第80話
~刹那side~
ウチがスタジオでレコーディングをしている時でした。 篠宮さんが青い顔をしてスタジオに飛び込んで来ました。
「篠宮さん、どうしたんです? 顔色真っ青ですよ?」
ウチは篠宮さんが心配になって聞いてみました。
「せ、刹那! お、落ち着いて! 落ち着いてね!」
「? 慌ててるのは篠宮さんだと思うんですが?」
「今ね、病院から電話があって、丹羽さんが事故にあって救急車で搬送されたって」
ウチは篠宮さんの言葉を聞いてその場に座り込んでしまいました。
け、圭介さんが救急車で搬送……? う、嘘
こ、こうしちゃ居られない! ウチ、病院に急いで行かないと!
でもウチの身体は座り込んだまま動いてくれません。 力が入らないんです。 ウチは篠宮さんに
「篠宮さん!! 今すぐ私を立たせて下さい! お願いします!」
「わ、分かったわ! さぁ引き起こすわよ!」
篠宮さんはウチの望み通りにウチの身体を引き起こしてくれました。 しかしウチの足はガタガタ震えていう事を聞いてくれません。 ウチは両足を思いっきり叩いて無理矢理震えを抑え込みました。
「私今から病院に行ってきます! レコーディングに穴を開ける事になりますが宜しくお願いします!」
ウチはそう言うと、急いで荷物を持ってスタジオを飛び出し、国道に走っていたタクシーを捕まえ
「○○総合病院迄お願いします! 急いで!」
と言いながらタクシーの後部座席に乗り込みました。
圭介さん! どうか、どうか……。
病院に着いたウチはタクシーの運転手さんに10000円を手渡し
「おつりは結構です! では失礼します!」
タクシーから飛び降りて病院の中に走り込みました。
病院の受付の職員さんに
「救急車で搬送された丹羽圭介は何処ですか!?」
と言いながら掴み掛かり、職員さんを思いっきり揺さぶりました。
「お、落ち着いて下さい! お、奥様ですか?」
「はい!!」
「丹羽圭介さんは今手術室で手術中です」
「圭介さん!!」
ウチは職員さんを離して手術室がある場所へ走り出しました。 ウチの後の方で " おえぇぇぇ…… " といった声が聞こえた気がしましたが、そんな事知りません!
手術室に着いた時、まだ手術中の赤いライトは点いたままでした。 まだ手術中なんですね。
圭介さん! どうか手術が上手くいきます様に! 神様お願いします! 圭介さんを助けて!! 圭介さんが助かる為ならウチの命を差し上げますから!!
ウチは手術室の前にあるベンチに座って一心不乱に祈り続けました。
それから約30分後。 手術中の赤いライトが消え、手術室の中からお医者様が出て来られました。 ウチはお医者様に詰め寄り
「圭介さんは! 主人は大丈夫ですか!? 手術は成功したんですか!?」
「……奥様ですか。安心して下さい。手術は無事成功です。 右足が骨折していたので、医療用のボルトで止めただけですから」
ウチはお医者様の言葉を聞いて、その場にへなへなと座り込んでしまいました。 よ、良かった……。命に別状は無かったんだ……。
お医者様の言う事だと、圭介さんは身体中に打撲があり、右足が骨折するという大怪我を負っていたんです。 全治2~3カ月との事でした。 手術後圭介さんは病室へと運ばれて行きました。
ウチがベンチに座りボーッとしていると、相手方の保険会社の人がやってきました。 保険会社の人の話によると、加害者は圭介さんに会うつもりは無いとの事でした。
……ふざけるなよ? 人の大切な旦那様を跳ねておいて、会うつもりは無いだと?
絶対に謝罪させてやる。 土下座させてやるからな。
加害者の名前と住所と勤め先をウチは保険会社の人から聞き出しました。
……あれ? この野郎は、ウチの大ファンである某大会社の会長さんの社員じゃん。
ウチはすぐさま事務所に帰って事務所の固定電話から会長さんに連絡を取りました。
えっ? 何故会長さんの連絡先を知っているのかって? それは、会長さんからライブ会場で握手会をした時プレゼントを貰って、ついでに名刺も貰っていたからだよ。 ウチ、ファンを大切にする方だから。 決してふしだらな関係は無いからね? 勘違いしたら○すよ? ウチは圭介さん一筋なんだから。
ウチの話を聞いた会長さんは直ぐに動いてくれました。 どうやら会長さんがお話し合いに行ってくれたみたいです。
ふふっ。どんな結果になるか楽しみです。 圭介さんに謝罪してくれるならそれでよし。 謝罪が無いなら……ふふふ……。
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