第130話
忘年会会場に入り、席に座る丹羽家一同。 席順としては 右から俺・刹那・久遠・瞬の順番。
「クーね、こういった所でのご飯は初めてだから滅茶苦茶ワクワクしてるの♪ 早く始まらないかな忘年会♪」
「姉ちゃんと同じで俺も楽しみだな♪ 目の前の鍋が気になって仕方ないよ♪」
「こらこら2人共、そわそわしてはしたないですよ? 周りの人達を見てみなさいな。誰もそわそわなんてしていませんよ? 少し落ち着きなさい」
そわそわと落ち着かない久遠と瞬は刹那に窘められていた。 仕方ないんじゃないかな? 大勢の人に囲まれての夕飯は2人にとって初めての経験なんだからさ。
「「は~い」」
刹那に窘められて久遠と瞬は肩を落としてしゅんとしていた。 俺はその光景をみながらニコニコとしていた。
すると久遠が真向かいに座っている劉ちゃんを目ざとく見つけて、声は出さなかったが劉ちゃんに向かって手をブンブンと振りだした。 劉ちゃんも久遠に気付いたみたいで、久遠に向かって小さく手を降っている。
「こら久遠! 止めなさい!」
久遠は刹那に頭を軽くコツンと叩かれ
「あうっ。ごめんなさい」
と身を縮めてしゅんとなってしまった。 どうやら劉ちゃんも雪菜さんに怒られたみたいで、しゅんとしている。
間もなく我が社の社長が壇上に上がり、有難いお話(約5分程)をされた後、周りの職員同士で各グラスにビールを継ぎ、今回の忘年会の幹事の男性職員の乾杯の合図と共に忘年会がスタートした。
仲居さんが皆の目の前にある鍋の下に置いてある着火材にライターで火を着けて周りだした。 やっぱり忘年会のおかずには鍋が付き物だよね。俺は個人的にそう思っている。 そして新鮮そうなお刺身(鯛とハマチとマグロの赤身)。 これにブドウ酎ハイがあれば最高なんだけどなぁ……流石に忘年会に酎ハイは出ないか。瓶ビールだもんな皆。
「圭介さんどうぞ♡」
刹那は瓶ビールを持ち空いた俺のグラスにお酌してくれた。
「ありがとう刹那。じゃご返杯をっと」
俺は注いでもらったグラスのビールを飲み干して刹那に渡し、そのグラスにビールを注いで(半分程)刹那に返杯をする。
「じゃありがたく戴きますね♡」
刹那は俺が口を付けた側をわざわざ自分の方にクルッと向けて、唇を付けてコクコクとビールを飲み出す。 ……自分の最愛の奥さんと分かっているけど、間接キスで飲み物を飲まれるのは何だか照れくさいな。
「ふぅ♪ やっぱり圭介さんが注いでくれた(圭介さんが口を付けた側から飲む)ビールは美味しいですね♡ 御馳走様でした♡」
「それは何よりだよ。注いだ甲斐があったよ」
刹那は俺にピッタリくっつき、俺の肩に頭を乗せて " エヘヘッ♪ " と微笑んでいる。
そんな刹那の姿を見た他の男子社員から
「…分かってる! 分かってるんだよ! 刹那さんは丹羽の奥様だって事は! で、でも! 羨ましいんだよ~!!」
「俺も刹那さんみたいな奥様にあんな事をされてみたかった~!」
「丹羽、ちょっとで良いから俺とその場所を代わってくれ!」
「よし! 俺も帰ったらうちの奥さんに同じ事をお願い……いや、止めておこう。絶対に思っているのと違う結末になりそうだ」
といった怨嗟の声が聞こえてきた。 や、絶対に刹那の隣は譲らん! 今そんなふざけた事言った奴面貸せや! ぶっ飛ばしてやる!!
……まぁそれはさておき、飯だ飯! 俺は刹那にお願いして肩から頭を離してもらい(刹那は少しだけ不服そうだったが)、目の前に置かれている鍋と刺身の攻略に入った。
先ずは刺身かな?
マグロの上に山葵を少し乗せ、さしみ醤油を少しだけ付けてから口の中に放り込み咀嚼する。
ん~! やっぱり新鮮なマグロは旨いなぁ♪
口をモグモグしていると
「はい圭介さんあ~ん♡」
と刹那が自分の皿から鯛の刺身を箸で掴み俺の口へと持ってきて食べる様に促してきた。
「ん。ありがとう刹那」
俺は刹那が差し出してきた鯛の刺身を食べた。
モグモグ……やっぱり鯛の刺身も絶品だ。旨いなぁ。
「圭介さん美味しい?」
「ああ。美味しいよ」
「良かった~♡ じゃウチもお刺身食べよ~っと」
刹那もマグロの刺身を箸で掴み自分の口の中に入れて咀嚼。
「ん~♡ 美味しいっ♡」
「だろ?」
そんな俺達夫婦のイチャイチャを見ている男子社員は睨むだけで人を殺れそうな視線を俺に飛ばしてきたのは言うまでもない。 しかしそんな視線は無視したが。
一方久遠はというと、自分の前に置いてあったジュースを持って劉ちゃんが居る席に行って劉ちゃんにジュースを進めていた。 実に幸せそうな笑顔である。
瞬は一心不乱に目の前に置かれている飯をかきこんでいた。 うん。こちらも幸せそうな笑顔である。
もう少ししたら恒例のビンゴ大会が始まる。 今年の景品はなんだろうな。 楽しみだ。
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