第12話

俺と刹那は会社近くにある公園にやってきた。


今日は晴天で程よい日差しなので、公園で弁当を食べるにはもってこいだ。


公園は月曜日の昼間なので、余り人が居なかった。まぁ、お昼休憩のサラリーマンがちらほら居る位だ。


俺達は空いていたベンチに座り、刹那が作ってくれた弁当を拡げた。


弁当の中身は 若鶏の唐揚げ ポテトのベーコン巻き サラダ ウインナー 春巻き 等々各種ラインナップが揃って入っている。 滅茶苦茶旨そうだ。


俺は両手を パンッ! と合わせて


「じゃあ戴きます!」


それじゃ先ずは若鶏の唐揚げから……。


若鶏の唐揚げを口に運び咀嚼。 ……これは! 言葉では表せない程の美味しさだ。 噛む毎にジューシーな肉汁が口の中に拡がる。これはいくらでもいけそうだ。


刹那は俺が食べる姿をドキドキした様子で凝視していた。


「ど、どうですか? お口に合いましたか?」


「うん。とっても美味しいよ」


「良かった~♥️ 不味いって言われたらどうしようかと思った~。 味付けから全部ウチがしたんですよ。結構自信作です!」


「へ~っ、そうなんだ。刹那は料理が上手なんだな。これ、毎日食べたい位だよ。それくらい美味しい」


「~っ! ま、毎日食べたい……。そ、それならもっともっとお料理がんばらなくっちゃ♥️ さ、圭介さん、もっと遠慮なく召し上がれ♥️」


「おう。美味しい弁当ありがとうな」


「はい❤️ 圭介さんさえ良ければ毎日でも」


「や、刹那も仕事が忙しいだろ? 暇な時だけで良いよ」


俺が弁当を食べながらそう言うと、刹那は少し頬を膨らませて


「む~~~っ。ウチは毎日でも圭介さんの喜ぶ顔が見たいのに~。でも、圭介さんはウチの事を考えて言ってくれている訳だし……。分かりました。それじゃあ手の空いている時は作りますね❤️」


「おう。宜しく頼むな」


「はい❤️ 任せて下さい♥️ 圭介さんが絶対満足するお弁当を作って来ますね❤️ 期待しておいて下さいね♥️」


俺は刹那が作ってくれた弁当に舌鼓を打つ。


そしてあっという間に弁当を食べ終わってしまった。


……そう言えば、刹那の弁当は? 俺の分しかなかった様な?


「刹那、自分の弁当は?」


「圭介さんのお弁当だけですが?」


「いやいや、刹那も食べなくちゃ。お腹空くだろ?」


「ウチ基本的にお昼は食べないんです。……肥っちゃうから(ボソッ)」


何故か顔を赤らめて刹那はそう言ってきた。


……それはいけない。お昼抜きで仕事は。倒れたらどうするんだ。


「……よし、刹那。此処で少しだけ待っててくれるか?」


「? はい。圭介さんがそう言うなら此処で待ってます」


俺は刹那をベンチに残して近くのコンビニまで全力疾走する。 コンビニに駆け込んで サンドイッチ・軽いサラダ・お茶を購入する(お茶は俺の分も購入)。

そしてまた公園まで全力疾走。 そのおかげで往復10分位で済んだ。


息を切らして走ってきた俺を見て刹那はギョッとしていた。


「どうしたんです圭介さん!そんなに息を切らして!?」


息を整えた後、コンビニで買ってきた物を袋ごと刹那に手渡す。(俺の分のお茶は既に袋から抜いてある)


