第131話

忘年会も中盤に差し掛かった頃


" コンコンッ " とマイクの頭を軽く叩く音が会場に響き


「はい皆様! 盛り上がっている所をすみません! 今から○○株式会社忘年会恒例のビンゴ大会を始めたいと思います!」


今回の忘年会の幹事の男性社員からビンゴ大会開催の声が挙がった。


「それでは皆様お手元のビンゴカードを持って下さい。 そしてカードの真ん中のFREEを開けて下さいね。開けましたか? それでは今からビンゴを開始します。皆様壇上のスクリーンをご覧下さいませ」


いつの間にか壇上には大きなスクリーンが設置してあり、そこにはルーレットがデカデカと映し出されていた。 今回はこのルーレットを仕様してビンゴ大会をするみたいだな。


「行きますよ~♪ それではルーレットスタート! っとその前に」


幹事のいきなりのボケにやる気満々だった皆はその場にズッコケた。 そりゃそうだろうな。俺もズルッとなっちゃったもんな。


「皆様すみません。いや、僕がルーレットを回しても面白味に欠けるのではと思いまして。ですので、このルーレットボタンを僕じゃ無くてそこに居る可愛いお嬢さんに押して貰おうかな?と思うんですが。皆様どうでしょうか?」


幹事の男性社員が久遠を指差してルーレットボタンを押す係を指名してきた。


「えっ!? わ、私ですか!?」


久遠は自分の顔を指差して困惑した表情を見せている。


「うん。そう。お嬢さん君だよ。君みたいな可愛い女の子に手伝って貰えたらこのビンゴ大会もより一層盛り上がるとおじさん思うんだよね♪ どうかな? おじさんを手伝って貰えるかな?」


「え、えっと……お父さん、どうしよう?」


久遠は俺を見ながら俺に意見を聞いてきた。


良いんじゃないか? 確かにむさいおっさんの司会だけじゃ面白味に欠けるからな。


俺は久遠に向かって笑顔で頷いた。


「……お父さんのGOサインが出たので、僭越ながら私、丹羽久遠がそのルーレットボタンの係を勤めさせて頂きたいと思います。 皆様、宜しいでしょうか?」


久遠が恥ずかしそうにそう会場の皆に問い掛ける。 すると会場の皆から盛大な拍手が起こった。 ほら皆やっぱり久遠の様な可愛い女の子に手伝って貰いたいんだよ。 頑張れ久遠♪


「で、では……」


久遠が壇上に向かって歩き出そうとした時、司会の男性社員が


「ちゃんと自分のビンゴカードも持ってきてね♪」


「は、はい。分かりました」


久遠は慌ててその場に置いていた自分のビンゴカードを持ち、壇上へと向かった。


「姉ちゃん頼むよ! 俺、最新型ゲーム機が欲しいんだから!」


瞬が久遠に向かってそう声を掛けた。 成る程。瞬のお目当ては3等の最新型ゲーム機か。 あのゲーム機何気に高いから買ってやれないんだよな。 だってあのゲーム機58000円するんだぜ? ソフトを合わせたら60000円越えるんだから。 ……俺も何気にあのゲーム機欲しいんだよな。


「瞬ちゃん大声で煩いよ! もぅ恥ずかしいなぁ。 クーにそんな期待しないでよ! それに瞬ちゃんに都合の良い様にルーレットが止めれる訳ないでしょ!」


会場の皆から笑い声が挙がった。 笑い声と言っても馬鹿にした笑い声じゃ無くて、微笑ましくて可愛いと思った時の笑い声だ。


久遠は恥ずかしそうな顔で瞬を軽く睨みながら壇上へと上がる。


「はい。じゃあ宜しくお願いしますね可愛いお嬢さん♪」


司会の男性社員は微笑みながら久遠にルーレットのストップボタンを渡す。


「は、はい! 頑張ります!」


ぎこちない笑顔でそう答えた久遠。


「さて皆様、今度こそ恒例のビンゴ大会を始めます! 弟さんに最新型ゲーム機が当たる様に皆様祈ってあげて下さいね♪」


司会の男性社員がおちゃらけた感じでその場を盛り上げた。 当然ながら会場からは笑い声が。


「では行きます!」


スクリーンでルーレットが回りだし、久遠がストップボタンを押して今回のビンゴ大会初の数字を出した。




このビンゴ大会の景品は1番にビンゴになったからって1位の景品が貰える訳ではない。 ビンゴになった人は壇上に上がり、用意してあるBOXの中から番号が書いてある紙を引いて、その番号の景品を貰うシステムなのだ。


ちなみに今回の1位の景品はというと、2泊3日の旅行チケットみたいだ。 行き先は沖縄らしい。


俺的にはあまり興味が無いなぁ。 どうせなら旅行チケットより最新型ゲーム機か65インチの4Kテレビが欲しいな。 どちらか当たらないかなぁ。








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