第101話

俺は急いで刹那と双子ちゃんが居る部屋へ行く。


看護師さんに案内された部屋の前に到着し、部屋の扉を開け


「刹那!」


部屋の中に入るとそこにはベッドに横になって俺の方を笑顔で見つめる刹那の姿が。


「圭介さん。元気な女の子と男の子です。ウチ、頑張りました♪」


「ああ。ああ。よく頑張ったね。本っ当によく頑張ってくれた。ありがとう刹那」


何故か俺は涙が止まらない。顔は笑顔なのに本当に涙が止まらなかった。


「ほら圭介さん。ウチ達の子供達の顔を見てやって下さい。滅茶苦茶可愛い2人ですよ」


刹那に促され俺は最愛の子供達の姿を見るために近付いた。


子供達は安らかな顔で眠りについている。


よく産まれたての赤ちゃんは猿みたいな顔をしていると言われるが、そんな事はない。 滅茶苦茶端正な顔をしているじゃないか。(親フィルターがかかっているだけかも知れないが) 猿と言った奴出てこい! 俺がぶっ飛ばしてやるから!


改めて俺は2人を見る。


2人ともまだ髪の毛は短髪だが綺麗なブロンドの髪をしている。 刹那に似たのだろう。俺としては黒髪よりこっちのブロンドの髪の色の方が好きだ。 何故なら刹那の子供達なんだなとの実感が沸くからだ。


蕩けそうな顔で双子ちゃんを見ていると、女の子の方がうっすらと目を開けた。


俺は少しだけ驚いた。この子の目の色は黒だ。てっきりこの子も刹那に似て綺麗な蒼い瞳をしていると思っていたからだ。


「ふふっ。その子の瞳の色、圭介さんに似て綺麗な黒ですよ。ウチめっちゃ嬉しいです♥️」


「何故だい? 俺は刹那に似て蒼い瞳だったら良かったと思うんだけれど?」


「何故って。それはやっぱり、黒い瞳の色だったら、ウチと圭介さんの子供なんだなと実感が沸くじゃないですか♥️ ウチ、子供が自分のお腹の中に宿った時から瞳の色・もしくは髪の毛の色は黒が良いなと思っていたんです」


「そうだね。黒い瞳も滅茶苦茶魅力的だよ。まぁ、どちらにせよ元気に産まれてきてくれて本当に良かったよ」


俺と刹那は顔を見合せ笑い合った。


そんな中、男の子の方も目を開けて俺の方を見てきてくれた。 この子の瞳の色も黒。 要するに髪の毛の色は刹那似で、瞳の色は俺に似たという訳だ。


双子ちゃんの顔を見ていると、2人の遺伝子が両方共に受け継がれている事がとても嬉しく、俺も父親になったんだなと改めて実感した瞬間だった。


すると突然双子ちゃんが一斉に大きな声で


「「ほんぎゃーぁ! ほんぎゃーぁ!」」


と泣き出してしまった。


俺は盛大に焦り


「なんだなんだ!? 俺、何か悪い事したのか!? ご、ごめんなさい!!」


と慌てて双子ちゃんに頭をこれでもかという程下げる。


そんな俺の姿を見た刹那はクスクスと笑い


「多分2人ともお腹が空いたんですよ」


「そ、そうなのか? 焦ったよ。俺が何か仕出かしたのかと思ってしまった」


するとタイミング良く看護師さんが部屋に入ってきて


「授乳の時間ですので宜しいですか?」


俺は看護師さんに深々と頭を下げ


「宜しくお願いいたします!」


とお願いをする。


「じゃあ俺は外に出てるから。刹那、本当にありがとう」


俺は刹那に声を掛けてから部屋の外に出た。



部屋の外に出た俺は廊下に設置してあるベンチに腰掛ける。


……俺達の子供達、滅茶苦茶可愛かったなぁ。 本当に気合いが入るよ。これから全力で3人を世界一幸せにしてみせるってさ。


そんな事を考えていると、廊下の向こうから走ってくる集団が見えた。


お袋と親父。そして栞と彼方君だ。


こちらに走ってくる途中で親父達は看護師さんに捕まり怒られていた。


" 廊下は走らないで下さい! "


