第四十二の論争 ツンデレになりつつある彼女

「それでー…?あの新聞はどういうことかなー?」

「ん?おお!見たか?大賞だぜ?すげーだろ!」

なんで私がこうやって怒ってるときに限ってそんなかわいい反応するのー!

「そうじゃなくって!どうしてあんなこと書いたの!?」

「ん?そりゃテーマがクリスマスだったし」

「あんな人の目につくことされて…私すっごくみんなに見られて恥ずかしかったんだからね!?」

「あー?いつもオメーが私のこと好き?って聞いてくるくせによー、ああやって素直になって欲しいんじゃないのか?」

「TPOをわきまえてよー!私と二人きりの時とか!デートの終わりの時とかさー!!」

「あんな風にみんなに知れ渡ったら…恥ずかしいよー!」

「なんでだよ!オメーがかわいいなんてみんなに知れ渡ってることだろうがよ!」

「ん…///」

また…そんなこと言ってー!もー!テレテレ…

「でも少なくとも私はいやなのー!!」


通りすがりの生徒「おっ、やっぱり仲いいなー、こんな人気のないとこでいちゃつきやがって」

「ほらー!こうやってちょっかい掛けられるじゃんー!」

「別にいいじゃねえか」

「キミがよくても私はキミのことが好きな子から陰湿なことされたりしそうなんだよー!」

「だったらなおさらこうやって俺の本気さを伝えればいいんじゃないのか?」

「もうもう!!」

「もうもうもうもうもうもうもうもうもうもうもうもうもうもうもうもうもうもうもうもうもう!!!!!!」

「うしさんだー」

(ってかコイツ前はそんなんだからモテないって言ってたのに…矛盾してんじゃねえか…)

「それで?何が不満だったんだよ…結局よー?」

「私はああやって目立ちたくないのー!!」

「でもこの俺とずっと一緒にいるんだから嫌でも目立ってるだろ」

「もうすっかりこの前の保健室の騒動が流布されてるぞ?」

「えぇー!!ほんとー!?」

「それも嫌だったか?」

「いやだよー!」

「まあそこはオメーの性格もあるだろうなー」

「じゃ、目立つのが嫌ならほかの男でも捕まえな」

…いぢわるな人だよー…本当に…私がキミのこと本当に好きなのが分かってていたずらに聞いてくるんだもんー

私の口からそういうのを聞きたいんでしょー?…いたずらに笑いやがってーもー!

立ち去ろうと踵を返そうとする彼の腰に抱き着く。

「いいよー!私もほかの人見つけるもーん!」

優しく彼もその矛盾にこたえるように笑いかけ彼女をひょいっと抱き上げる。

「ふふ…いい人が見つかるといいなー」

「俺のおすすめだとオメーの一番身近な人とかはどうだ?」

「確かにかっこよくて面白くて優しい人だけどー私には高嶺の花だよー」

「それじゃあその人に告白されたらOKするか?」

「されないとわかんないよー!」

「ふふふ…」

もとより密着していた二人だが彼がうんと近づき耳元でささやく。


あんまりに小さい声だったため聞き取れなかったが彼女は嬉しそうだ、さぞかしロマンあふれるセリフだったんだろう。

だが彼女たちにはもう間に割り込むような隙間がない。

彼女が聞き取れたのならば良しとしよう。

二人だけの世界にノイズが入らぬように。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る