第二十九の論争 彼女の優位性

クラス大勢の雑踏に耳をやりながら愛しの彼を探すと端正な顔立ちで黙って座っていた。

彼のその真面目そうな横顔に風がたなびく姿にはほかの女子たちもが思わず美しさに息をのんでいた。

すると彼は見られていることに気が付いたのかおもむろにベルトをカチャカチャと外し始めた。

「オメーら…何見てんだよ!ボロン!!」

「・・・!!!キャー!!!!」

彼の唐突な奇行に先ほどまで目を奪われていた女子たちが顔を赤くして悲鳴を上げひと段落つきひそひそと話し始める。

「彼って…黙ってたらかっこいいのにね…」

「ほんとほんと…せっかくあんなにイケメンなのに…動くと残念の極みだよね…」

「極み過ぎてスシローの期間限定商品みたいだよね…」


A「おいおい…さすがにボロンはだめだろボロンは…」

「あぁ?なんか見られてると無性に腹が立つんだよ…ああイライラする…」

A「多分お前にみんな見ほれてたんだと思うぜ?」

「あぁ・・・?勝手に見ほれるなってんだ…」

A「だからと言ってなぁ…」


「本当に…黙ってたらなぁ・・・」

「そんなこと言っても仕方ないよ…彼女持ちなんだし…」

「女のほうも黙ってたら美人なのにね」


嗚呼、この女どもはわかっていない…

彼の…彼の風情や性格を知った気でいるんだねー…

虫唾が走る。

たとえ…たとえ私は…彼の顔がなくなろうとも…

彼の顔が変わろうとも…

彼のその圧倒的な自信と…周りに気遣うやさしさに…

惚れたんだ!

まあ…あなたたち…

お前らには絶対にわかることはできないようなことだが。

私は…そんな奴らに・・・絶対に…渡さない!


私だけの…フフッ…私だけの…彼だ…


彼に甘えているときとは打って変わって敵対する者には容赦がないのは共通なのか

とんでもなく怖い目で女子をにらんでいた。



うっわ、こわ…あいつすっごい女子にメンチ切ってんじゃん…

…いまあいつ隙だらけだな…そうだ!


彼は何かをひらめいたようでゆっくりと彼女の背後から近寄りガバッ!!っと彼女のスカートの中に頭を突っ込んだ。


「キャァァァ!!!」

「ふぉぉぉぉぉおおおおおお!!!」

「バカヤローーーーーーーーーー!!!!」

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