第18話
「ラーメン美味しかったね♪ ……残しちゃったけど」
ラーメン屋を出た時の刹那の第一声だ。
「仕方ないと思うぞ。女性には少し多い量だったしな」
すかさずフォローを入れる。
「そ、そうだよね! 量多かったよね! 残すのウチだけじゃ無いよね!」
「ああ。残している女性を見たことが何回も有るからな」
俺のフォローに落ち込んでいた刹那のテンションが回復する。 そして笑顔を見せる。
うん。やっぱり刹那には落ち込んだ顔より笑顔が良く似合うな。
ラーメン屋を出た後少し辺りを散策すると、個人経営のケーキ屋を発見する。
女の子は甘い物に目がないと言うから、刹那に教えてやろうかな?
「刹那、刹那。あそこ見てご覧。 良い雰囲気のケーキ屋があるぞ?」
「あっ、本当ですね」
やっぱり甘い物が好きなんだね。目を輝かせている刹那を見て、俺は教えて良かったと思った。
「……そうだ! 圭介さん! あのケーキ屋に行きましょう。あそこで圭介さんのバースデーケーキを買いましょう♪」
「俺のバースデーケーキは別にいいよ。刹那が好きなケーキを買いに行こう」
俺がそう言うと、刹那の頬が膨れ上がり
「……何で? 今日は圭介さんのお誕生日なんだよ? 駄目! 絶対に圭介さんのバースデーケーキを買うの!」
とご立腹だ。
「いや、だって、俺はもう刹那から物凄いプレゼントを貰っているんだし、もう十分なんだから」
「い~や~! か~う~の~! 圭介さんのお誕生日ケーキを買って食べるの~!」
何だか刹那の言葉が幼児化している。 それに涙目で両手をブンブン振って猛抗議している。
刹那のその姿はとても可愛いが、滅茶苦茶周りの目が痛い! まるで俺が刹那を泣かせているみたいだ。
「分かった! 分かったから! 泣かないで! 買う、買うから! ね? だから……」
俺がそこまで言うと、刹那はパッと笑顔になり
「じゃ行きましょう❤️ 美味しそうなケーキあるかな~♪」
……刹那は策士だと思う。俺が断ろうとすると、必殺技で攻めてくる(女の子の涙は最強)。 絶対に勝てないと悟った。
俺は刹那に手を引かれてケーキ屋に入った。
店内はこじんまりとしていて落ち着く感じだ。店内に甘い香りが漂っていて、甘いもの好きには堪らないだろう。俺はそこまで甘い物が好きでは無いのでそこまでではないが。
店内にあるショーケースには様々なケーキが並んでいた。
苺のショートケーキ モンブラン チーズケーキ チョコレートケーキ バームクーヘン等々。
甘い物がそこまで好きではない俺でも美味しそうに見えてしまうから不思議だ。
刹那はというと……。
わぁ。ショーケースに目が釘付けだ。 釘付けどころか、ガッツリと食い付いている。
やっぱり刹那は甘い物に目がないんだなと確信した。
「……どれも美味しそうです。 ショートケーキ……チーズケーキ……モンブラン……(じゅるり)」
刹那さんや。涎が出てますが?
そんな刹那の姿を見ていると、店の奥から初老の男性がニコニコしながら出てきた。 多分店主さんだろう。
「何か気に入った物はありましたかお嬢さん?」
店主さんは刹那に優しい口調で話し掛けてきた。
「あっ、はい。どれも美味しそうです♪」
「どれにいたしましょうか? (ニコニコ)」
一瞬自分の食べたいケーキを指差そうとした刹那だったが ブンブンッ! と首を横に振って
「今日は彼のバースデーケーキを買いに来たんです。だから、バースデーケーキを1つ下さい」
「ほう。彼氏さんの為のケーキですか。ふむ……分かりました。少々お待ち下さいませ」
店主さんは店の奥に入っていった。
店主さんを待っている間、刹那の視線はショーケースに釘付けだ。
その時
「あっ」
刹那がそう呟く。 俺は刹那の視線を追うと、視線の先には1つのケーキが有った。 そのケーキは抹茶のケーキだった。抹茶の粉がケーキの周りに一杯かかっていた。 俺も正直これは食べてみたいな。
しばらくしてから店主さんが何か箱を抱えて戻ってきた。
「お待たせ致しました。お嬢さん、こちらなど如何でしょうか?」
店主さんが箱の蓋をそっと開ける。中には生クリームで綺麗にデコレーションされたワンホールのケーキが入っていた。 そしてケーキ中央にはチョコレートで出来たプレートが。そのプレートには " Happy Birthday " の文字が書いてあった。
刹那は目を輝かせて
「素敵です! これにします! お幾らですか?」
バッグから財布を取り出そうとした時、俺は刹那の手を押さえ
「これは俺が支払うよ」
「いや、このケーキは圭介さんのお誕生日ケーキですので、ウチが出します」
「彼女に支払いをさせるのは何か嫌だから、俺が出すよ。いや、出させてくれるか?」
少し出す、出さないで押し問答があったが、最終的に
「……分かりました。圭介さんがそう言うなら従います」
と刹那が折れてくれた。
その俺達のやり取りを見ていた店主さんはニコニコ顔をしていた。
「お会計は3000円になります。 消費税はオマケしておきますので」
「えっ、良いんですか?」
「はい」
「ありがとうございます。じゃあ」
俺は財布から3000円を取り出し店主さんに手渡した。
「お買い上げありがとうございます。これからもご贔屓にお願いいたしますね」
「はい。勿論です」
俺は買ったケーキを刹那に持たせ、先に店を出る様に指示した。
「じゃあ先に出てますね。直ぐに来てくださいよ」
ニコニコ顔の刹那はケーキを持って店を出た。
俺は直ぐに店主さんに
「その抹茶ケーキを下さい」
と注文する。
「彼女さんへのサプライズですか?」
「あっ、分かっちゃいますか?やっぱり」
「ええ。その為に彼女さんを先に外に出したんでしょう?」
「正解です」
俺は店主さんからケーキを購入して店を出た。
「あれ?圭介さん、何か買ったんですか?」
「ああ。でも、何を買ったかは内緒だよ」
「え~っ! 教えて下さいよ~!」
「後でね♪」
「圭介さんの意地悪~!」
そんな会話をしながら俺達はアパートに帰った。
帰ってから刹那に俺が買ったケーキを渡すと、中を確認した刹那は物凄くビックリしていた。
「ウチがこのケーキ好きなの知ってたんですか!?」
「まぁ…ね」
「めっちゃ嬉しいです♥️ ありがとう圭介さん♥️」
喜んで貰えて良かったよ。
この後ワンホールケーキに蝋燭を立て、火を消し、刹那の美声でHappy Birthdayの歌を歌って貰って俺の誕生日をお祝いした。
今年の俺の誕生日は最高の物になった。
刹那が甘い物に目がないのは分かったが、流石にワンホールケーキ半分と抹茶ケーキをペロリと食べてしまったのには驚いたが。
それだけ食べてそのプロポーション……。何処にそれだけ入るのだろうか? 不思議だ……。
夕食は○ber ○atsで注文する。 その後、刹那を見送ってから眠りに着いた。
後日……刹那のSNSに昼食で行ったラーメン屋とケーキ屋が紹介されていた。
" 私のお気に入りのお店♥️ "
と書いてあり、その後2つの店は大繁盛した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます