第108話
久遠と瞬が小学5年生になった。 5年生でのメインイベントである3泊4日の修学旅行が後1週間後に控えている。
久遠と瞬が通う小学校の修学旅行の行き先は 京都・奈良だ。 俺も昔修学旅行で京都・奈良に行ったなぁ。 俺の場合は中学の修学旅行でだけど。
あの時、俺は何故かお土産に木刀を奈良で買ってしまい、先生に帰るまで没収された苦い思い出がある。 何故俺はあの時木刀なんて買ってしまったんだろうな? 多分だけど、厨二病の影響なんだろうな。 だって、木刀って格好良いじゃん?
「圭介さん、もう少しで久遠と瞬は修学旅行ですね。 瞬は修学旅行に行くのが物凄く楽しみみたいで、今からボストンバッグに荷物を出したり入れたりしていますよ。 久遠は念入りに2日目の京都の市内観光で廻る場所のチェックをしていますね」
刹那がリビングで洗濯物を畳みながら自分の事の様に楽しそうに話をしてきた。
「よっぽど楽しみなんだね。 2人にとって良い思い出になれば良いんだけどな」
「なりますよきっと。特に久遠は」
「? 何で?」
何故久遠はなんだ? 不思議に思い刹那にそう訊ねると、クスクス笑いながら
「だって劉ちゃんと同じ班なんですよ。 楽しく無い訳無いじゃないですか♪」
「あ~。成る程。それは確かに久遠からいえばビッグチャンスだよな。あわよくば劉ちゃんと2人きり……なんてな♪ そりゃ念入りに観光の場所をチェックするわ」
「まぁウチ的には、いずれは劉ちゃんと久遠が恋人同士になるのは確定してるとしても、小学生の内はまだ早いかな~なんて思ってるんですよね~。せめて3人が中学生になってからだったら~と」
「確かにそうだな。まだ小学生で彼氏・彼女は少し早いかもな。まぁ将来的に一緒になるのが確定しているとしてもな」
そう言って刹那と笑い合っていると、そこに久遠がペットボトルを片手に持ってリビングにやって来た。 どうやら喉が渇いて飲み物を取りに来たみたい。 そして俺と刹那を見て
「…? お父さん、お母さん、何だかとっても楽しそうだね? 何か良い事でもあったの?」
「別に~♪」
「何でも無いわよ~♪」
「? 変なお父さんとお母さん」
久遠は首を傾げて不思議そうに見てきた。
すると、 " ドタドタッ!! " という音と共に瞬がリビングにやって来て、いきなり
「お父さん、お母さん、姉ちゃん! 俺の新品の黒いトランクス知らない?」
「知らないよ?」
「お母さんも知らないわ。瞬が何処かに仕舞ったんじゃないのかしら?」
「クーも瞬ちゃんの下着なんて知らないよ。て言うか、クーが知ってる方がおかしいよね?」
「……そっか~。皆知らないかぁ~。何処に行ったんだろ黒いトランクス。必要なのになぁ」
ガックリと項垂れる瞬に
「瞬、何で黒いトランクスが必要なんだ?」
と聞いてみたら
「劉と約束したんだ。修学旅行の時にお揃いの黒いトランクスで行こうってさ。 何でも劉の奴、黒いトランクスは " 勝負下着? " らしいんだよ。だから俺も黒いトランクスで真似しようと思って」
思わず吹き出しそうになった。 り、劉ちゃん、黒いトランクスを勝負下着にしてるなんて。 劉ちゃんは何と勝負するつもりなんだろうね。
すると、瞬の話を聞いていた久遠がボソリと
「り、劉ちゃんの勝負下着はく、黒なんだ……。 クーも黒いブラとショーツを持って行こうかな……。劉ちゃんとお揃いの下着……べ、別に劉ちゃんに見せる訳じゃないけどねっ!」
と呟いていたのが偶然俺の耳に届いた。 久遠、黒いブラとショーツなんて持っているのか……。 お父さんはまだお前には早いと思うぞ? お母さんが黒いブラとショーツを一杯持っているのは知ってるけど。
そして1週間後、久遠と瞬は3泊4日の修学旅行に出発していった。
仕事から帰ってきた時、リビングが静かなのにはビックリした。 やっぱり2人が居ると居ないのでは大違いなんだなと実感した。
すると刹那のスマホから着信音が鳴った。
スマホの画面には " 久遠 " の文字が。
そう。久遠には夜に定期連絡をする様に伝えていたのだ。
刹那はスマホの通話をタップして久遠と通話を始めた。 楽しそうに話をしているから無事に1日目が終了したんだろうな。 安心したよ。
そして2日目の夜。 久遠からの定期連絡があった。 今回は久遠からの定期連絡を聞きたかったから、刹那にお願いしてハンズフリーにして貰っている。
『もしもしお母さん?』
「久遠。今日も楽しかった?」
『勿論だよ。劉ちゃんと一緒に京都観光出来て幸せだったよ♥️』
「それは何より♪ 観光中に変わった事は無かった?」
『あっ、あのね聞いてよお母さん。瞬ちゃんたら恥ずかしいんだよ!』
おっ? 瞬は何をやらかした?
「瞬が何故恥ずかしいの?」
『瞬ちゃんてば、京都観光中に自分へのお土産って言って何故かお土産屋さんに置いてあった " 木刀 " を買っちゃって、担任の先生に " 丹羽! 何で木刀なんか買ってるんだ! " って怒られた挙句、先生に木刀は学校に没収されちゃったんだよ』
ブハッ!! し、瞬! 何もお父さんと同じ過ちをしなくても……。
『でさ、瞬ちゃんに " 何で木刀なんか買ったの? " って聞いたの。 そうしたら瞬ちゃん " 何となく格好良いから? 刀って男の子のロマンじゃん? " なんて言うんだよ? 何で男の子ってそんな考え方するんだろ? クーは理解出来ないよ』
……お父さんは痛い程に理解出来ます。
『流石に劉ちゃんは木刀は買わなかったけど。 でもお土産に八つ橋を一杯買ってたかな? クーも八つ橋買ったから楽しみにしててね♪』
……やっぱり親子って似るんだな。と思った瞬間でした。 刹那は俺の修学旅行での失敗談を聞いていたから、俺の顔を見ながら苦笑いを浮かべていた。
そして3泊4日の修学旅行が終了し、久遠と瞬が家に帰ってきた。 久遠は両手一杯のお土産のお菓子を持って。 そして瞬はお土産のお菓子と木刀を持っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます