第8話
刹那ちゃんのライブが終了し、武道館の外のベンチで俺達2人はライブの余韻に浸っていた。
「なぁ丹羽……ライブ最高だったな……」
「ああ。最高だった。あれなら刹那ちゃんがトップアーティストなのも納得だわ……」
「……だろ?」
そろそろ人も疎らになりかけたので、俺達は帰宅しようとベンチから立ち上がろうとしたその時
~🎵 ~🎶
俺のスマホの着信音が鳴る。
誰だ? この心地よい余韻を邪魔する奴は……。
俺は若干不機嫌そうな感じで通話をタップした。
「はい 丹羽です」
『あっ、圭介さん♥️ お疲れ様です♪』
電話の相手は刹那ちゃんだった。
「刹那ちゃん? 今日はお疲れ様でした。ライブ最高に良かったよ。チケットありがとうね」
『本当に最高でしたか? 楽しめました?』
「もうバッチリさ。赤坂と一緒に声を張り上げて応援したよ」
『良かった~♥️ 圭介さんに喜んでもらってウチも嬉しいです♥️』
「お、刹那ちゃんはもしかして普段は自分の事 ウチ って言ってるの?」
『はっ! 今のは聞かなかった事にして下さい! めっちゃ恥ずかしい////// 20歳にもなって一人称が ウチ なんて子供っぽいから//////』
「いんや、全然子供っぽく無いよ? 寧ろ可愛いけど?」
『…………ぐはっ!』
「どうした!? いきなりダメージ受けた様な言葉は!?」
『……だ、大丈夫です。圭介さんの可愛いの言葉にやられただけですので。 圭介さんが可愛いって言ってくれるのなら、これから圭介さんの前では自分の事 ウチ って言いますね♥️』
「お、おう。分かったよ」
俺の横で赤坂が " 刹那さんからか!? そうなんだな!? " と騒いでいたがスルーする。
「で、急に連絡くれたけど、どうしたの?」
『ライブが終わって一息ついたら急に圭介さんの声が聴きたくなっちゃって……。迷惑…でした?』
もう何回言ったか分からないけど、何だ?この可愛い生き物は……。
「いや全然。俺も刹那ちゃんの声が聴けて嬉しいよ」
『圭介さ~ん♥️ ウチも圭介さんの声が聴けてめっちゃ嬉しい♥️ ウチ今めっちゃ幸せです♥️』
……俺の心臓にクリティカルヒットしました。
『ね ね、圭介さん。これから何か予定入ってますか?』
「これから赤坂と帰宅するだけだな。 ……いや、このライブの余韻に浸る為に飲みに行こうかな?」
俺は隣の赤坂に目線を送ると、俺達の会話が何となく聞こえていた赤坂がグッドサインを出していた。
「赤坂も飲みに行きたいみたいだから、いつもの居酒屋に飲みに行ってくるよ」
『え~っ! 良いなぁ! ウチも行きたい~!』
「でも刹那ちゃんはこれから打ち上げがあるんだろ?」
聞いたことがある。ライブが終わったらスタッフさん達と打ち上げという飲み会がある事を。
『打ち上げはありますけど~』
「じゃあその打ち上げに参加した方が良いよ。社会人だから付き合いはちゃんとしないとね」
『う~~~っ! 分かりましたよぅ。行きますよぅ。行けば良いんでしょ? ……圭介さんの意地悪』
……何だか心が痛いけど、付き合いは大切だからな。
「じゃあ俺達も移動するから切るよ?」
『あっ! 圭介さん! 今から圭介さん達が行く居酒屋の名前教えて下さい!』
「良いけど何で?」
『な、何となく知りたかったんです!』
何故か焦った様子の刹那ちゃん。
「そう……。えっとね、○民って名前の居酒屋だよ」
『ば、場所は何処ですか!?』
「○○町の○○番地かな」
『分かりました! じゃあウチ打ち上げ行ってきます! 圭介さん達も気を付けて行ってきて下さいね!』
「ありがとう。刹那ちゃんも楽しんでおいで」
『はい! じゃあまた後で!』
そう言って通話が終了した。 ん? 今何か刹那ちゃんの口から気になるフレーズが聞こえた様な気が……。 気のせいか?
