第9話 私の一大決心
週末、友美の家で2人のチョコづくりがスタートした。本命チョコのほかにお世話に
なっている人たちの分も作った。桜太の分は最後まで悩んだ。現状、話せていない。
まだきちんとお礼もできていない。
結局、この前のお礼という名目で作ることにした。
「まずはチョコを湯煎で溶かして、次に...」
友美の的確な指示通りに作業をこなしていく。ひとりで作ったときは見る影もない、得体のしれない“なにか”が出来上がったが、今回は誰がどう見てもお菓子だ。
誇らしげな私を見る友美の目は優しかった。
ほんとうに友美が親友でよかった!
「友美、ありがとね。頑張るからね。」
「うん、負けるな咲彩!」
その目はなんだか寂しそうだった。
朝から“今日告白するんだ”と意気込んだおかげで1日散々だった。先生にあてられていることにも気づかず、あげくとんちんかんな答えで教室を沸かせた。穴があるならば今すぐ永久に引きこもりたい。
震える手でみんなにチョコを配る。桜太はやはり驚いていた。
「これ、お前が作ったの。なにが入ってるんだ。」
カチンときたのでいつもの調子で言い返す。
「いらないなら。返して。」
「いやだ。俺の。」
そういうと一口で食べた。私の拳くらいもあるマフィンを。
「うまいじゃん。ごっそさん。」
笑顔で言う桜太に恥ずかしさがこみ上げ、頬があつい。それを見たクラスメートにまたもからかわれ解放されたのはだいぶ経ってからだった。
今日谷野くんの部活がないのは確認済みだ。遅くなってしまったから帰ってしまったかもしれない。薄暗くなりつつある廊下を進む。谷野くんの教室からは一筋の光が。
谷野くんはいるだろうかと背伸びすると私は膝から崩れ落ちる。夕日をバックにキスしている男女の影が見えた。恥ずかしかったが思春期の好奇心はそんなものでは折れなかった。おそるおそる窓枠をつかんで立ち上がると中にいたのは紛れもない谷野くんだった。見なければよかったなんて言っても後の祭りだ。私はすぐにその場を離れようと走り出した。怖くて女の子の方は見れなかった。
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