第9話
「……は? 刹那さん今何と?」
「だから、私と圭介さんは恋人同士だから私がくっついて座っても問題ないと言いましたが?」
……刹那ちゃん。それは今口にしちゃ駄目なフレーズ。
「えっ? 刹那さんと丹羽が恋人……? またまた、そんな訳」
「(ムカッ) じゃあ貴方は私が嘘をついていると言いたいんですか? 何故私が初めて会った人に嘘を言う必要があるんです? 嘘をついて私に何のメリットがあるというんですか? 私に分かりやすい様に説明して下さい💢」
刹那ちゃんは怒りを隠しもせずに赤坂に食って掛かった。 刹那ちゃんの勢いに赤坂はオロオロとしだす。
そのやり取りを周りのお客さんが聞いたみたいで " 何だ? 喧嘩か? " とザワザワしだす。
……不味いな。これではやがて此方に注目されてしまい、刹那ちゃんの正体がバレる恐れが出てきたぞ。
「刹那ちゃん、押さえて押さえて。穏便に……ね?」
俺は刹那ちゃんにそう言って宥めたが
「いいえ💢 この事だけは押さえれません! ウチと圭介さんが恋人だといけないみたいに言ったんですよこの人💢 圭介さんは同僚だから許せるかも知れませんが、ウチは絶対に許せません💢」
「い、いや、いけないとは誰も」
「黙りなさい! そう言った様に聞こえました💢」
駄目だ。刹那ちゃんは完全に頭に血が登っている。 赤坂は完全に怯えてしまっている。
「刹那! 俺が穏便にって言ってるんだ! 俺の言う事が聞けないというのか!」
俺は刹那ちゃんに対してキツめの言葉で怒ってしまった。 ごめんね刹那ちゃん。後で土下座でも何でもするから。
すると刹那ちゃんは
「……は、はい❤️ 圭介さんに従います♥️ 赤坂さんでしたっけ? 本当にすみませんでした。私頭に血が登ってしまってキツい事を言ってしまいました。申し訳ありませんでした……」
刹那ちゃんは赤坂に向かって深々と頭を下げて謝罪した。
「こ、こちらこそ失礼な事を言ってしまい申し訳ありませんでした。私こそ謝罪します」
と赤坂も刹那ちゃんに対して深々と頭を下げていた。
「これでこの話は終了! 2人ともそれで良いな!」
「「はい」♥️」
……一事はどうなるかと思ったぜ。 周りのお客さんも興味を失くしたらしく、此方を見なくなっていた。
赤坂はそのまま席に座り、生ビールの残りを一気に飲み干して一息ついていた。若干怯えているみたいだが。 そして刹那ちゃんはというと、顔を紅潮させ、何だか興奮気味の状態で俺の横に座ってきた(俺に密着する形で)。 そして
「うふふ。圭介さんに怒られちゃいました♥️ 圭介さん男らしかったなぁ……♥️ しかも " 刹那! " って呼び捨てで////// ……良い! 物凄く良い! 刹那 刹那……えへへへへっ」
と悶える始末。 刹那ちゃんのこの状態に若干引いた事は黙っておこうと思う。 しかし、刹那ちゃんを怒らせると怖いんだな。憶えておこう……。
さ、さて気を取り直して…と。
「な、何だか重い空気になっちゃったな。飲み直そうぜ! あ、すみませ~ん! 生ビール1つとブドウ酎ハイ1つ追加お願いしま~す! それと若鶏の唐揚げを1つお願いしま~す!」
俺は若干わざとらしく陽気な声で注文を入れた。
それから直ぐに飲み物が到着。そして数分後に若鶏の唐揚げもテーブルに届き
「じゃ改めて " 乾杯! " 」
「「 " 乾杯! " 」」
ジョッキを合わせて乾杯し飲み会を再開した。
暫くしてから和やかな雰囲気になった所で俺は気になった事を刹那ちゃんに聞いてみた。
「あのさ刹那ちゃん」
「………」
「あれ? 刹那ちゃん?」
「………💢」
何だか刹那ちゃんがお冠の様子だ。 どうしたんだろう?
