第100話

無事に結婚式と披露宴も終了し、ほっと一息を付く。


さて新婚旅行はどうしようか? といった話も持ち上がったが、大事な時期だから控えてほしいと両家の両親からお願いされ断念せざるを得なかった。 ただ、子供達がある程度大きくなったらどちらかの親に預けて旅行に行こうと計画している。


刹那も産休に入り、マンションでゆったりとした生活を送っている。 最近TVのエンタメで、6月出産予定との報道があった。


そして現在刹那の身の回りの世話を各両親が交互で見ている。 (刹那は自分の身の回りの事は自分で出来ると言って世話を断っていたが、どちらの両親も刹那の申し出を断固拒否した) 俺も俺が出来る事は頑張って行う様にしている。 お義母さんは半月に1回愛媛から上京してきている。 旅費とか体調とか大変じゃないか? と訊ねたが、笑顔で " いや全然。寧ろ楽しみが出来て充実した日々を過ごせている " と言われた。 そう言われてしまったら " お願いいたします " と言うしかない。


そんなこんなであっという間に月日は流れ……


今日は6月15日。 もうすぐ出産予定日になる。


刹那のお腹はかなり大きくなって、少し動きづらいみたいだった。 動く際には " よいしょ~! " と声を上げてから動いている。 他の妊婦さんのお腹と比べると(主に篠宮さん。偶然なのだが篠宮さんも刹那と同じ出産予定日なのだ)刹那のお腹は大きく見える。 多分2人入っているからなのだろう。


現在刹那は運動がてらにリビングのモップがけをしていた。 柄の長いモップを仕様しているからお腹への負担は少ないと思われる。


~♪ ~🎵


刹那が鼻歌混じりでモップがけをしている姿が見える。 俺はというと、ソファーに座ってTVを観ていた。 


暫くすると、刹那の鼻歌が聞こえなくなった。 ん? モップがけ終わったのかな?


「刹那、モップがけ終わったの? ご苦労様」


そう言いながら俺は刹那の方を見た。


!?


何だか様子がおかしい。 刹那の顔色は青く、その場にしゃがみこんでいる。


「ど、どうしたんだ!?」


「け、圭介さん……い、今すぐに病院に連れていってもらっても良いでしょうか? じ、陣痛が……」


「!? わ、分かった! 大丈夫! 今すぐに病院に連れていってやるから! 心配するな!」


刹那の言葉を聞いた俺は滅茶苦茶慌てた。


は、早く病院に刹那を連れて行かないと!


ま、先ずは何をすれば良いんだ!? そ、そうだ! 車の準備をしないと!


俺は大慌てで車のキーを掴み


「せ、刹那! 動けるか? 駄目なら救急車を呼ぶが?」


「な、何とか動けます……。 あっ!?」


「あっ?」


「何だか足元が濡れてしまったんですが……そして痛みが増してきました……」


破水じゃないか! これは早急に病院へ行かないと!


これは悠長な事を言ってられなくなった! 俺は直ぐに救急車を要請する。


救急車要請から5分後にマンションに救急車が到着。急いで救急車に刹那を乗せて病院へ。


病院に到着すると、刹那は分娩室に運ばれて行った。


俺はその姿を見送った後、急いで各関係者に連絡を入れる。


先ずはお義母さんに電話を入れる。


『もしもし? どしたの?』


「今刹那が分娩室に入りました! もうすぐ産まれます!」


『!? す、直ぐに行くから! うわぁ!? 今から愛媛出ても到着は夜中になりそうや! 圭介君、じゃあまた後でね! こりゃ急がんと!』


次にお袋に電話。


『もしもし? どうかした?』


「今刹那が分娩室に入った! もうすぐ産まれるから!」


『!? 直ぐにお父さん連れて行くから! ○○総合病院よね!』


そう言ってお袋は電話を切った。 多分あの調子なら1時間以内に来そうだな。


次に篠宮さんに連絡を入れる。


…………繋がらない。忙しいのだろうか?


もう一度電話を掛けるがやっぱり繋がらない。


少し時間を置いてからもう一度連絡を入れよう。


次に栞に電話をする。


『もしも~し。兄ちゃんどったの?』


「栞、そこに彼方君も居るか?」


『隣に居るけど?』


「いいか、良く聞け。今刹那が分娩室に入った。もう少しで産まれる」


『マ、マジで!? 彼方君! 刹那さんがもうすぐ出産するって! 今分娩室に入ったって!』


『マジで!? 圭介さんに今から行きます!って伝えて! あわわっ! 早く準備しなくちゃ!』


『だそうだから。聞こえてたでしょ? 彼、声大きいから。 当然私も直ぐに準備して行くから!』


そんな会話をして栞との通話は終了。


と、とりあえず落ち着かないと。 俺は側にあったベンチに座った。 ん? 俺達の他にも今日出産される方が居るみたいだな。 少し離れた場所のベンチに男性が○ゲンドウのポーズで座っている。


あれ? 良く見ると、あの男性……修治さんじゃないか? あっ。やっぱりそうだ! 修治さんだ!


俺はベンチから立ち上がり修治さんの元へ。


「修治さん! もしかして雪菜さんも?」


「えっ!? 丹羽君!? もって言った? じゃあ刹那さんも?」


「はい。さっき分娩室に入って行きました」


「そっか~。物凄い偶然だね~。まさか雪菜と刹那さんが同じ日に出産するなんてね~」


どおりで電話が繋がらない訳だ。連絡を取りたいと思っていた人も分娩室に入っていたのだから。


「そうですよね~。物凄い偶然ですよね~。いやいや、こんな時俺達男性は何も出来ないんですね。とにかく焦るばっかりで」


「そうなんだよね。俺も何も出来なくて、ついつい碇○ンドウのポーズを取るしかなかったからね~」


そうして偶然出くわした修治さんと話をしていると、分娩室の方から微かに赤ちゃんの泣き声が聞こえてた。 しかも3つ。


俺達は大いに慌てた。 そして間もなく看護師さんが俺達の元にやってきた。


「赤坂さん。おめでとうございます。元気な男の子です♪ それに丹羽さんもおめでとうございます。元気な双子の男の子と女の子です♪」


「「ありがとうございます!!」」


俺と修治さんは看護師さんに深々と頭を下げた。


そして慌てて修治さんは赤ちゃんと篠宮さんに会いにいった。


さて、俺も刹那と双子ちゃんに会いに行くとしましょうか。 双子ちゃん、滅茶苦茶可愛いんだろうな~♪


そして刹那に言わなくちゃな。


" ありがとう。元気な双子を産んでくれて そしてお疲れ様でした "


と。





















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