「せ、刹那のお昼ご飯買ってきたから食べなさい」


刹那はコンビニ袋の中身を確認して焦りながら


「で、でもウチはお昼は……」


「すべこべ言わず食べなさい! 刹那が倒れたらどうするんだ! もし、刹那が倒れたりしたら俺は滅茶苦茶心配になる! だから、俺の為だと思って食べなさい!」


あえて強めの口調で刹那を説得する。


「ウチの為に……でも、ウチ」


「……もし食べないと言うのなら」


「言うのなら?」


「今から刹那の呼び方を 由井さん に変える。しかも敬語を使う」


「!? そんなの嫌だ!? 食べる! 食べます! だからそんな意地悪言わないで~!」


刹那は急いで袋からサンドイッチを取り出して封を開け食べ始めた。


……もっきゅもっきゅ……。


何だかハムスターが食事を摂っているみたいでとても可愛くてつい笑ってしまう。


俺が刹那の食事する姿を見て笑っていたのに気付いた刹那は


「モグモグ……ゴクン! あ~っ! 酷いです圭介さん! ウチの姿を見て笑うなんて~!」


急いで口の中にあったサンドイッチを飲み込んで抗議してきた。


「や、悪い悪い。つい笑ってしまった。刹那が可愛すぎて」


「……////// それなら許してあげます////// もう……」


あまりにも仕草が可愛くてつい俺はサンドイッチを食べている刹那の頭を撫でてしまった。


「っ!? ゴホッ! ゴホゴホッ!」


頭を撫でたその瞬間、刹那は盛大に噎せてしまった。 ありゃりゃ。これはしまったな。 反省。


「も~!圭介さん! いきなりは駄目! びっくりするから!」


「ごめんごめん。悪かったよ」


刹那は俺の胸をポコポコと叩いてきた。全然痛くなかったけど。


刹那もお昼を食べ終えた頃


キキーッ!


公園入口の方から車の急ブレーキを掛ける音が聞こえてきた。 その音がした方を見ると、なにやら高級そうな車が止まっていた。 するとその車から眼鏡を掛けた知的美人がこちらに怒りのオーラ(?)を纏いながら歩いてきた。


そしてその知的美人さんは俺達の前に立って


「せ~つ~な~! こんな所で何をしているのかなぁ💢」


「し、篠宮さん……。こ、これには訳が……」


篠宮さんと呼ばれた美人さんに刹那が何やら言い訳をしている。


ん? これは一体どういった状況? も、もしかして……。


「いきなり現場から居なくなってなにしてるの! 探したんだよ! 連絡も無く2時間も仕事に穴空けちゃって! クライアントさん怒ってるよ💢」


「あはは……ごめんなさい」


篠宮さんに怒られ刹那はショボンとしてしまっている。


「…あの、すみません。刹那も反省していますので、その辺にしてあげて下さい」


俺は篠宮さんに声を掛けた。


「あら?貴方は……もしかして丹羽さん?」


「はい。そうですが?」


篠宮さんは俺の姿を観察する様に見てきて、何やらフムフムと納得した様子になった。


「確かに貴方なら刹那が惚れるのも納得だわ。結構私好みのイケメンだし」


「っ! 駄目だよ篠宮さん! 圭介さんはウチの彼氏だから盗っちゃ駄目!」


物凄く焦った様子で篠宮さんに食って掛かる刹那。


「大丈夫! 盗ったりしないから。 残念だけどね」


お、何やら篠宮さんの目がハンターの目になっている様な気がするが?


「ここは丹羽さんに免じて許してあげるわ。でも、次は無いわよ?」


「……ごめんなさい。もうしません……」


篠宮さんは俺の方を見て


「ごめんなさいね。丹羽さんに迷惑かけちゃって」


「いえ、別に迷惑だなんて。 それに、刹那が作ってくれた弁当旨かったですから」


「あらそう? それなら良かったわ」


「よく此処に居るのが分かりましたね?」


「丹羽さんの会社に行って聞いたのよ。もしかしたら丹羽さんの会社に行ってるんじゃないかな?と思ったから。そしたらBINGOだったという訳」


「成る程。それで」


俺はしょんぼりしている刹那の頭を撫でて


「俺に会いに来てくれたのは物凄く嬉しかった。けど、仕事に穴を空けたら駄目だよ? これからはしないようにね」


「……はい。ごめんなさい」


「分かれば良し! さぁ仕事に行って謝っておいで」


俺は笑顔で刹那にそう言った。


「うん。行ってくる。……圭介さん」


「うん? 何だい?」


「ウチの事……嫌いにならないでね……」


「大丈夫だよ。心配しないで行ってきな」


「……うん! ウチ頑張ってくるね!」


そう言って刹那は車の方に向かっていった。


「丹羽さんは男前だね。感心しちゃった」


篠宮さんがそう言ってきた。


「全然。普通ですよ普通」


俺はそう切り返す。


「ふふっ。じゃあ失礼しますね」


篠宮さんはそう言って車の方に向かって歩いていった。




……何だか疲れたなぁ。


俺はふと腕時計を見ると、げっ! 後5分で昼休み終わりじゃん!


俺はその場に置かれていた弁当箱を急いで片付けて会社にダッシュで戻った。





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