第5話烈火の魔法使い

俺とワズは、魔法鍛治師のストーグを後にしてスフィー村から出た。


「さーて、この秘境地図を見たところ、1番近いのは、「オラビア」だな。」


そう言うと、ワズは浮かない顔をした。


「うぅ、「オラビア」...かぁ」


と、随分と気が落ちている。


「どうしたんだ?ワズ、何か「オラビア」で嫌なことでもあったのか?」


そう聞くと、ワズは言いたくなさげですごく小さな声で


「両親は「オラビア」で命を落としたんです。だから行くのが怖くて...」


ワズの両親は、オラビアで賊に討たれたようだ。それが怖くて、自分も同じような結末になるのではと震えながら話した。


「そんなに気を落とすなよ。両親のことがあってすげぇ怖いのは分かる。

俺も同じようなことがあったから。

だけど、もしワズがそんな状況になったとしても、俺がついてるから安心しろ!な?」


俺は元気付けるような言葉をかけた。しかし、勢いで言ってしまったが、俺がワズを守れるのか!?いや、守るんだ。絶対に。


「はい、すいません。でも、カエラさんがいると思うと、元気が出てきました。」


そして、ワズは笑顔を浮かべながら、俺が持っている秘境の地図で「オラビア」の位置を入念に覚えようとしていた。

しかし、秘境というところはどのようなところなのだろうか。不安で仕方がなかったが、ワズの元気な笑顔を見ると、少しだけ、冒険心がくすぐられた。

1番近いといっても、歩いて1時間ほどで行ける距離では相当ない。なので、「オラビア」へ行く道中にある、「ガルム」という街で一回休憩して行くことにした。


「なぁ、ワズはガルムについて、何か知ってるか?」


ワズなら何か知っているかもしれないと、訪ねた。


「ガルムは機械的な街で、工業技術が発達しているんですよ。例えば、石炭を燃料にして走る機械なんてものがあるんですよ。」


何だそれ。聞いたことがないな。ガルムという街、意外に興味がある。木が生い茂っている険しい道を歩きながら、ワズは続け様に


「後、ガルムには、特殊な魔法使いがいるんだそうですよ。聞いたところによると、火の魔法しか撃てないとか、だから、毎日仲間を探しに街中を歩き回っているそうです。」


魔法使いか、いいな。でも火魔法しか使えないってなると、つかいづらいか...でも腕が確かならいいかもな


「なぁワズ、もしまだ取られてなければ、仲間にするっていうのはどうだ?」


「その案いいですね。私も仲間は多い方がいいと思いますし。」


と、俺の案に大賛成してくれた。俺らはそんなことを話しながら、森のような場所を抜け、やがて、工場から多くの煙が立ち上る、工業都市「ガルム」へと、たどり着いた。俺は、どんなところなのかと、ワクワクしながら、街へと入った。中は、しっかりと道路が舗装されており、とても近未来的だった。


「私、久しぶりにここに来ました。前と比べて、店や工場が多く並んでいて、さらに街っぽくなってます。」


ワズもここへ来たことがあるのか。やはり、スフィーと比べ物にならないくらいの人の多さだ。


「さあ、本題に入ろうぜ。ちなみにどんな姿とか分かるか?」


やはり人探しには、手がかりが重要だ。ワズは何か知っているだろうか。


「そうですねぇ。服装まではわかりませんが、赤い髪だったそうです。ここにはほとんど黒い髪の人しかいないので、見つけやすいかと。」


俺らは、赤髪を目当てにその魔法使いを探した。

すると...


「あのー、少しいいですか?」


赤髪で魔法使いのようなとんがり帽子を被った顔立ちのいい男に話しかけられた。

赤髪?

俺とワズは一瞬見つめ合い、すぐさま目線を赤髪の男の方へ向けた。


「あー、全然構いませんよ。じゃあ、あそこのベンチにでも座ってゆっくり話しましょ。」


俺がそう言うと、3人は、ベンチに座り、赤髪の男が話し始めた。


「まず、私はファイスと言います。見ての通り、魔法使いです。突然ではあるのですが...」


まさか、まさかのまさか...


「私を貴方様のパーティに入れていただけませんか?」


やっぱりだ。ワズが言っていた通り、仲間が欲しいんだ。俺はワズと目を合わせると、ワズは大きく頷いた。


「私たちは、貴方のことは把握しております。それにちょうど仲間が欲しいと思っていたところなんです。なのでいいですよ。」


そう言うと、ファイスは俺に抱きついてきた。


「ありがとうございます!なんて優しい方多々なんだ。僕のことを知っている上でパーティに入れてくれるなんて。貴方達は神ですか!?今日からよろしくお願いします!全然タメ口でもいいですよ。後、もちろん知っていると思いますが、

僕は火魔法しか使えませんが、腕には自信があるのでそこはご心配なく!」


ファイスは今にも泣きそうだった。よほど嬉しかったのだろう。


「よろしくな、ファイス!」


「よろしくね、ファイス!」


俺とワズは喜んでファイスを迎え入れた。

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