第3話 嵐の前の静けさ
南側の窓から神々しい光が舞い込んでくる。しかし、固く閉ざされたまぶたは蚊の入る隙間すら与えない。まだ寝れる、と夢物語第二部の視聴を始めると体が軽く沈んだ、気がした。
と、次の瞬間、脳内にけたたましいアラームが響く。昨夜、意気込んで設定した早朝にもかかわらず容赦のない音で叩き起こされたのは、私1人ではなかった。
「朝早くから、大音量で目覚ましをかけないでって言ったでしょ‼」
夜遅くに床に入った母が来て即説教の嵐。何度目になるかわからない。
寝起きの悪さは超一流、な私には本来の起床時間の30分前、ひいては1時間前にアラームをかける、はた迷惑な癖がある。母はその被害者。4つ離れた弟も7つ離れた妹もさらには父も私並みの寝起きの悪さを誇るため、毎度のことながら母のみが犠牲になる。
睡眠の重要性をこんこんと説かれ、念書して終わるのだが、勿論そう遠くない未来には同じ現場が見られる。
だが忘れてはいけない。私にもデメリットがいくつかある。最も大変なのは、母が般若になることだ。
勘違いしないで欲しいのだが、般若に変身するわけでも、出店で背筋を涼しくさせるあの不気味なお面をかぶるわけでもない。
なんてことはない、顔が真顔になるだけだ。しかし、なんというか般若なのだ。というかそれ以外に表現方法がない。
「姉ちゃん、またやったのかよ。」
大きく欠伸をしながら弟の武尊が呆れ顔でこちらを見る。姉になんて態度だ!と喉まで出かかったが、よくよく考えれば私にしか非がない。反論をあきらめて食卓につく。
「お姉ちゃん、次は気を付けてね。」
海咲にまで言われてしまった。まだたったの10歳の女の子に。
「ふぁあ~。みんな、おはよぉ。」
頭ボンバー状態の父がパンイチで降りてくるが誰一人として眉一つ動かさない。
大橋家に平和な家族団欒が広がっていた。
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