第125話

秋……秋といえば芸術の秋 そして…そう! 食欲の秋である!


皆は秋の美味しい食べ物は何を思い浮かべる?


秋刀魚、栗、松茸と色々あるが、俺が1番に思い浮かべるのは…そう芋! さつまいもだ! あの秋になると必ずコンビニやスーパーに並んでいる石焼き芋を思い浮かべるのだ。 石焼き芋……あのねっとりとしたさつまいもの独特な甘さ。 ホクホクした食感。 ……最高だよね。 でも1つだけ難点があるんだよな。 それは……そう、さつまいもには食物繊維がたっぷり入っているから、食べると必ずと言って良い程に屁が出るのだ。 しかも大きな音を立てて。


男なら大きな音を立てて屁が出ても " あっ、ごめん。屁が出た " 位で笑って済ませるが、女性はそうもいかない。 屁が出る=とても恥ずかしい事 なのだ。


しかし人間は食欲には勝てないと昔から相場が決まっている。 何せ食欲は人間の三大欲求の内の1つだから。 しかも、女性は甘い物に弱いときた。


……何故俺がこんな話をしているかというと、今日コンビニに行った際、レジ近くで石焼き芋を見つけてしまい、ついつい4つ購入してしまったからに他ならない。 4つの内1つは俺が美味しく戴いた。 後残り3つ。 刹那と久遠と瞬の分だ。


俺は石焼き芋の袋をリビングのテーブルの上に置いて、袋の近くに書き置きをする。


" 御自由にどうぞ♪ By 父 " 


さて、皆石焼き芋を見つけたらどんな反応をするのか。 気になるからリビングにある物置の中に隠れて観察してみようと思う。(趣味悪いなお前って言うな!)



~瞬の場合~


リビングに瞬が入ってきた。 そして目敏く石焼き芋の袋を発見。


テーブルに近付き石焼き芋の袋を数え出す。


「……3つか。 お父さんけちったな。 どうせなら1人2つ欲しかったな。 まぁ良いか。折角お父さんが買ってきてくれたんだ。有り難く戴きましょうかね。 ……この中で1番大きい奴はどれだろう? 小さい奴選んだら損するからなぁ。 ……よし!これだ! じゃあ戴きます!」


そう言って瞬は本当に3つの内1番大きそうな石焼き芋をチョイスして自室へ持ち帰っていった。


……流石男の子。1番大きそうな石焼き芋を持っていったな。



~久遠の場合~


瞬がリビングから出ていった後、少ししてから久遠がリビングに入ってきた。 そしてそのままキッチンに移動。 そして冷蔵庫を開けて牛乳を取り出してコップに注ぎ、コップを持ってリビングを出て行こうとした。 その時、テーブルの上に置いてある石焼き芋を発見。 久遠の視線は石焼き芋に釘付けになる。


「……石焼き芋だぁ。お父さんが買ってきてくれたんだ。 クー石焼き芋大好きなんだよね。 ……でも、石焼き芋食べちゃうとおならが……。 この後劉ちゃんに会うんだけど、もし劉ちゃんの前でおならしちゃったら……恥ずかしくてクー死んじゃうかも知れない……。 う~~っ。 でも石焼き芋食べたいなぁ……。 でもおならが……どうしよう……」


少しの時間悩んだ後


「……よし!食べちゃえ! 2つの内小さい方を選べば大丈夫! 小さかったらおならは出ない! ……多分。きっと。 もし出たらどうにか誤魔化す!」


どうやら久遠は食欲には勝てなかったみたいだ。 2つの石焼き芋を物凄く吟味し、小さめサイズの石焼き芋を持ってリビングを出ていった。



~刹那の場合~


「ただいま~♪」


買い物に出掛けていた刹那がリビングに入ってきた。 そしてテーブルの上に置いてある石焼き芋を発見する。


刹那は手に持っていた袋を置き、テーブルへ近付く。


「わぁ石焼き芋だぁ♡ 圭介さんが買ってきてくれたのね♡ 御自由にどうぞ…か。 久遠と瞬は多分取ったと思うから、これはウチの石焼き芋だね」


刹那はテーブルの上の石焼き芋を持った。 お? その場で食べるのか?


すると刹那は何故か石焼き芋を持ったまま俺が居る物置に近付いてきた。 そして迷い無く物置の扉を開けて


「圭介さん、この石焼き芋ウチと半分こして食べましょ♡」


「せ、刹那!? 俺が物置の中に居る事…」


「初めから知ってましたよ♡」


「どうして分かったし?」


「ん~? ……何となく圭介さんが物置の中に居るな~って思っちゃったんですよね~♪ リビングに入った時から」


「そ、そうなんだ……」


「はい♡ で、何で物置の中に居たんですか?」


「……な、何となく?」


「ふ~ん。 まぁ良いか。圭介さん、ほら半分こ♡」


刹那は石焼き芋を半分に割って俺に手渡してきた。


「あ、ありがとう」


その後俺と刹那は仲良くリビングのソファーに座って半分こした石焼き芋を美味しく戴いたのだった。


……でも、何で刹那は俺が物置の中に居たのが分かったんだろうな? 謎である。










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