親父達は看護師さんに頭をペコペコ下げ謝っていた。


その姿を見て俺は何だか可笑しくなって笑ってしまった。


親父達は一頻り看護師さんに謝った後、早足で俺の元に近付いてきた。


「け、圭介! 無事に産まれたのか!?」


「どうなの!?」


「無事に産まれたよ。女の子と男の子だ」


「良かった~。ね、ね、兄ちゃん! どっちに似てるの!?」


「2人とも髪の色は綺麗なブロンドだ。刹那に似たんだろう。そして瞳の色は黒だ。これは俺に似たんだな」


「うわぁ。私の甥っ子と姪っ子に早く会いたいなぁ。めっちゃ可愛いんだろうなぁ♪ 兄ちゃんには悪いけど、私としては瞳の色も刹那さんに似て蒼い瞳だったら綺麗だったんじゃないかなと思っちゃった」


「それは俺も同感だ。でも、その事を刹那に言ったら、黒い瞳の色の方が良い。圭介さんとの子供達だって実感が沸くからって言われたよ」


「うん。そりゃそうだね♪ 私も自分の子供には両方の遺伝子を受け継いで貰いたいからね❤️」


栞は彼方君の方を見ながらそう呟く。


彼方君は顔を真っ赤にしながら


「そ、それはそうと、性格は圭介さんに似て欲しいと俺は思います」


あっ、話題を変えようと必死だな彼方君。


俺は少しだけ笑いながら


「ん? 何故そう思うんだい?」


「それは当たり前ですよ! 姉ちゃんに性格が似たらとてつもない暴君が誕生しますから! しかも2人共だったら最悪です! 皆に嫌われますよ絶対!」


「そんな事は無いだろう? 刹那はおしとやかで可愛いよ。俺は刹那に性格が似て欲しいけどな」


「いいえ、絶対に性格は圭介さんに似るべきです! 圭介さんに似たら、正義感溢れる素敵な子に成長する筈です!」


彼方君は力強く拳を握って力説する。


……おや? 部屋の向こうから殺気を感じるのだが? 気のせいだろうか?


暫くすると授乳が終わったみたいで、俺達は部屋の中に通された。


皆は先ず刹那におめでとうの言葉を掛けてから双子ちゃんの姿をデレデレした表情で見ていた。


……彼方君は刹那に呼ばれて頭を叩かれていた。 もしかしてさっきの会話が聞こえていた?


それから間もなくして双子ちゃんは新生児達が居る部屋に移動となった。


刹那も疲れたみたいで今はベッドで眠っている。


俺以外の皆は一旦帰宅した。 俺はというと、刹那のベッドの横に椅子を置いて、その椅子に座って刹那を眺めていた。


これから物凄く大変になるんだろうな。 赤ちゃんだから夜泣きとかも凄いだろうし。それが2人分だから。


全力でサポートするぞ。刹那1人に負担を掛けさせない様にしなくては。


俺は刹那を見つめながらそう思っていた。



次の日、愛媛から到着したお義母さんとお義父さんを刹那が居る部屋に案内する。


お義母さんもお義父さんも刹那におめでとう、よく頑張ったねと満面の笑顔で声を掛けていた。 それに対し刹那も満面の笑顔で答えていた。 次に新生児達が居る部屋に移動し、窓越しだがお義母さんとお義父さんは双子ちゃんと対面する。


" 刹那にそっくりで美人さんだね♪ "


" あの端正な顔立ちは圭介君似だな "


等と双子ちゃんを誉めちぎるお義母さんとお義父さん。 聞いていて嬉しくもあり恥ずかしくもあり。


それからお義母さんとお義父さんを連れてマンションへ移動。 他の皆も集めて


「今から双子の名前を決定したいと思います! 良い名前があれば意見を宜しくお願いします!」


と皆にお願いした。


その言葉を皮切りに議論は白熱した。


結構な時間色々な名前がその場に飛び交う。


そして協議の結果


女の子の名前 : 久遠


男の子の名前 : 瞬


に決定した。 名前の由来は 母親の名前が刹那だから、男の子は類義語 女の子は対義語 にした方が良い。 そして男の子の方はその瞬間瞬間を一生懸命に生きて充実した人生を楽しんで欲しい 女の子の方は永遠に幸せになって欲しいの願いを込めて命名した。


刹那に決定した子供達の名前を伝えに病院へ行く。


喜んで貰えるだろうか? 不安を抱えながら俺は刹那に双子の名前を伝える。


すると刹那は


「滅茶苦茶素敵な名前です♥️ 久遠と瞬……。これ以上無い名前ですね❤️ 圭介さん、名前付けありがとうございます♥️ これから2人で久遠と瞬を立派に育てていきましょうね♥️」


「ああ。勿論だとも。これ以上無い程に幸せにしてみせるさ。刹那の事ももっともっと幸せにするからね」


「……圭介さん。世界中の誰よりも愛しています♥️」


「俺も刹那の事世界中の誰よりも愛しているよ」


俺達はそう言って笑い合った。







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