第11話ワズの本領

朝の光が差し込み、俺はその眩しい光で身が覚めた。部屋で一通り支度をし、宿屋を出ようとした。


「あ、あのカエラさん‥でしたっけ。あの旅に役立つかなと思い、聖水を買ってきました。よかったら持っていってください。」


ゴルドから聖水をもらった。


「ありがとうございます。旅の途中で使わせていただきます。」


俺は遠慮する方が申し訳ないと思い、ゴルドからの品を受け取った。


集合場所に着くと、ワズ、ファイス、ガーズもいた。


「ガーズ!昨日はちゃんと寝たか?」


「ちゃんと寝たに決まっている。なんたって今日は秘境へ行くんだぞ!」


よかった…俺はそう思いながらガーズの両肩をがっしり掴み、笑みを浮かべた。

ガーズも昨日と気合いの入れようが違う。

今日は、秘境の怖さを十分知っているから、全員本気だ。


「それじゃあ、秘境へレッツゴー!」


ワズの掛け声と共に、みんなで大きく拳を空へと掲げた。


約1時間ほど歩いただろうか。段々空は黒ずみ、薄暗い雰囲気に包まれた。


「なんだこの天候、怪しいな。お、もうすぐ着くぜ!」


俺がみんなを元気付けようとするが、疲労と道中の薄気味悪さで、元気がない。

しかし、1人だけ、終始元気な奴がいた。


「おぉ、なんか魔物の住処みたいでいいな!緊張してきた。なぁ、そう思うよな?ファイス。」


「う、うんそうですね。けどこんな天気聞いてないですよぉ〜」


ガーズ…まあ、お前はまだ秘境の怖さを知らないだけか。

ガーズがファイスに問いかけるもやはり元気がない。


「着いたぞ。ここが第二の秘境、「ドルディア」だ!」


俺たちの前に現れたのは、植物が枯れ、何もかもが朽ち果てた場所。

こんなところなんて、想像もしていなかった。

すると…


「ウゥゥゥゥゥゥ……」


何やらうめき声がそこら中から聞こえる。


「なんなの、この気持ちの悪いうめき声。」


ワズが引く中俺はすぐさま、〈宝探し〉を発動させた。


「なんだよこれ。そこら中がゾンビだらけだぞ。」


そう。うめき声の正体は大量のゾンビだった。


それを聞いたみんなは震えた。


しかし、一つの希望が見えていた。ゾンビに視点を向けると…


ゾンビ 弱点:回復魔法、聖水


これだ!


「なぁ、ワズ。回復魔法を出す準備はできてるか?あいつらは回復魔法や聖水が弱点だ。」


「そうですか。それではお任せください。」


ワズが、もう一度杖を握りなおした。


俺らは、ゆっくりと、秘境の中を進んでいき、ついに、ご対面してしまった。

ゾンビだ。皮膚は溶けているみたいで、目は今にも垂れて、地面に落ちそうだ。


「今は、日和ってる暇はない!俺とファイス、それからガーズはさっきゴルドさんから貰った、聖水を渡す。それを使ってワズを援護する。いいな?」


2人は大きく頷き、戦闘態勢に入った。


すると、ワズの杖から眩しい光が出現し、大きく叫んだ。


「〈エンタイルリール〉!」


杖から出た光は、周りにいた無数のゾンビたちを囲むように、魔法陣となり、ゾンビたちは、優しい光に包まれ、あっという間に消し去った。


すごい。これが、魔術師の本気。とんでもない力だ。


「すごいな、ワズ!あっという間だったじゃねえか。」


「カエラ。まだ喜ぶのは早そう。何か大きいものが来てない?」


ほんとだ、地面が揺れてる!?

俺はもう一度、〈宝探し〉を発動し、確認すると、


(隊長賊 ゾルダック)


隊長賊?まさか、このゾンビたちは下っ端賊だったのか!?

この秘境は、すでに賊に狙われていたのか!?

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