第122話

9月下旬。 まだまだ暑い日はあるけどだいぶ外気が涼しくなってきたこの頃。


夜リビングでテレビを観ながら寛いでいると、久遠が1枚のプリントを持ってきた。


「はいお父さん。このプリントに目を通しておいてね。 その日お父さんの都合が悪かったら無理して来なくて良いからね」


久遠が差し出してきたプリントを見ると


" 第○○回 文化祭のお知らせ "


と記載してあった。 なに? 文化祭とな?


久遠と瞬にとって初めての文化祭。これは是非にも見に行かなくては。


何々、文化祭の開催日は……10月上旬の日曜日か。 よし、日曜日なら俺はほぼ休みだから参加出来るな。 10月上旬の休日出勤だけは何としても避けなくては。


「了解。お父さんは見に行けると思うぞ。お母さんはちょっと分からないけどな」


「だよね。お母さん何かと忙しいからね。今日お母さんがお仕事から帰ってきたら見に来れるかどうか聞いてみるね」


予定では刹那は21:00には帰宅すると言っていたな。今刹那は新しい曲をリリースする為にスタジオに籠って曲の収録をしている。 毎日夜遅くまでご苦労様です。 そういえば刹那は30代になってから女優業も併用してこなしてるんだよな。 体調崩さないと良いんだが。


「なぁ久遠、久遠のクラスは何をするんだ?」


「えっとね、クーのクラスはモザイクアートの展示だよ」


モザイクアートとは、多数の写真をモザイクのように組み合わせて作成した画像の事だ。 複数の写真を組み合わせて1つの絵にするんだから面白いよね。


「ちなみにモザイクアートの発案者は劉ちゃんだよ♡ 凄いよね劉ちゃんは♡ 展示を何にするか困っていた皆にそんな提案が出来るんだから♡」


やっぱり発案者は劉ちゃんだったか。 劉ちゃん写真大好きだもんな。 劉ちゃんだから考えられる発想だよな。 普通モザイクアートなんか中学生は考え付かないって。


「瞬のクラスは何するんだ?」


「瞬ちゃんのクラスは何をするかクー知らないんだ」


久遠と瞬はクラスが別で、久遠はA組 瞬はB組だ(あれ? 言ってなかったっけ?) ちなみに皆様お分かりの通り劉ちゃんはA組である。


そんな話をしていると、タイミング良く瞬が同じプリントを持ってリビングにやって来た。


「おっ、居た居た。お父さん、このプリント……って姉ちゃんが此処に居るって事は、俺はこのプリントをお父さんに見せる必要が無いと言う訳だな」


「だね。あっ、そうそう。お父さんと今お話していたんだけど、瞬ちゃんのクラスは何をするの? クー知らないから教えて欲しいんだけれど?」


久遠が瞬にそう聞くと、瞬は苦笑いを浮かべながら


「……余り聞かないで欲しいんだけどなぁ」


「何で? 教えてくれても良くない?」


「そうだぞ瞬。どうせ文化祭に行けば瞬のクラスが何をするのか分かるんだから」


「……だよねぇ。分かった。俺のクラスは俺達が撮影したムービーの上映だよ。クラスの男子が何故かビデオカメラ持っててさ、撮影しようって事になったんだよ」


そう言った瞬の顔が段々と赤くなっていく。 成る程な。通りで最近瞬の帰りが遅かった訳だ。


「そのムービーのジャンルは?」


気になったから聞いてみた。 すると瞬が言い辛そうに


「……恋愛物」


……ほう。恋愛物とな。 瞬のこの照れ方から察するに


「……主役はお前だな?」


「っ!? 何故分かったの!?」


分からない訳無いだろ? それだけ顔が真っ赤になってるんだから。


「ほう。これは楽しみだな。なぁ久遠? (ニヤニヤ♪)」


「そうだね♪ 瞬ちゃんの主役姿を是非とも観賞しないとね。 劉ちゃんと見に行くからね瞬ちゃん♪(ニヤニヤ♪)」


「……出来れば来ないで欲しいんだけど……駄目?」


「「駄目かな(ニヤニヤ♪)」」


「マジかぁ……」


羞恥の余りその場で頭を抱えて蹲る瞬。


するとそこに


「ただいま~。あ~っ疲れた~!」


刹那が仕事から帰ってきた。


久遠が刹那に駆け寄りプリントを渡す。 そして自分のクラスの出し物と瞬のクラスの出し物をニヤニヤしながら詳しく説明する。 すると刹那が


「これは是非見に行かなくちゃ! 瞬、お母さんが瞬の演技を女優目線で評価してあげるからね! 早速雪菜さんに言ってこの日をオフにして貰わないと!」


と張り切っていた。


……瞬、ムービーの上映楽しみにしてるからな♪ 勿論久遠のクラスのモザイクアートも楽しみにしてるから。 文化祭の日が待ち遠しいな♪









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