第四十三の論争 五感の相互フォロー
非常に異常に短く感じた土日が終わり気が付けば月曜日の修学旅行の当日となった。
教師側がバスの座席を彼と隣にしてくれていた。
おそらく理由は彼を止めれるのは彼女しかいないということと、彼女も彼以外にあまりなじめてないことを憂いた采配なのだろう。
「ねぇねぇ…君が窓側に座ってくれない?」
「ん?なんでだよ」
バスに乗り込む寸前に彼が男友達と話している中彼を引っ張り耳元でささやく。
「だって…キミが窓側じゃないと…私と話してくれずに通路側のみんなとおしゃべりしちゃうんでしょ?」
「私…さびしいよぉ…」
「そんなんいままで腐るほど一緒に遊んだりしゃべったりしてるだろ?」
「そんなんじゃ足りない…だって修学旅行って言ったら思い出なんだよー?」
「別にオメーも俺と話さないからって思い出にならないこたぁねえだろう?それともそんなに俺が好きなのかー?」
彼としてはいつも通り冗談なのだが本当に告白を考えていた彼女の出鼻を思いっきりくじいてしまった。
「な、そんなことあるわけないよー!!」
「だろうな、じゃ俺は廊下側であいつらと話すよ、オメーの言う通り彼女となる人もできそうにないしなー」
「・・・」
昨日の私…さすがに焦ってたとしても言い過ぎちゃったな…
それにあんなにきっぱりと好きじゃないって言っちゃったし…
ああ…情けないな…
周りの…特に隣の人は思いの丈ほど修学旅行に胸を躍らせているが対極して彼女は自責と後悔に焼かれていた。
そんな彼は宣言通りに男友達と話だし彼女はつまらなそうに…彼の肩に頭をのせて眠る。
「おいおい…見せ付けてくれるね…このバカップルがよー」
「…たくそんなんじゃないっての…」
「さっきだって面と向かって好きじゃないって言われたんだぜ?」
「俺もこのアホのことなんてどうとも思っちゃいねえよ」
「眠い時にちょうどいい枕があったんだろ…」
「自分に言い聞かせてるのか?」
「っけ…」
彼はそうやって強がったが実はあっさりと看過されていた。
彼がそうやって言い聞かせなくてはいけないと思った要因はその触れ合った肩に伝わる寝てるにしては妙にテンポの速い脈だった。
「ねぇねぇ~!一個いる~?」
彼の後ろの席の女子が彼に話しかけ飴の入った包み紙をひらひらと軽く振って見せた。
「お、ありがてぇ!いただくぜ~」
ギリリと彼女が音を立て歯を食いしばり軋ませる。
彼女にモテないでしょといじられたりその性格が災いしてあまり彼は自分のモテ具合に気が付かないが惹かれている女子は一定数やはりいる。
寝たふりをしている彼女はむきに名て『寝相』という大義名分で彼に抱き着く。
いつも通りに彼はとりつくろうが驚きは隠せていない。
彼女との接点から伝わる暖かい体温、近くに迫る彼女の匂い、見慣れたはずの艶やかな彼女に目を焼かれる。
すやすやとかすかに聞こえる(偽りの)寝息と「五感すべてで」味わっている。
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