第三十の論争 本音しかしゃべれない空間
「しまった!なんの前触れもなく唐突に本音しか言えない空間に閉じ込められちゃったよー!よよよ…!」
「な、何ィー!?」
「ど、どこかに出口はないのか?!」
「…どうしてそんなにうろたえてるの?」
「ああ?」
「私はいつも恥ずかしがりな君が私のことどう思ってるか冗談のない赤裸々な君を見たいのに…いや、でも少し怖いかも…」
「そんなの決まってんだろ」
「いつも照れてオメーに言えなかった本音がばれるからだ―――ああああああ!!いったそばからぁぁ!!」
「私はいつも本当のことしか言ってないからあんまりダメージはないよー…それよりも…私のこと…スキ?」
「首をかしげるな…かわいいから…」
「え?」
「あ」
「・・・私のこと…いつもどう思ってる?」
「そんなに俺をハメたいのか?」
「まあねー…例えば私が君を夜誘うときとかどうして断るのかとかー…」
「クソ!俺だって堪えてるんだよ!本当ならいつもお前の入ったふろの残り湯で料理をしたいし抱きしめてかおりや胸の感覚を味わいたいさ!」
「だがいつも塩対応の俺がそんなことしたらキャラが台無しだろ!いつも見栄張って我慢してたり拒絶してるんだ!クソが!どんどん本音が出てきやがる!」
「私に…そんなに欲情してたの?」
「ああ!そうだよ!ほらな?これで俺を見る目も怪訝なものになるだろ?」
「そんなことないよー!私…今とっても嬉しいんだからね!」
少し戸惑いを見せてもよさそうなものだが彼女はどこか安心したのか顔を真っ赤にさせてアホ毛を今までになく逆立てていた。
「そ…それこそ…君に顔を向けられないくらい…」
「照れる姿もかわいいな!今度からも不定期に本音を言って恥ずかしがる顔を見てやろうか!って一瞬思っただけでこれかクソ!」
「ック…もうこうなったら全部言ってやる!」
「いつも悲しませてばかりだが俺も甘えたいんだ!それを隠そうとオメーの曇り顔を見ようとひどいことをする…そんな自分が嫌なんだ!」
「オメーの夜の誘いも断ることが多いが本当は○○をピーーーして××をピーーーーしたいんだよ!」
「それから○○○○で××××××が@@@@@@で」
「そ、そんなの…私も我慢できなくなっちゃうよぉ…///」
「取り乱したな…」
「らしくないねー」
「まあいつも抑え込んでいた本性が出るときなんてこんなもんだろ」
「私はもう致死量のかわいいを食らったよー」
「もう絶対に言わないからな?こんなに本音は…」
「そうだよねー…でもうれしかったよー?」
「いつも…悶々としてたんだからね?」
「・・・」
「・・・うぅ」
彼女の中で何かがこらえきれなくなったのか大粒の涙をこぼしだした。
「どうした?」
「本当に…もんもんとしてたんだからね?キミに愛されてないんじゃないか、捨てられるんじゃないか…って」
「キミの気持ちを…本当にわからなくて…」
「それでも考えあぐねて…」
「わからないから君に…依存して…」
「ほんとうに…不安で…」
「・・・」
この空間は彼女にとって地獄に垂れた一本の糸のようなものであった。
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