第15話氷結の剣士

「...ラ、...エラ、カエラ!」


俺は、ワズの声で目が覚めた。あまりにも寝心地が良すぎて、眠りが深くなりすぎたようだ。


「ごめん。すぐに支度するからちょっと待ってくれ」


「じゃあ、私たち下のリビングで待ってるから、朝ごはんもできてるみたいだし。」


そう言って、ワズとガーズは、下へ降りて行った。

俺も急いで旅の支度をし、リビングへ向かった。そのまま、みんなと朝ごはんを食べながら、今日の旅のことを話していた。


「今日行く「ウォーティア」は、海の真ん中にあるらしい。だからその近くにある「リアルド」って言う町でボートを借りる。それでいいな」


みんなはモグモグしながら頷いた。


「リアルドかぁ。どこかで聞いた話だが、月が丁度上に位置した時、氷結の剣士と呼ばれる、氷の鎧を纏った幻の剣士がいるらしい。拙者も、町の人も見たことがないと言っていたが、

まあ、単なる噂であろう。」


ガーズがまた、妙な噂を言ってきた。やばいな、おい。フラグがまた立ってしまった。

そう思いながら、俺らは朝ごはんを終え、リムを出た。


「よし、じゃあ、とりあえずリアルドを目指して歩こう。」


俺らは、リアルドは向かって、歩き出した。


綺麗な水が流れる川の近くを歩いていると、俺はふと疑問に思った事を思い出した。


「なぁファイス、ふと思ったんだがなんで炎魔法しか撃てないんだ?」


「あ、あぁそれは...その。」


ファイスは顔を赤らめている。そして、小さな声で理由を話した。


「炎魔法ってカッコいいじゃないですか...その、それだけです。」


それを聞いたみんな、空気諸共静まり返った。


「マ、マジか...ま、まあそういうのもいいんじゃないか。実際、威力は本物だしな。いいと思うぞ。」


「そ、そうよ。いいと思うよ。」


「ファイス!そういう選び方いいな!益々俺と気が合うかもだぞ!」


ガーズだけは、引いてはいなかった。

みんなの意見を聞いて、ファイスはさらに顔を赤らめた。

ちょっと異様な空気になったが、ガーズがいることでまた明るさを取り戻したのだった。


「や〜っと着いたぁ。ねえねえ、外も暗くなるし、早く宿屋探そ?」


やっとの思いで、リアルドにたどり着いた。まさに港町と雰囲気があった。

外も暗いので、今日は宿屋で一泊してから秘境に行くことにした。


「それじゃあ、また明日ね。」


一度、みんなと別れ、宿屋で朝を迎えようとしたが、あまりにも寝れず、俺はファイスとリアルドを散歩することにした。


あの噂なんて、すっかり忘れて...


「なんか、夜に散歩するっていいな。少し不思議な気持ちになる。」


「そうですね。僕もあまりこういうことはしないので。」


俺とファイスは町を一周して、船着場へやってきた。

すると、海の方から鎧が揺れる音が微かに聞こえる。

そこでやっと思い出した。ガーズが言っていた噂を。


「おい、ファイスやばい。多分あれのことだ。もう宿屋へ帰ろう。」


ファイスは氷結の剣士を見ているだけで動かない。

俺も氷結の剣士の方へ目をやると、

白馬に乗っている氷結の剣士の辺り一面の海は凍り、海に立っていた。

白色でなんとも美しい、レイピアを片手に、俺らの方へ来ているようだった。


俺がファイスに呼びかけても、動かずずっと氷結の剣士一点を見つめていた。

俺は一瞬でわかった。今の俺たちじゃあ、あんなバケモノは倒せないと。

俺はファイスを背中に乗せて、もうダッシュで宿屋へと走り出した。

すると、氷結の剣士も、馬の速度を早くさせ、俺らの元へ走り出した。蹄の音があたりに鳴り響く中俺はファイスを抱えて必死に走った。


俺は後ろも振り返ることができないほど本気だった。

急いで宿屋に入り、硬直状態のファイスを寝かせ、俺は部屋に入り、窓を覗いてみた。しかし、もう氷結の剣士の姿はなかった。

そして、そのまま布団にうずくまった。

まだ恐怖が残っており、夜は一睡も出来なかった。


朝になり、恐る恐る船着場は行った。


「カエラさん、目の下に隈できてますよ。結局、散歩しても眠れなかったんですね。」


と、ファイスが言ってきた。まさか覚えたないの!?


俺は、みんなに今日起きたことを早口で話した。


空気はすっかり凍り、何より一番驚いていたのは、ファイスだった。


「ぼ、僕が氷結の剣士に?そんなこと覚えてません。考えてみると、船着場へ着いたところから、記憶がないです。」


あの噂は本当だったのか。なんでファイスは覚えていないのか。謎が頭を巡らせながら、俺は、旅のスタートを迎えた。

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