第8話 親友の存在
あの事件以来桜太も、私がまた巻き込まれることを恐れた谷野くんからも避けられるようになってしまった。
クラスはおろか学校中が知らぬ人はいない大事件へと発展し、私と桜太はおしどり夫婦として名を馳せた。
いつもなら“誰がこんなやつと”と言い返すが桜太に助けられたということもあり反論せずにいた。すると年が明け2月に入ったころには“結婚まで秒読み”というアホらしい見出しとともに校内新聞に張り出された。
受験勉強のストレスもあり、友美に愚痴を吐き出した。
「私、桜太なんて好きじゃないのに。」
友美は優しく頭を撫でてくれる。成績優秀な友美はもう推薦合格で有名私立大への進学を決めていて、私の相談を快く聞いてくれる。
「ん-、そんなに噂が嫌なら本命に告白でもすれば。もうすぐバレンタインだし。」
「えっ。でも...。」
「もうっ。覚悟決めな。女は度胸だよ。それともなに、これから先も桜太と夫婦ってからかわれる方がいいの。」
「ぜっっっったい、ヤダ‼」
「なら行ってきなよ。」
「......わかった、バレンタインで谷野くんに告白する。」
「よし。頑張れ。」
私は覚悟を決めたのはいいが、1つ致命的な問題があった。
「だから、友美チョコづくり手伝って...。」
「あー咲彩、料理壊滅的だもんね。」
「そんなドストレートに言わないでぇ。」
「はいはい。じゃあ、一緒に作ろうか。」
教室には私たちの楽しそうな声が響いた。一瞬ドアが揺れた気がするけど気のせいだろう。友美とのチョコづくりにわくわくしていた私は,そのことを記憶の隅に追いやった。
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