第123話
そして…やって来ました中学校の文化祭!
中学校の文化祭は高校や大学の文化祭とは違って日曜日に開催するから、わざわざ休みを取らなくても参加出来るのが嬉しい所だよね。 休日出勤をしなくても良い様に仕事片付けといて良かったわ。
「圭介さん圭介さん。早く行きましょうよ♪ 久遠のクラスのモザイクアートも楽しみですし、瞬のクラスのムービーの上映も滅茶苦茶楽しみですね♪」
俺の隣で刹那が物凄く張り切っていた。 端から観てもワクワクが止まらない! みたいな雰囲気を醸し出している。
刹那や、貴女芸能人なんだからもっと変装なんかしてみたらどうなんですかね? ほらあるじゃん、サングラスを掛けるとか帽子を深々と被るとかさぁ。 めっちゃ芸能人の由井刹那のまんまじゃん。
学校に来る前に刹那にそう言ってみたんだけど、刹那は
「大丈夫ですよ。今日はウチお化粧はナチュラルメイクで行きますし。 お仕事の時のメイクじゃないからバレないバレない♪ 心配性なんだからウチの旦那様は♡」
と自信満々で良い放って、本当にナチュラルメイクだけ施して文化祭にやって来たんだ。
" あれ見ろよ。由井刹那だぜ? "
" 何で超一流の芸能人がうちの学校の文化祭に来ているんだ? "
" 確か由井さんは二児の母だって聞いた事あるよな。 もしかしてうちの中学校に子供が通っているのか? "
" それなら此処に居るのも納得だわ 誰だろ由井さんのお子さんは? でも、由井って子居たっけ? "
と文化祭を観に来ている保護者からそんな声が聞こえてきた。 ほらぁ、めっちゃバレてるじゃんか。
入学式の時は偶然、たまたま、運良くバレなかっただけで、刹那は超一流の芸能人のオーラを醸し出しているんだからバレない訳が無いんだよな。
" 刹那さんの横にいる男性は旦那かな? "
" 冴えない男だな "
" 多分由井さんとは関係ない何処か子供の父親だよ "
" それな!あれが由井さんの旦那だったら、釣り合い取れてないよな(笑) 由井さんの旦那さんはもっとイケメンだって(笑) "
……やかましいわ! 悪かったな冴えないおっさんで! 言われんでも自分でも分かってるわそんな事!
そんな保護者からの言葉を聞いて表面上はニコニコ・内心ムカムカしていると
「…………」
おや? 刹那の様子が……
刹那がさっき俺の悪口を言っていた保護者が居る方向に無表情で歩いて行こうとする。
ヤバい!! 刹那が滅茶苦茶キレてる!!
俺は慌てて刹那の肩を掴み
「待て待て! 何処に行くつもりだ!」
「……邪魔しないで貰えますか圭介さん。 邪魔されたらあいつら潰せない」
「待て待て待て!! 一体何をするつもりだ!?」
「……何を分かりきった事を。肉体的にも精神的にも社会的にもこの世から排除するだけですよ。ウチの大切な旦那様を侮辱する輩はこの世には必要ありませんから」
「待て待て待て待て!! 止めろ刹那!!」
それから刹那を宥めるのに大変苦労しましたよ。 楽しみにしながら娘と息子の文化祭に来ただけなのに、初っぱなから疲れたわ。 勘弁してくりぃ……。
やっと冷静になった刹那と一緒に文化祭を観て回る。 流石に高校や大学とは違って屋台は出ていなかった(義務教育だからお金が関わる事はしないのだ)。各教室には手作りのぬいぐるみやミニお化け屋敷等の展示があり中学生の出し物としては十分楽しめる内容だった。
さて、久遠のクラスの展示であるモザイクアートを観に行きますかね。 俺と刹那は1-Aに向かう。
1-Aの教室に入ると、教室の壁にチェキで撮った写真を使ってのモザイクアートが展示してあった。 動物や風景等をチェキ写真を上手く重ねて作ってあり、これは素直に凄いと思ってしまった。 後で久遠に凄かったと伝えよう。
お次は隣の1-Bに向かう。 1-Bの教室は暗幕がしてあった。 成る程。教室にあるスクリーンを使っての上映なんだな。 俺と刹那は暗幕を開けて中に入る。
おっ、丁度上映が始まる所みたいだな。 設置してある椅子に座り、瞬達が撮影したムービーを見る事にした。
内容は瞬が言っていた通り恋愛物で、転校していく主人公(瞬)に転校前にヒロイン(クラスで一番可愛い女の子)が告白するという話。
……上手じゃん。 瞬も若干表情が固かったがセリフも噛まずに喋れてたし、ヒロインの娘もちゃんと演技出来てたと思う。
しかし……刹那は俺とは違う目線で観ていたみたいで
「……そこの部分はもっと感情を込めて」
「……もっとセリフをハッキリと」
「……目線はこちらを向かないと気持ちが伝わらない」
等とブツブツ言いながら真剣にムービーを評価していた。 中学生が撮ったムービーなんだからこんな物じゃないの? プロ目線で見たら駄目だと思うのだが……。
ムービーを観終わって教室から出た後、刹那が
「色々とダメ出ししないといけない点がありますね。瞬に後で伝えないと。 ウチ的にあのムービーの評価は20点ですね」
……刹那さんや、評価厳しくないですか? 撮ったのは中学生なんだってばさ。
それから少し他のクラスの展示物を観て俺達は中学校を後にした。
夜、文化祭が終わって帰ってきた久遠と瞬に今日の文化祭の感想を伝えた。 2人共俺の感想を聞いて喜んでいたが、瞬は刹那からムービーの評価を聞いて
「プロじゃ無いんだからそんなの無理だって! お母さん厳し過ぎ!」
と怒っていた。
……ですよね。 お父さんもそう思うよ瞬。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます