第121話
「……暑い」
残暑厳しい9月。 外の平均温度30℃を少し超す位だ。 営業の為に外を歩いていると、着ているYシャツが汗でビシャビシャになってしまう。 ……汗の掻きすぎで首筋からおっさん臭(加齢臭とも言う)出てないだろうな? 少し心配。
……暑くてもう我慢出来ん! エアコンのガンガン効いたカフェにでも入って休憩しよう!
俺はその場に立ち止まり辺りをキョロキョロと見回してカフェを探す。
おっ! 彼処にスター○ックスがあるじゃん! スター○ックスは若者が一杯居て、ちょっとおっさんには敷居が高いけど、背に腹はかえられん!
いざスター○ックスへ! と歩き出そうとした時
「丹羽さん! 偶然ですね!」
と後から声を掛けられた。 振り向くと、そこには爽やかな表情でニコニコ笑っている彼方君が居た。
彼方君の職業は俳優だ。大学時代にスカウトされて芸能界に入ったらしい。 芸能界入りした理由が俺の妹の栞と結婚して幸せにする為にだとか。 良い義弟を持って俺も嬉しいよ。 そう言えば彼方君と栞には娘が2人居るんだったよな。 確か名前は永遠ちゃん(小学4年生)と未来ちゃん(保育園児)だったかな。
「おっ、彼方君じゃん。久しぶり。元気してた?」
「お陰様で元気です。今丁度撮影が休憩に入って、冷たい飲み物でも飲みに行こうとしていたんです。そしたら目の前に丹羽さんが居たからつい声を掛けてしまいました。 で、丹羽さんはお仕事中ですか?」
「今営業で外回り中なんだ。で、暑くて仕方なかったから、今からそこのスター○ックスにアイスコーヒーでも飲みに行こうとしていたんだよ。 良かったら彼方君も一緒にどう?」
「良いですね♪ お供します♪」
という事で俺と彼方君はスター○ックスでアイスコーヒーを飲みながらこの残暑から逃げる事にした。
「で彼方君、最近栞とはどんな感じ?」
「栞とですか? 今も昔もずっとラブラブですよ。もう栞が居ないと駄目ですね。今でも家で俺の帰りを待ってくれている栞の元に直ぐにでも帰りたいですもん。 丹羽さんは姉ちゃんとはどうですか?」
「俺も彼方君と同じかな。刹那の居ない人生なんて考えられないよ。刹那は俺にとって優しくて可愛い最高のパートナーだからさ」
「ほえぇ。姉ちゃんが優しくて可愛い(笑)」
「実際そうだからね」
俺と彼方君はアイスコーヒーを一口飲みながら笑い合った。 いやぁエアコンが効いていて涼しいわ。 文明の力最高!
「話は変わりますが、丹羽さんの所は子供の教育はどうしてますか?」
「うち? うちは特に何も。 久遠と瞬は自分達だけで何でもこなしちゃうからさ。俺達が手を出す必要が無いんだよ」
俺がそう言うと、彼方君は溜め息を吐きながら
「うちは栞が何かと永遠に習い事をさせたがるんですよ。永遠は習い事が嫌みたいで、俺にいつも言ってくるんです。 " お母さんに言ってよ! 私、習い事したくない! " って」
「んで、彼方君は栞に永遠ちゃんの言い分を言ってるの?」
「はい。角が立たない様にやんわりと」
「でも栞は聞かない…と」
「はい。 将来永遠の為に絶対になるからって。栞、そこだけは譲らないんです」
……栞って教育ママだったんだ。知らなかったなぁ。
俺が思うに、自分が昔習い事はしてなかって無資格で苦労したから永遠ちゃんに自分と同じ思いをさせたくなくて習い事をさせてるんだな。
「ちなみに何を永遠ちゃんにさせてるの?」
「えっと、英会話とピアノと合気道ですかね」
「合気道!? 英会話とピアノは分かるけど、何で合気道を?」
「栞が言うには、もし痴漢や暴漢にあった時でも自分の身は自分で護れる様に だそうです」
……成る程なぁ。確かに栞の考えは分かるかも知れない。 今の世の中物騒だからなぁ。
それから少しの間彼方君と世間話をして
「あっ、もう休憩時間終わりそう。じゃ俺は此処で失礼しますね。楽しかったです丹羽さん。また俺の話を聞いて下さいね」
と言って現場に戻っていった。
……さて、俺も営業の外回りを再開しますかね。 暑い中に出るの嫌だなぁ。
仕事が終わりマンションに帰ると、刹那がもう帰宅していて夕食を作ってくれていた。 俺は刹那に今日彼方君に会った事、栞が永遠ちゃんに習い事をさせていて、永遠ちゃんがそれを嫌がっている事を伝えた。
「ウチとしては、栞ちゃんが永遠ちゃんに習い事をさせるのは分かりますね。習い事は将来永遠ちゃんの為に絶対になるとウチも思いますから。資格は絶対に必要ですよ。どの職業に就くにしても」
「確かにそうだよな」
「久遠と瞬にも習い事をさせてみようかしら?」
刹那がそう言った丁度その時
「「ただいま~」」
久遠と瞬が帰ってきた。どうやら劉ちゃんの家に行っていたみたいだ。
刹那は久遠と瞬に習い事を始める気はないか?と訊ねたが
「「嫌」」
「だって習い事始めたら劉ちゃんと会える時間が減っちゃう。クーはそれは絶対に嫌。それに習い事なんて必要性を感じないもん」
「俺は只単に習い事が嫌なだけ。やりたくない事を無理矢理やっても身に付かないって」
それだけ言って久遠と瞬は自分の部屋に帰っていった。
「だそうだよ刹那」
「仕方ないですね。ウチも2人が嫌がるなら無理矢理はやらせたくないですしね」
……久遠と瞬は将来どんな職業に就くんだろうな。 ふとそんな事を思った俺だった。
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