第12話 副団長達
あのあと、騎士団副団長エイダンは、魔導師団副団長エミリオに説教をされていた。この2人は双子の兄弟である。
似た顔立ちだが、髪の色素がちがい見分けがつく。優しいみてくれは同じ、中身も似てはいるが、考えが常識人の弟エミリオと、非常識人のエイダンである。
得意分野は違うため、お互いに別の道を目指し、互いに副団長にのぼりつめた。
いつものように、エミリオはエイダンに説教をするのだが、今日はいつもと違った。
「毎回、リーディア嬢に怪我をさせようとするのを止めないと、嫌われてもしらないからね」
「嫌われても、物にしてしまえば、どうとでも」
「なりませんッッ!まず!怪我を負わそうとするのが間違ってるって事にいいかげん気づきなよ。」
エミリオのツッコミが入る。
「今回はジルベルト様がいなかったのを、いいことに本気で狙っていっただろう」
「いつも団長に邪魔されるんだよね。今回は、お前のとこの師団長にまで邪魔されたし。お前まで、僕に魔法使うし」
「さすがに、誰の目からみても、とどめ刺す勢いだったでしょ。止められる人は止めるに決まってるからね」
「今日はやけに、しつこいなぁ。そんなに言われたって、チャンスはのがす気はないよ」
エミリオがいつもより長く言い続けるのには、理由があった。
あの日、あの後、うちの師団長の機嫌は最悪だった。
自分の妹が、気に食わない相手がいる騎士団にいた、と言うことも原因かもしれないが、明らかに甲冑を脱いだリーディア嬢を見てからの方が悪い気がする。
何が気に食わないことがあったのかはわからないが。
師団長に聞かれて、兄エイダンのあの行動は、あれはいつものことだと説明した。リーディア嬢に執着があり、怪我を負わせれば責任を取るといい、いつも迫っているのだと言うことを。
ときには、訓練後の着替えの最中に部屋を訪れようとしたこともあったということまで話してしまった。
兄はどうにかして、リーディア嬢を貰い受けようと機会をうかがっている。好意を持つのは、悪いことではないが、非常識人の兄の行動は、いかんせん方向性が間違っている。
その事は、師団長からも指摘されたが、兄がリーディア嬢に近づかないようにしろとも言われた。しかし、兄の行動は改められそうにないし、止められそうにはない。それこそ、毎回魔法で食い止めなけばならないだろう。
アプローチの仕方を変えさせないと、いけないが、すでにリーディア嬢はエイダンを危険視しているだろうし、エイダンが報われる事はないだろう。
普通に申し込みを、すればよかったのかもしれないが、うちは伯爵家で、特に功績があるわけでも、領地が繁栄しているわけでもない。断られる可能性はあった。
フォード公爵家の公爵は、亡くなった奥方とそっくりなリーディア嬢が、不幸せになるところへは、絶対に嫁がせないだろう。
リーディア嬢を幸せにできるアプローチを、公爵にするか、本人を振り向かせる努力をした方が絶対いいに決まっている。
3代前の国王が皇太子の時に、幼い頃から婚約し妃教育をしていた令嬢に、婚約破棄をした事件があった。
そのせいで、この国では、幼い頃からの親が決める婚約は認められず、子の意思が第一に尊重され、婚約時に本人たちの合意がないと婚約はみとめられない事になった。
家同士の繋がりなど、問題をかかえての婚約打診もあるだろうが、とにかく本人たちが理解し、同意さえすれば、政略結婚だろうが問題はない。
了解後問題が起これば、了解したのは本人たちなのだから責任は本人たちにある。だから、婚約を結ぶ際にあらかじめ、浮気したらどうするか、愛人はもたない、かけごとをしないなど、何をしたら有責になるかを決めておくのだ。
だから、兄がやっていることは、賭けに近い物がある。リーディア嬢に傷を負わせ、責任をとると言ったとしても本人が了承しないかぎり、兄は報われない。
今後も、師団長に言われたとおり、兄の監視は必要だ。
兄エイダンが犯罪者にだけはならないように、エミリオは弟として、頑張ろうと思うのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます