第89話

「す、すみませんが、もう一度お願いします」


俺が女医さんにそう問い掛けると、女医さんは笑顔で


「おめでとうございます♪ 奥様は妊娠されていす。現在妊娠2か月目ですね」


「……マジですか」


「はい。マジです(ニッコリ)」


女医さんからの言葉を聞いて呆然とする俺。 刹那が妊娠……? 俺の、俺達の子供……。 俺が父親に……。


俺の隣でニコニコと笑う刹那の方に振り向き、俺は刹那を抱き締めた。


「や、やった~! 俺の、俺達の子供が! せ、刹那、ありがとう! 本当にありがとう!」


俺は刹那を抱き締め号泣。


「け、圭介さん、苦しいです。それにお医者様の前では恥ずかしいです//////」


刹那は少し恥ずかしがりながら賑やかな笑顔を見せてくれた。


「丹羽さん。今が一番大切な時期です。安定期に入る迄は奥様に無理をさせない様にお願いしますね」


女医さんが俺に注意を促してきた。


「勿論です! これからは俺が妻の身の回りの事は全て引き受けます! 任せて下さい!」


俺の強い宣言に女医さんはニッコリと笑った。


そうか~。俺達に子供が出来たのか~。まだ全然実感が無いなぁ。 そうだ、今日から刹那にはゆっくりと身体を休めて貰おう。俺が刹那の身の回りをちゃんとしていかないと。 そうだ、篠宮さんにも連絡を入れて、刹那のこれからの仕事をキャンセルして貰える様に頼まないと。 あと、お義父さんとお義母さんに連絡を入れないと。それとうちの両親にも。 彼方君と栞にも連絡しなくちゃな。 後は……え~っと。


そうだ! 俺は疑問に思った事を女医さんに聞いてみた。


「先生、安定期っていつからですか?」


「そうですね、一般的には妊娠5か月からが安定期と言われていますね」


「了解です! 先生、妻の事よろしくお願いします!」


「はい。任されました。定期的に検診に来て下さいね。 後で予約票を渡しますので、忘れずに持って帰ってくださいね」


「「ありがとうございました」」


俺達は診察室から出て、待合室の椅子に座った。


「どうぞ俺のお姫様」


俺は刹那の手を引き椅子に座って貰う。


「ありがとうウチのナイト様♥️」


賑やかに俺のエスコートに従い椅子に座る刹那。


「刹那、身体は大丈夫か? しんどいとか、痛いとかはない?」


「大丈夫ですよ❤️ 心配してくれてありがとう❤️」


「して欲しい事があったら何でも言ってくれよ。直ぐにやるから」


「今はありませんよ。今は圭介さんが側に居てくれたらそれだけで十分♥️」


「そ、そうか? じゃあ側にいるよ。 何かあったら遠慮なく言ってくれよ?」


「分かってますって♥️」


挙動不審な俺を見て刹那はクスクスと笑う。


結構真剣に言っているのだけれどなぁ。


「なぁ刹那、男の子かな? それとも女の子かな? どっちだと思う?」


「圭介さんてば気が早すぎ。まだ性別なんて分からない段階ですよ。まぁウチは男の子でも女の子でもどちらでも良いですね♪ 生まれてくる子は圭介さんに似ていたら良いなぁと思いますけどね❤️」


「いやいや、刹那に似て生まれて来てくれた方が人生勝ち組だって! 俺に似たら悲惨だぞ? 刹那に似たら男の子なら相当なイケメンで、女の子なら滅茶苦茶可愛くなるな。断言出来る! あっ、でも女の子なら悪い虫がつきそうだ。お父さんはそんなの絶対に許さん! 成敗してくれるわ!!」


「だ~か~ら~。気が早いですって」


盛大に刹那に笑われてしまう。 いや、俺は本気だぞ! 我が子に降りかかる災難から絶対に護り抜いてみせるからな!


俺は刹那に断りを入れて電話を掛けに病院の外へ出る。


先ずはお義母さんに電話だな。


俺はスマホを操作しお義母さんに電話を掛けた。


『あれ?圭介君。どうしたん?珍しいねこんな時間に。何か用事?』


「はい。実は刹那が妊娠しまして」


『ふ~ん妊娠…………ってえーーーーーっ!』


「今妊娠2ヶ月目だそうです」


『あ、あの、そ、その、せ、刹那は!?』


「今待合室の椅子に座って予約票が出来るのを待っています」


『わ、分かったわ! こ、こうしちゃ居られない! 圭介君、ウチ今から直ぐにそっちに行くから!』


「えっ!? お義母さん!?」


『じゃあ準備があるからまたね!!』


そうしてお義母さんとの通話が終了した。 ……無理しないでも良いんですけどね。 相当焦ってたけど大丈夫なのだろうか?


次は俺の両親だな。 お袋に電話を掛ける。


『圭介? あんたどうしたのこんな時間に。仕事は?』


「今日は仕事休み。今病院に居るんだ」


『病院ってあんた何処か悪いの?』


「俺じゃ無くて刹那の付き添い」


『えっ!刹那さん何処が悪いの!? 大丈夫なの!?』


「病気じゃないんだよ。実は刹那が妊娠したんだ。今妊娠2ヶ月目だそうだ」


『……圭介。4月1日はもう過ぎたんだけど?』


「お袋……俺、冗談は言ってねーよ。本当に刹那が妊娠したんだ」


『……圭介、今刹那さんは何処に?』


「病院の待合室の椅子に座って次回予約票が出来るのを待ってる」


『あんた! 刹那さん放置して何やってるの! 刹那さんは今相当不安になってる筈だから側に居てやらないでどうするの! 馬鹿なの? 死ぬの? 電話を直ぐに止めて刹那さんの側についていてあげなさい! お母さん今から直ぐにそっちに行くから! 圭介、病院の場所教えなさい!』


俺はお袋に滅茶苦茶怒られた。 そしてお袋に病院の場所を説明して電話を切った。


とりあえず後1件だけ電話しないと。


俺は篠宮さんに電話を掛ける。


『丹羽さん? どうしましたか?』


「単刀直入に伝えますね。妊娠2ヶ月目だそうです。」


『えっ!? 今何と!?』


「刹那 妊娠していました。今2ヶ月目だそうです。」


俺の報告に篠宮さんは声ではない何かを挙げていた。


『そ、それでは、直ぐにそちらに向かいます! 病院は何処ですか?』


「○○総合病院です」


『○○総合病院ですか。此処からなら近いですね。 丹羽さん、10分位で着きますので待っててくださいね!』


「了解です。お待ちしてます」


篠宮さんとの通話を終えてから、俺は刹那の待つ待合室へ急いで移動した。











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