第129話

12月。季節はめっきり冬になりました。 外を歩いてると吹く風が冷たい。顔が痛くなる位だ。


今日の会社の皆は何処かしらソワソワしている。 皆壁に掛かっている時計をチラチラ見て時間を気にしている様子だ。


……何故かって? それはね。


今日は忘年会があるからだよ!


此処2~3年ウィルスのせいで忘年会が中止になっていたからね。皆楽しみにしているんだよ。


うちの忘年会は他の会社とは少し違っていて、うちの忘年会に身内や彼氏・彼女を呼ぶ事が出来るんだ。 皆親や兄弟、彼氏・彼女を招待して一緒に騒いで親睦を深めよう! という社長の考えらしい。 勿論俺も刹那、久遠、瞬を呼んで忘年会に参加する事になっている。


うちの家族とは現地集合となっている。 だから今日は仕事が終わり次第忘年会の会場に直行する予定。



そして時間は17:30。退勤時間だ。 皆仕事を切り上げて忘年会に向かう準備を始めだした。 今日はいくら仕事が残っていても残業はしてはいけないという社内ルールがある。


荷物を纏めていると、赤坂がやって来た。


「丹羽、お疲れ様だ」


「お疲れ様赤坂。今日の忘年会は誰を呼んだんだ?」


「兄貴と御義姉さんと劉だな」


そっか、修治さん、雪菜さん、劉ちゃんが来るのか。 劉ちゃん来るなら久遠のテンションMAXになるだろうな。 甲斐甲斐しく劉ちゃんの世話をする姿が今から想像出来るな(笑)


「丹羽ん所は刹那さんと久遠ちゃんと瞬君だろ?」


「Of course!」


「何故英語で言ったし?」


「気分?」


「ぶはっ! 何だよそれ」


「まぁ良いじゃん。さぁ早く忘年会の会場に行こうぜ」


「そうだな。行くか」


俺と赤坂は笑いながら忘年会の会場へと向かった。



忘年会の会場に着いた俺と赤坂は、一旦別れてお互いの待ち人をロビーで待つ事にした。


……おろ? 彼処に居るのは神谷君じゃないですか。 刹那達が来るのにはまだ時間があるから、神谷君に声を掛けて時間を潰そうかな。


「お~い神谷君!」


俺は神谷君が居る場所に移動し神谷君に声を掛けた。


神谷君とは、最近仲良くなった営業2課の青年だ。 神谷君とは営業先で彼が困っていた所に俺がお節介をして仲良くなったという訳だ。


「丹羽課長! お疲れ様です!」


「神谷君~。今日は忘年会なんだから堅苦しいのは無し無し♪ もっと気楽にいこうよ♪」


「は、はい」


そんな事を神谷君と話していると、神谷君の後ろから


「雄二さん?」


と神谷君に声を掛けてきた女性が居た。 いつぞやかの美人さんじゃないか! 周りに居る女子社員が霞んで見える程の美人さんだ。 まぁ刹那には敵わないけどな。


「朋美。丹羽さんだよ」


「申し遅れました。ご挨拶が遅れてすみません。私は水無月朋美と申します。神谷雄二さんとお付き合いさせて頂いております。いつも神谷がお世話になっております。 これからも神谷を宜しくお願い致します」


水無月さんは丁寧に頭を下げて挨拶をしてくれた。


「あの時はどうも。こちらこそ神谷君にはお世話になっております。 こちらこそ宜しくお願い致します」


俺は何時もの癖でポケットから名刺入れを取り出して、名刺を引き出し1枚水無月さんに差し出しながら挨拶をした。


水無月さんは慌てながら


「ご丁寧にどうもありがとうございます。すみません。私受付をしておりまして、名刺はあまり配った事がありませんので、手元に持っていないのです。名刺を渡す事が出来ず、お気に障りましたら大変申し訳ありませんでした」


と俺が差し出した名刺を丁寧に受け取って俺に謝罪してきた。


「いえ、お気になさらず。名刺は私が勝手に差し出した物ですので。 何時もの癖ってやつですよ」


「そう言って頂いたら助かります」


本当物腰丁寧なお嬢さんだなぁ。 久遠にもこんなお嬢さんみたいになって貰いたいものだ。


「しかし神谷君、滅茶苦茶綺麗な彼女じゃないか。羨ましいよ」


「はい。ありがとうございます。俺にとって申し分のない最高の彼女です!」


「雄二さん!? ……もぅ、馬鹿//////」


水無月さんが神谷君の服の袖を軽く摘まみ、クイクイと引っ張りながら恥じらっている。 う~ん。めっちゃ可愛らしい♪ おじさん参っちゃう。


ニヤニヤしながら神谷君達を見ていると


「圭介さん! お待たせしました!」


「「お待たせお父さん!」」


と刹那、久遠、瞬の声が聞こえてきた。


「刹那、久遠、瞬。こっちこっち」


俺は手招きして皆を呼んだ。


「神谷君、水無月さん、うちの家内と子供達」


「丹羽刹那と申します。いつも主人がお世話になっております」


「丹羽久遠です」


「丹羽瞬です」


刹那達が神谷君に挨拶をする。


……あれ? 神谷君と水無月さんが固まってる。 どうしたんだ?


「に、丹羽課長」


「ん?」


「丹羽課長の奥様って、超一流の芸能人の由井刹那さんじゃないですか!」


「うん。そうだよ。知らなかった?」


「知る訳無いでしょう!?」


神谷君の驚き様には正直笑えた。


そして少し皆で談笑した後、丁度良い時間になったので、俺達は忘年会会場に入っていった。




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