?」


と幹事の男子社員が瞬に声を掛けてきた。


「へ? えっと、本当は俺、さっきの兄さんが貰った最新型ゲーム機が欲しかったんだけど、もう無いから次の目当てのマウンテンバイクが欲しいんだよね」


「それは残念だったね。じゃあ是非マウンテンバイクを当てて持って帰ってね」


「あざっす!」


「じゃあ改めてBOXに手を入れてね」


瞬はBOXの中に手を入れてごそごそと中身を念入りに搔き回し、1枚の紙を


「これだぁ~~~~~っ!!」


と気合いが入った大きな声で勢い良くBOX内から取り出した。


そ、それは本当に恥ずかしいぞ瞬よ! 人前でそんな大きな声を出すんじゃありません!


俺は自分の顔が真っ赤になるのが分かった。 思わず俯いてしまった。


すると


" ゾクッ! "


いきなり背筋に強烈な悪寒が走った。 な、何事だ!?


俺の背筋に強烈な悪寒が走った原因は直ぐに判明した。 悪寒の原因は……刹那だった。


刹那の超絶綺麗な顔にあるこめかみの部分に青筋が見えている。 そして " ピクピク " と脈立っている。


「……瞬。圭介さんに恥を搔かせて……後でお説教決定です。これは覆りませんので覚悟しておきなさいね瞬……」


わぁ……刹那さん物凄くおこで御座いますわ……。 そんなに怒ったら駄目だよ? まぁ怒った刹那の顔も相変わらず綺麗だけどな。


「まあまあ刹那。そんなに怒らないで。瞬も悪気は無いんだと思うから」


「でもあの子ったら、圭介さんに恥を……」


「大丈夫大丈夫。少し恥ずかしかったけど、恥は搔いてないから。俺の顔に免じて瞬を許してやってくれないか」


「……圭介さんがそう言うなら今回は目を瞑りましょう。 ……全く圭介さんは優しいんだから……だからウチは圭介さんの事大好きなんです♡」


ホッ。刹那のこめかみから青筋が消えたよ。 良かったな瞬。お母さん許してくれたみたいだよ。


それはそうと、瞬が引いた紙の番号は " 50 " 


「……丹羽君、残念だったね。君に当たった景品は " 食用油の詰め合わせ " だったよ」


本当に残念そうに幹事の男子社員が瞬にそう告げた。


「…………マジで?」


「……うん。マジで」


「そ、そんなぁ~~!? 俺のマウンテンバイクがぁ~~!」


その場に膝から崩れ落ちる瞬。


……こればかりは仕方がない。その時の運だから。諦めるしかないよな。


俺は物凄くガッカリしてその場から動こうとしない瞬を迎えに行こうとした。 その時


「あ、あの。少し良いですか?」


と神谷君が幹事の男子社員に声を掛けてきた。


「あっはい。どうしました?」


「もし良かったらなんですが、この子が当てた食用油の詰め合わせと私の当てた最新型ゲーム機を交換するのは可能でしょうか? 私はゲームをする事はありませんので、貰っても宝の持ち腐れなんですよね。 でも食用油の詰め合わせは日常で使いますので、あると助かるんですよ」


「本人の了承があればそれは全然構いませんが」


「じゃあ丹羽君、君の景品と俺の景品を交換して貰っても構わないかな?」


「えっ、ほ、本当に良いのお兄さん?」


瞬は神谷君の顔を見ながらそう言った。 すると神谷君はニコリと笑いながら


「俺が言い出した事なんだから、君は全然気にしないで良いんだよ。 欲しかったんだよねゲーム機」


「は、はい」


瞬の返答を聞いた後、神谷君は一緒に着いてきていた水無月さんに


「朋美もそれで良いよね?」


「私は全然構いませんよ。雄二さんが決めた事に異議は有りませんから。それに、毎日のお料理には油は必要不可欠ですから助かります♪」


「ありがとう朋美。やっぱり朋美は最高の彼女だよ」


「そ、そんな////// 私は別に//////」


確かに神谷君と水無月さんは最高にお似合いのカップルだと思うよ。 でも、一番最高の女性は刹那だという事は譲らないけどな。


「じゃあ丹羽君、君の景品と俺の景品を交換だ」


神谷君は瞬に最新型ゲーム機を渡して、代わりに瞬が当てた食用油の詰め合わせを受け取る。 そして


「皆様、大変失礼致しました。どうぞ続きをお願いします」


と言って皆に向かって頭を下げた。 会場の皆から盛大な拍手が起こったのは言うまでもない。 一部の人間(営業二課の禿げ)を除いて。 禿げは忌々しそうな顔をして神谷君を睨んでいた。 ……あの禿げは今度全力でしばきあげてやろう。


「ありがとうお兄さん! 俺、めっちゃ嬉しい!」


「どういたしまして。君が喜んでくれて何よりだよ♪」


瞬は最新型ゲーム機が入った袋を大事そうに胸に抱えて俺の元に帰ってきた。


「良かったな瞬。あのお兄さんに感謝するんだぞ」


「うん! 俺、一杯感謝する!」


俺は立ち上がり、神谷君が居る場所に移動する。そして


「神谷君、水無月さん。家の息子の為に景品交換してくれてありがとう。感謝するよ」


と言って神谷君と水無月さんに頭を下げた。


「に、丹羽課長!! あ、頭を上げて下さい!! 本当に俺はゲームをしないので、交換してくれて助かったんですよ! な、朋美!」


「は、はい! 私も油の詰め合わせの方が有難いですので! 本当に頭を上げて下さい! お願いします!」


慌ててそう言う二人の言葉を聞いた俺は下げていた頭を上げて


「分かったよ。じゃあこの話はこれで終わりな。 神谷君」


「は、はい!」


「今度一緒に昼飯でも食べに行こうか」


「ぜ、是非!!」


「その時は神谷君の昼飯は奢らせて貰うからな。期待してろよ♪」


「そ、そんな!? 自分の分は自分で」


「これは決定事項だ。諦めろ」


ニカッと笑って神谷君にそう告げる。 すると神谷君はペコペコと頭を下げながら


「で、では、ご、ご馳走になります! ありがとうございます丹羽課長!!」


「おう♪ じゃあまたな♪」


そう言って俺は自分の席に帰った。





「今回の忘年会は楽しかったな。刹那、久遠、瞬。 楽しかったか?」


「はい♪ ウチは物凄く楽しかったです♡ 圭介さんの滅茶苦茶格好良い姿も見れましたから♡」


どうやら神谷君達との会話風景を刹那に見られていたみたいだ。 神谷君達に格好付けてたから少し恥ずかしいな//////


「クーも楽しかったよ♪ 劉ちゃんとずっと一緒に居られたし♡」


久遠は愛しの劉ちゃんとイチャイチャ出来た事が楽しかったみたいだ。良かった良かった♪


「もう最っ高♪ 来て良かったよ俺!」


瞬は最新型ゲーム機を抱えてニコニコ顔だ。 本当に改めて神谷君には感謝だな。


「じゃ我が家に帰りますか」


俺達丹羽家の4人はワイワイと話ながら忘年会の会場を後にしてマンションへと帰った。



因みに俺のビンゴの景品はと言うと……翼が生えると評判のエナジードリンクの10本セット(約2000円相当)だった。 俺が狙っていた4Kのテレビは、何とあの禿げが当てていた。


……物凄くムカついたのは言うまでもない。






ここまで読んで頂きありがとうございますm(__)m


面白いと思われたら♡ ☆評価 コメントを宜しければお願い致します。


これからも拙作を宜しくお願い致しますm(__)m





















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