第15話

結局朝食は和食(釣ってきた太刀魚を切って塩焼きにした物とお味噌汁と御飯というシンプルな朝食)にした。


丁度朝食の準備が終了した頃


「……おはようございます。ごめんなさい。本当ならウチが朝御飯を作らないといけないのに……。圭介さんに迷惑掛けちゃった……」


申し訳なさそうに刹那が起きてきた。 刹那の髪には寝癖(前髪がアホ毛みたいにピンと立っている。 全体的に少しだけボサボサッとした感じになっている)が付いていた。


…何だかこんな刹那の姿を見れるのは新鮮味があるな。 思わず俺は クスリ と笑ってしまった。


「ん? 圭介さん、何故笑っているのかな? ウチの姿、何かおかしい?」


不思議そうに聞いてくる刹那に


「洗面所に行って顔を洗っておいで。それから朝御飯にしようか」


と言うと、刹那は素直に俺の言葉に従い洗面所へ移動していった。


「キャー-ーーー! こんな姿を圭介さんに見られた!? 髪はボサボサだし、寝癖が!? だから圭介さん笑ってたんだ! 滅茶苦茶恥ずかしい!」


と絶叫する刹那の声が洗面所から聴こえてきた。




朝食を摂っている最中に刹那は一生懸命


「何時もはあんな感じじゃないんですよ! 今回は偶々で! あんな髪型じゃないんです! 信じてくれますよね? ね? ね?」


と言い訳してくる。 そんな刹那の姿もとても可愛く思う。


「大丈夫。信じてるから。……クスッ」


「あ~! 圭介笑った~! ひ~ど~い~! ウチ泣いちゃうぞ~(泣)」


「ごめんごめん。余りにも刹那が可愛くて。つい笑っちゃった」


「~//////。 だ、駄目だもん。ウチはそんな言葉には騙されないもん。 でも……圭介さんに可愛いって言われるのはめっちゃ嬉しい//////。 えへへ」


刹那のそんな仕草が滅茶苦茶可愛くて愛しく思う。


……本当にこの娘は俺が彼氏で良いのだろうか? 刹那にはもっとイケメンで甲斐性がある男の方が良いのではないだろうか? 俺は刹那につりあわないのではないだろうか?


ふとそんな事を思ってしまった。 すると、急に頬を膨らませて


「ウチは圭介さんだけしか見てないから。 圭介さんだけだから。他の人なんか眼中に無いから安心して♥️」


と言ってきた。俺は滅茶苦茶驚いてしまった。


……もしかして刹那は俺が考えた事が分かるのか?


「圭介さん、めっちゃ不安そうな顔してた。 もしかしてウチには自分はつりあわないって考えているんじゃ無いかな? って思っちゃったんだ。だから、違うかも知れないけど、言ってみました。 違ったかな?」


どうやら俺の表情から俺が考えてた事を読み取ったみたいだ。


「……その通りです」


素直に答えると


「じゃ、答えはさっき言った言葉が全てだよ❤️ 心配しないで❤️」


「……刹那」


すると刹那は顔を真っ赤にして恥ずかしそうに


「さ、さぁ。折角の御飯が冷めちゃう。早く食べちゃおう。ね、圭介さん」


「あ、ああ。そうだな」


何だか変な雰囲気の中、俺達は食事を再開した。





食後のコーヒーを飲みながらリビングでテレビを見ていると


「圭介さん圭介さん。 今日は何か予定はいってますか?」


俺の横に座っている刹那から質問をされる。


「ん? 特には予定は無いよ? どうして?」


「じゃあ、ウチと今からお出かけしませんか? ウチ、圭介さんと行きたい所があるんです」


「行きたい所? どこ行くの?」


「それは行ってからのお楽しみ♪って事で。 ねぇ、駄目?」


……芸能人がそうホイホイ外を出歩いて良い物なんだろうか? 色々面倒な事にはならないかな? しかも、一般人の男と。 刹那はトップアーティスト兼女優なんだから、スクープにもなりかねない。


そう考えていると


「ねぇ~! 良いでしょ~! 圭介さ~ん! 行こうよ~!」


と言いながら俺を揺さぶってきた。 危ない! コーヒーが零れる! それに酔っちゃう! 大変な物を其処らに出してしまう! 止めて!


「分かった! 分かったから! 揺さぶるの止めれ!」


「じゃあ、ウチとお出かけしてくれるの?」


「するから。でも、大変な事にならないか?」


そう言うと、刹那は首をコテンと傾げて


「大変な事って?」


「例えば、俺と一緒に居る所を写真に撮られるとか?」


俺がそう言うと、刹那は な~んだそんな事? と言って


「別に圭介さんとなら平気だよ❤️ むしろ撮られたいかも♥️」


いやいや駄目だろ? 万が一そんな写真が週刊誌にでも載った時には一大事だ。 刹那の芸能人生が終わってしまう。


「刹那……ちゃんとそこの所は警戒しないと。芸能活動出来なくなるよ?」


「そうなったら、ウチは圭介さんの奥さんになるだけだから大丈夫♥️ ウチ頭良いでしょ?」


……頭良いのかその考え方は……?


「と、とにかく、刹那と出かけるけど、警戒はちゃんとする事! 分かった?」


俺がそう言うと刹那は物凄い軽いノリで


「は~い♪ わっかりました~♪」


……頭痛い。 本当に分かっているのだろうかこの娘は。



俺は刹那が " 早く早く! " と急かしてくる中、身支度をする。


……服装はジャケットとシャツとスラックスだけど大丈夫かな?  財布の中身は……多分大丈夫。20000円は入っているから。 髪型は……何時もの髪型だけど大丈夫かな?(ワックスで少し整えた位)


鏡の前でチェックをしていると、刹那が


「大丈夫だよ~。圭介さんはどんな時も素敵だから♥️ 自信を持って♥️ さぁ、準備できたでしょ? 行こ❤️」


「分かったから、急かさないで。今行くから」


俺は愛車の鍵を持って刹那と一緒に部屋を出た。


そして駐車場に行き、愛車に鍵を刺そうとすると


「圭介さん、今日はウチの車でお出かけしよ? ウチが運転するから」


と言ってきた。


な、なんだと! 刹那の車と言えば、あのLのエンブレムの高級車じゃないか! 出来れば……運転させて欲しいなぁ。


「な、なぁ刹那。俺に運転させてくれない?」


「ん? 駄目♥️ 圭介さんにウチの運転する姿を見せたいから。今日は駄目」


今日はって言ったな! じゃあ今度運転させてくれるんだな!? 


刹那の言葉に従い今日は助手席に乗ろうじゃないか。


俺は刹那の車の助手席に乗り込む。


……シートの感触最高。 凄い安定感がある。 やっぱり運転したいなぁ。運転させて? 駄目、やっぱり。 まぁ……いいか。


く、悔しくなんか無いんだからね! 俺、大人の男だもん!


クスクス笑う刹那。 くそう! やっぱり悔しい!


刹那の運転で駐車場を発車し、俺達は刹那の行きたい場所に向かう事になった。






















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