第四十二の論争 ポエーム
何やらずいぶんと廊下に人だかりができている。
がやがやと騒がしい人ごみはみんな等しく軽く上を見上げている。
人見知りの彼女は気になって仕方ないものの近くに彼の姿もなく一人でその群れの中に飛び込む勇気がないため遠巻きに見ていた。
しかしなぜか彼女に気が付くと全員が道を開け彼女をちらちら見ながら「…ほら…あの子…」「あぁ!あの子か…」
「へぇー…確かにかわいいな…」
やはり内向的な彼女はたじろきひそひそと自分が嘲みの対象になっていると思い、恐怖を感じていると比較的仲のいいモブAに手を引かれた。
「おーw見てみろってwやっぱあいつすげえよな!!」
そういうと先ほどまで人ごみの中心で核のようになっていたところを確認すると、学校新聞がかけられていた。
「学校新聞?」
「ほら!そのポエムコーナー見てみろってw!」
そこには彼女の伴侶となる者の名前と彼の投稿した文章が掲載されていた。
どうやらまだ内容は見ていないが大賞を取ったらしい。
『クリスマスの飾りからこぼれ出る眩い光が闇を消した道をキミと行く
「手ェ…あったけえな…」
ハツラツとした純粋なキミと反するように不器用に、恥ずかしがった俺が呟く、スカして言っているが自責と後悔に苛まれてるんだぜ?
その日はどうにも…記録的な寒波だそうだ手先が冷えるから仕方なく手をつないでいるが…
これは日の目を見せてはいけないことだ、ポッケにいれて隠しておこう、ぬくもりとキミが逃げてしまわないように…
幸せは…身近に隠しておくに限る。手が温まり体が火照ってきた、これは恥ずかしいからなんてことはない、断じてない
しかし暑くて仕方がない、そう思い上着のチャックを開ける。
だが俺と違ってキミは寒かったんだな?一つの上着に二人で入り温め合った。
手を離された時にはやけに心が冷えたが、風が通り抜けたに違いない。
…そうだ、キミのせいで感情が高ぶるわけじゃないんだ、
だが…この胸の高鳴りは…
キミのせいだ』
「いやー…彼氏に好かれてるなー…あの子…」
「すごいよねー…私文章でこんなにドキドキしたの初めて…」
「愛されてるんだなー…」
「いやー…あいつも素直なとこあんだなー…ってどうした?顔色がトマトだぞ?それに…どこからか煙が…」
「今…あいつ…どこ…」
「へ?」
「早く…教えて…」
「お…おう…」
「ねぇ…ちょっと『おはなし』しよっか…」
「お…おう…」
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