「……刹那です」
「え?」
「ウチの名前……呼び方が違うもん! 圭介さんはさっきウチの事 刹那って呼び捨てにした。 ウチ、そっちの方が良い! 圭介さん、ウチの事呼び捨てにして! ちゃん付けは嫌だもん!」
「や、そう言われても……ねぇ」
「じゃあウチ、圭介さんが呼び捨てにしてくれる迄返事しないもん!」
これは困ったぞ。俺、生きてきた中で女性を呼び捨てにした事ないんだけど……。
悩む事数分。 ……仕方ない。返事してくれないのはねぇ。 意を決して刹那ちゃんを呼び捨てにしようと口を開こうとした時
「やっぱり圭介さんと話出来ないのは辛いです! ウチの我が儘を許して下さい~! 圭介さんお願い~!」
……あらら。先に刹那ちゃんが折れた。涙目で俺に抱き付き上目遣いで見てきた。
やっぱりこの生き物……滅茶苦茶可愛い。
「大丈夫だから。我が儘も可愛いよ刹那」
「……え?」
「だから、我が儘も可愛いって」
「……圭介さんが今ウチの事を刹那って呼び捨てに」
……そう。つい呼び捨てにしてしまったな。
「これからは刹那って呼ぶ事にするから。それで良いかい刹那?」
俺がそう言うと、刹那は滅茶苦茶嬉しそうな顔で何度も頷く。
「……あの~。他所でやって貰っても良いかな? 何だかビールが甘く感じるんだけど……」
頬杖をついてジト目で見て苦笑いしている赤坂からの苦情を受け、俺の顔は一瞬で真っ赤になった。
「そ、そうだ思い出した。刹那に聞こうと思ってた事があるんだった」
「圭介さんがウチに? なんだろう? ウチに答えれる事なら何でも答えるよ。 何かな?」
「テレビやライブの時の刹那は髪の毛の色は黒だよね? 目の色も黒だし。でも今は綺麗なブロンドで目の色は青だけど。 どっちが本当の刹那なんだ?」
「あ、それ? その答えはね、今が本当のウチです。ウチ ハーフなんです。 アメリカと日本の。 テレビとライブの時はカラコンとウィッグをしてますね」
「何故カラコンとウィッグを?」
「そっちの方が日本人のアーティストに見えるでしょ? ウチ、余り目立ちたく無いんですよ」
……いやいや、十分目立ってるって。 滅茶苦茶可愛くてスタイル抜群なんだから。しかも歌も天使の歌声だし。
「それに、変装を解いたら街を歩きやすいでしょ? まぁ、ナンパとか滅茶苦茶困るけど」
でしょうねぇ。それだけの容姿ならナンパなんて日常茶飯事だろうな。
「これが圭介さんが聞きたかった事の真相ですね❤️」
「了解。理解した」
「成る程ねぇ。刹那さんと分からなかったのも納得だね」
俺と赤坂はウンウンと頷く。
さて、そろそろ飲み会も終わりにしようか。 現在の時刻は PM10:00を廻っていた。
「よっし、じゃあお開きにしようか」
「そうだな。じゃあお会計っと」
「あっ、じゃあウチの分を……」
「刹那は財布引っ込めて。刹那の分は俺が払うから心配しないで良いよ」
「お~っ。丹羽、格好いい~♪」
「でも、それじゃ悪い」
「良いの良いの。俺は刹那の彼氏なんだから。彼女の分も払うのは当然!」
刹那にそう言って、レジに赤坂と2人で会計をしに行く。
「……圭介さん……。めっちゃ好き♥️ 愛してる♥️」
俺達の後で刹那がボソッとなにやら呟いていた。
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