第17話あの日はとても晴れていた
今、俺らの前には真っ赤な炎を纏った剣士が立ちはだかっている。
「ノースを簡単に倒せるとでも思ったか?俺がいる限り、ノースの命は奪わせない。そして、ウォーティアのオーブもな。」
前にも増して、威圧感が強い。どこか恐怖で震える自分がいた。
すると...
「ノース、あいつらを突き飛ばせぇー!」
剣士がそう言うと、白馬が俺に向かって、一直線に走ってきた。
少し反応が遅れ、そのまま突き当たってしまう。
やばい、死ぬ...
そう覚悟したほどだった。
「そうはさせるかぁぁぁ!仲間を守れないなんて、冒険者失格だ!」
そう言って、俺をガーズが守ってくれた。
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急に、あの日のことを思い出した。
あれは、俺が6から7つの時だった気がする。
「ガーズ。今から山に行って、果物取りに行こうか。」
「じゃあ、拙者は荷物持つ!力持ちだからなんでも持てるよ!」
「そう。じゃあよろしくね。もうすぐ行くから、着替えておいてね。母さん、カゴを取ってくるから。」
そう言って、母はカゴを取りに玄関へと歩いて行った。
数分後、拙者と母は少し離れた山へ楽しく話しながら、向かった。山は、綺麗な川、小鳥のさえずりなど自然が、いっぱいだ。
「母さん、向こうにあるりんごを取ってくるから、ちょっと待っててね。すぐに戻ってくるから。」
「わかった。いってらっしゃい。」
母はりんごを取りに、山奥へと入っていった。その時、知らなかった。近くに秘境があることを。
拙者がしばらく母の帰りを待っていると、山奥がやけに騒がしい。
拙者は、何か起きているのかと思い、カゴを置いて、山奥へと、入っていった。
すると...
そこには、多量の血を流した母の姿、そして、その場を離れる、賊の姿がそこにはあった。
拙者は母に近寄るより先に、いろんなことが頭を巡らせた。
なんで、何もしてない母が死ぬのかと。
拙者は、頭がこんがらがる中、母の元へ走った。
「母!母!起きてるんでしょ?ねぇ!」
そう呼んでも、母は動かない。喋らない。立ち上がらない。
拙者は自然と涙を流していた。普段泣くなんてことありえないのに。どんなことがあっても、涙は流さないのに。
号泣していた。太陽が沈み切るまで。ずっと。
そして、その時思った。もう、ピンチの状況にある人は絶対に死なせないと。
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「拙者は決めたんだ。ピンチの状況にある人は絶対に死なせないと。拙者が守ると。」
目の前には、ガーズが盾を構えて守ってくれていた。
「ふん。たとえ守れたとしても、俺を倒せない。もちろんノースもな!」
「それは、どうかな。カエラ、暫く休んでいてくれ。少しの間だ。」
そう言うと、ガーズは少し距離を置き、剣士に向かって突進した。
あまり急だったため、剣士は白馬を走らせるのが遅れた。
剣士はそのままガーズに突き飛ばされ、白馬から振り落とされた。
「そんなことやられちゃ、居ても立っても居られませんよ!ガーズさん。白馬は任せてください!」
ファイスは白馬に杖を向けて...
「〈インフィニティウォーター〉!」
ファイスの杖先から、青い魔法が集まり、それが白馬えと向かった。
ファイスが水魔法!?俺は何が起きているのかわからなかった。
白馬は、水魔法を受けて、炎が剥がれ、怯んでいる。
「今です!カエラさん。やっちゃってください。」
俺はファイスの掛け声と共に走り出し、勢いよく、白馬に剣を振り落とした。
次第に白馬はドロドロになり地面に消え去った。
俺とファイスは、勢いよくハイタッチした。
一方ガーズは...
ガーズは、起き上がり、剣士へ盾をぶつけた。
しかし、一向に効く気配がない。
「俺はまだ炎を纏っているぞ。しかも、炎が消えたら、また纏えばいい。そして、お仲間さんはノースと戦闘中、さあどうする?」
「もちろん、立ち上がれなくなるまで、攻撃する。」
ガーズは本当に、剣士が立ち上がる暇もないほどの速度で、盾をぶつけている。
「どうだ?これでも、まだ余裕を持っていられるのか?」
剣士の鎧はボロボロでレイピアを持って、攻撃する気力も無くしていた。
「クッ...意地でも耐えようと思ったが、無理だ。
お前の勝ちだ。」
そう言って、剣士はドロドロになり、地面に消え去った。
ガーズはその場に倒れ込み、空を優しく見上げた。
「母。ちゃんと人を守れたかな?」
(うん、守れてたよ。強くなったね。もう立派な冒険者だよ。)
ガーズは、大粒の涙を流していた。何か、過去にあったのだろうか。
この一戦を終えて、みんなはまた一歩成長した気がした。
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