第二十五の論争 彼の報復


一面コンクリートの殺風景な部屋で彼は座りながら問いかける。

「さて、俺は三つの選択肢をやろう」

「①俺のことをすっぱりあきらめる」

「②俺の知り合いの怖いお兄さんたちとカニ漁船に乗る」

「③両那の好奇心を満たす」


「どれがいい?」

「お前に対してもう調べはついてるぞ?」

「親が死んで叔父に引き取られるもまるでネグレクトだってな」

「いなくなっても誰も何も言わないな」

「・・・そんな時に…君が助けてくれたんだよぉ?」

「私が中学生の時…引き取り手がいなくて追いやられるように学校に行かされた私を…みんなは憐れんだけど…君が助けてくれたよぉ」

「…そういや、ナンパしてたな…」

「忘れるなんてひどいよぅ…」

「その時に・・・君の幼馴染は…私のことをごみをみる目で見てきて…今でも忘れられないんだ…」

あいつの嫉妬深さが招いた事態だったか…

「なんで私じゃなくてあの女なのか」

「なんで私にあんな目をしたのか…」

「憎くて仕方なかったんだ…」

「なるほど…空手は我流か?」

「前の親がいたときに習っててね…」

「いつか君の彼女に使うことを想定して技を磨いてたんだけど…」

「両那…気持ちはわかるが待て…お前は俺の女が絡むと冷静さを欠くな…」

「話を聞く分には…こっちにも落ち度があった…」

「だがな」


「前言ったよな?」



「話を聞かない女は嫌いだと」

「両那さっき買ったビニール袋を使って床を汚さないようにしろよ?」

「どこまでやっていい?」

「外傷が残らなかったらなんでもいいさ」


「夜は長いぞ?黎明を祈れ」

両那の顔は今からの行動を楽しむのではなく怒りを発散しようとしているように見えた。



「いつまで泣いてんだ?」

「うぅ…だって…」

「もう済んだことだろうが…あいつになんて言われたのかは知らないが…少なくともお前のことを魅力がないなんて思ったことねえぞ?」

「本…当…?」

「俺が今まで嘘ついたことあるか?」

「じゃあ…嘘じゃん…」

「信じられない?」

「うん…」

彼女の頬を伝って滴る涙を舐め取る。

「汚いよ…?」

「そんなことねえって」

「俺はオメーの存在が一グラムでも消えるのが我慢できないんだ」

「おっと…ここにもっともっと大きなオメーがあるじゃないか」

「じゃあ早速」

「もう…///」

「俺の手の届く範囲なら…絶対に守るからよ…」

「いつも…守ってもらってばかりだね…」

「そうでもないさ」

「まあそうだとしてもオメーの親父さんに約束をしたからな」

「守るように頑張ろうとしたら頑張るってな」

「ふざけた約束だねー」

「約束は守るほうだぜ?」

「うそつき…」

「明日は休日だが…あまり歯形を残さないよう頼むぜ?」


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