第88話
10月の後半に入ってから何だか刹那の体調が悪い様に見える。
時々顔色が悪く見えたり、怠そうに動いたりしている。 一体どうしたんだろうか? 体調が悪いなら俺にも相談して欲しいのだが。 凄く心配だよ。
刹那がオフの日。丁度俺も休み(休日出勤の代替え)で、俺は何となくだけど刹那の様子を注意深く見ていた。
すると、今まで機嫌良く鼻歌交じりで掃除機を掛けていた刹那が
" うぷっ! "
と口を押さえかと思うと、そのままトイレに駆け込み
" おぇぇぇぇっ! "
と嘔吐する音が聞こえてきた。
俺は慌ててトイレ迄ダッシュ!! そしてトイレのドアを叩いて
「大丈夫か刹那!? 思いっきり吐いてるみたいだけど!?」
と問い掛けるが応答なし。 暫く吐く声が聞こえ、間もなく刹那がトイレから出てきた。
「大丈夫か!? 何があったんだ!?」
「えっとですね……最近なんですが、いきなり気持ち悪くなって吐いてしまったり、身体が何か怠い時があるんですよね。 熱は無いみたいなんですが。 仕事の疲れからくる吐き気と怠さかな? と思ってます。 まぁ大丈夫でしょう。心配いりませんよ圭介さん」
ニコリと笑ってそう答える刹那。
「…………」
駄目だ。刹那は心配いりませんよって言ったが心配で仕方ない。 ……よし。 ここは強制的に
俺は寝室に行き、刹那のバッグとスマホを持ってリビングに帰ってきた。そして刹那の腕を掴み、強引に玄関まで刹那を引っ張って移動する。
「け、圭介さん? どうしたんですかいきなり?」
「今から病院に行くよ。医師に診察して貰うんだ」
「えっ? 病院に行くんですか? ウチは大丈夫ですよ? 少し気持ち悪いのと身体が怠いだけですから」
「四の五の言わずに病院に行くよ! 刹那はそう言うけど、もし大変な病気だったらどうするんだ! 俺は刹那の事が心配なんだよ。 俺を安心させる為にも俺と一緒に病院に行って医師に診て貰ってくれ。お願いだ」
俺の言葉を聞いた刹那は少しだけ考えた後
「分かりました。ウチ、圭介さんの言う事聞いて病院に行きます。そしてお医者様に診て貰います。 確かに大変な病気だったら困りますから」
そう言って大人しく付いてきてくれた。 俺は刹那を車の助手席に乗せ、安全かつ急いで病院に向けて車を走らせた。
数十分後病院に到着する。 刹那を助手席から下ろして病院内のロビーのベンチに座らせた後、車を駐車場に停め、駐車場からロビーに向かって猛ダッシュ!! おおかた駐車場に入ってこようとした車に轢かれそうになったのは黙っておこう。
病院受付職員に貰った問診票に刹那が今の自分の病状を記入し、受付に提出する。 すると受付職員が問診票を見て受付してくれた。
「丹羽様、電光掲示板に番号が出ますので、それに従って診察室へお入り下さい。 婦人科の前でお待ちください」
? 婦人科? 内科じゃ無くて?
少し疑問に思ったが、受付職員に言われた通りに婦人科の前の椅子に刹那を座らせ電光掲示板に刹那の番号が出るのを待った。 内科系の病気じゃ無くて婦人科系の病気なんだろうか? ともかく悪い病気じゃなかったら良いんだけど……。
電光掲示板に番号が出るまで気が気じゃない俺は、檻の中の熊よろしくその場を行ったり来たりしていた。
「圭介さん、落ち着いて下さい。大丈夫ですから」
「しかし刹那、もし悪い病気だったら……」
「大丈夫ですよ。多分只の疲労でしょうから。最近お仕事が一杯入っていましたから」
そんな事を話していると、電光掲示板に刹那の番号が表示された。
刹那と俺は婦人科の診察室に入る。 婦人科の医師は優しそうな女医さんだった。
女医さんは刹那が記入した問診票を見ながら刹那に色々質問していく。 食欲不振があったかとか、いつ頃から吐き気を催す様になったかとか色々と。
そして一通り質問が終わった後、女医さんが
「じゃあそこのベッドに横になって下さい。腹部エコーを撮りますので」
刹那は診察室に設置してあるベッドに仰向けで横になった。 看護師が持ってきた腹部エコーの機械を刹那のお腹の上に置いて(ゼリーみたいな物をお腹に塗った後)上下左右にゆっくりと動かし
「おめでとうございます。奥様は妊娠されていますね。妊娠2カ月目でしょう」
………は? 今何と?
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