俺は赤坂に
「じゃあ行くか」
「おお。ゆっくりと今日のライブについて語り合おうぜ!」
「付き合うよ。どんと来い!」
俺達は笑い合いながら行きつけの居酒屋まで移動した。
そして現在、居酒屋で飲み会中。 赤坂は生ビールとタコわさびと枝豆。 俺はブドウ酎ハイと若鶏の唐揚げとアジフライ。 2人とも4杯は飲んでほろ酔いになっている。
「しかしなぁ、お前の知り合いがあの刹那さんだったなんてなぁ。ビックリしたぜ!」
「俺もビックリだよ。まさかあの娘が刹那ちゃんだなんて知らなかったんだからな」
「何でだよ? 見たら分かるだろ? あの天使の様な顔立ちとスタイル」
「いや、初めて会った時は姿なんて見ている余裕なんて無かったんだから」
「ん? どういう事?」
俺はあの夏の出来事を赤坂に話した。
「……なんて偶然だよ。まさか助けた女の子が刹那さんだったとは」
「それな。彼女が俺の所に会いに来るまで分からなかったんだからな」
「っておい! 刹那さんがお前の所に会いに来ただと!?」
「ああ。帰宅したらアパートの部屋の前に立ってたんだ」
「……それで、刹那さんは何をしに来たんだ?」
……流石に結婚して下さい!って言いに来たとは言えないな。
「助けた事の御礼を言いに来てくれたんだよ」
「ほ~ん。律儀だな」
「俺もそう思う」
「で、それから?」
「それから?とは?」
「それだけじゃ無いだろ? さぁ続きを話したまえ」
うわぁ。面倒くさい事になってきたぞ。 ここは話を濁してっと。
「ああ。その後」
そこまで話した時、居酒屋の自動ドアが開き1人の女性が入店してきた。
「らっしゃいませ~!お一人様ですか?」
「いえ、連れが先に来てますので」
「そうですか。ではそちらにどうぞ~!」
その女性は美しいブロンドのロングヘアー。そして完璧なスタイルの持ち主で深々と帽子を被り、サングラスを掛けていた。
……ん? 何か見た事があるなぁ。
そんな事を思っていると、その女性は此方を見てニコニコしながら近付いてきた。
そして、女性がサングラスを外して
「圭介さん♥️ 来ちゃった♪ 一緒に良いかな?」
女性の正体は刹那ちゃんだった。
「刹那ちゃん!? 何故此処に!? 打ち上げはどうしたの!?」
赤坂も刹那ちゃんを見てビックリしている。
「打ち上げつまんないから抜けて来ちゃいました♪ 圭介さん達とウチで打ち上げ♪ 駄目ですか?」
……そんな嬉しそうな顔でお願いされたら断れないよな。 俺は赤坂に
「という訳なんだか良いか?」
と聞くと、赤坂は頭が取れるんじゃないか?とばかりに縦に何回も頷いていた。
「やった♥️ じゃあ失礼しま~す♪」
そう言って俺の隣に座った……が、ちょっと刹那ちゃん? 距離感間違えてませんか? 俺に密着する感じで座ってきた。 隣結構空いてますが? そちらに座りませんか?
「刹那ちゃん、もう少し空けて座ったら? 狭いでしょ?」
「ん~? 嫌です♥️ ウチは此処が良いんです♥️」
刹那ちゃんはそう言って俺の腕に自分の腕を絡めてきた。 ちょっと! 不味いって! 君は有名人なんだから! スクープになっちゃうよ!
焦る俺に対して刹那ちゃんはニコニコ顔で
「ね ね、ウチお酒はあんまり分かんないから、圭介さんのオススメ教えて♪」
「あ、ああ。オススメね。じゃあ俺と同じブドウ酎ハイで良いか?」
「じゃあウチそれにする~♥️ すみませ~ん。ブドウ酎ハイ1つお願いしま~す♪」
刹那ちゃんは店員さんを呼んで俺のオススメのブドウ酎ハイを注文する。
「えっ!? 丹羽、お前その距離は!? そして何で刹那さんは丹羽の腕にくっついてるの!?」
赤坂は滅茶苦茶困惑している。
「え~っとだな……これは」
「? 圭介さんとウチは恋人同士だからおかしく無いですよ?」
最大級の爆弾を投下する刹那ちゃんだった。
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