第二十五の論争 彼の実力
コンビニのバイトとしてすべからくことがあるだろうに脱兎のごとく逃げ出した。
女の人の全力疾走ってなんか面白い。
会計を済ませた彼は先ほど購入したものを持ち追いかける。
百メートルほど追いかけると持久戦では分が悪いと思ったのかよほどの自信があるのか角を曲がるポイントで彼に向け手刀を下ろす。
こいつ…空手か?
彼はすんでのところでよけきったものの女の呼吸が乱れてないことに戦慄した。
「女は殴らないぜ?」
「さすが…私を狂わせた男だねぇ…まさかもう突き止めるなんて…」
「でも…そんな紳士じゃあ勝てないよ?」
こいつは言葉では冷静だが先ほど二度足の位置をずらした、緊張でこわばっている、さっきのレジの動きから見てこいつは左利きだ。
人間余裕のないときは本能的な動きになる、初撃は左のジャブ、懐に入り交わし次に来る右をブロック…もらったな…
彼の予想通り左からジャブが飛んでくる、しかし予想よりも断然早くかわすのにもギリギリだった、連撃の右を肘でブロックし彼は女の顎にしたから手をかけ上に向け力を籠める。
左手は女の背中をバシッっと強くたたき内臓をこわばらせ背筋に力が入ったことを確認し両手で挟み込むように重心をずらし背中から女を地面にたたきつける。
衝撃が背骨を通じて脳に届き意識は消えた。
「殴ってはないぜ?」
女が目を覚ますと椅子に先ほど自分がレジ打ちをした縄で括りつけられていた。
「私のもとに来るのが…ずいぶんと速かったけどそんなに会いたかったかなぁ?」
「余裕だな、それとも本当に俺への思いが強いのか?」
「いいや…普通に気になるんだよぉ」
「踏切の音だ」
「?」
「電話越しに踏切の音が聞こえた、そこから電話の場所を特定した」
「おそらく県内だということはわかっていたから電話のかかってきた時間で路線を突き止めた」
「場所がわかってもバイト先までは…」
「いつもお前は差異はあるがだいたい9時10分前後にに電話をしてきた」
「おそらく高校生のバイトが9時までしかできないからだ」
「電話ボックス周辺に砂をまいていたがタイヤ痕はなく足跡だけだ…つまり電話ボックスから徒歩10分前後の高校生応援のバイト先に絞られる」
「あとは根気強く見張ればって算段だ」
「私以外にも候補がいただろうに…どうして私だってわかったのぉ?」
「こんなに寒いのになぜ上着を着てないんだ?」
「お客さんにコーヒーを…まさか…」
「人使いが荒いよねー…あいつの上着を脱がせろってアバウトな指示をされてさー」
暗闇から両那がぬっとあらわれる。
「本当にメンヘラってリスカするんだな、」
「それだけで犯人だと?」
「いいや…ほかにもある」
「電話ボックスを特定したはいいものの待てど暮らせどオメーは現れない」
「いたのかもしれないが暗すぎてまったく見えなかった」
「だが左利きだというヒントはくれたな」
「電話ボックスの扉のドアノブにチョーク粉をつけたら受話器側に白がついていたからな」
「レジ打ちを左でしていた、これで確信に変わったな」
「面白い謎解きだったぜ?」
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