第十の論争 痩せろ!

放課後帰り道コンビニへと寄り、彼女だけが肉まんを購入し帰りながら口いっぱいに頬張る。

少し肌寒くなってきた今日この頃に大きな肉まんを指先で持ち『熱い熱い』と言いながらも幸せそうに湯気の立つ肉まんを食べながら意中の彼に話しかけながら帰る。

先ほどの肉まんで腹が刺激されたのか、今度はスーパーに二人で入り、秋の味覚の代名詞紫の厚い皮に包まれた黄金色の甘さはまさにスイーツ、石焼き芋だ。

こちらは先ほどの肉まんと同じようにはいかず歩きながらしゃべりながらは難しいと感じたのか仲のいい彼と最寄りの公園のベンチへと腰かけてぺりぺりと皮をむいておいしそうに齧る。

彼たち彼女たちの幼き日を振り返るかのように公園を見渡しその風情に懐かしむ。

彼女のむっちりとした肉付きの良い体は見ているだけでもかわいらしく『あむ…あむ…』と少しずつ食べる。

しばらくは肌寒くなった秋風と公園のにおい、そして隣に座る最愛の彼女が幸せそうに笑顔で頬張る様子を黙ってみていた。

彼女も食べることに夢中でしばらくは何も話さずにしばしの沈黙が流れた。

その沈黙を破ったのは彼のほうだった。

「なんかさぁ…太った?」

「ギクッ!」

そう聞きながら彼女の下腹をつかむと彼女は豆鉄砲を食らったかのような反応をし口にサツマイモを残した状態でもごもごと話し始めた。

「んぐぅっ!…ごくんっ…ちょ、ちょっとだけだよー…」

「で、でもほらまだおなかは出てないし…」

そうはいっているが十分にもう腹が出ているといえるくらいには豊かになっていた。

それを彼女が自認できていないのは、彼女の腹よりも大きくそしてふくよかに育った胸に阻まれて自分の腹が見えないからだ。

「秋になったからってめちゃめちゃに食いやがって…ほら腹がつまめるぞ?(ブヨブヨ)」

「うぅ…や、やめてよぅ…」

制服の隙間から見え隠れする彼女の肌の色が黒の服とで大いに目立っていた。

「体重としてはどれだけ伸びしろがあったんだ?」

「じょ…女子に体重を聞くなんて失礼にもほどがあるよ!」

「答えられないんだな?」

「うぅ…し、幸せ太りってやつだよ!」

「はぁ…そうだな…」

「な、なによ…!その目線は!おなかばっかりみないでっ!」

「まあ…俺としてはいっぱいおいしそうに…幸せそうに食べる君も好きだぜ?」

「ほんと!?じゃあ私もっと食べるね!」

「まてまて、自分の都合のいいように解釈するな」

「このまま肥えていくようなら…俺の君の足にも影響があるだろう?」

「ほんとそればっかだな!もう!私と足はどっちが大事なのよ!」

「選ばれたのは綾鷹でした」

「しらないっ!もう!!」

「まあ待てって、オメーとしても痩せたいには痩せたいだろ?」

「君としては痩せてたほうがすき?」

「どうにも捨てがたいな…こうやってかわいさをもとめるなら太っていてもいいんだが…どうもオメーは歯止めがきかねえからな…」

「今の体重は?」

「…言わなきゃ…だめ?」

上目つかいで聞いてくる彼女に少しかわいいく感じ思わず『いいよ』と言ってしまうところだった。

「だ…だめだ!」

「ひみつだよ?」

そう言い彼の耳元でこしょこしょと囁いた。

「はぁ!?ななじゅ…むぐぅ…」

「ちょっと!秘密だってば!声が大きいよっ!!」

慌てて彼の口を押さえる。

「ああ…すまないな…驚きが勝った…俺に勝ってるぞ…?」

「う…うそぉ…」

彼女と彼の顔色が青ざめる。いくら彼女の背が高めだからと言っても明らかに太っている。

「やせろ…いいな?」

「はい…」

「とりあえずオメーの身長の168の平均の62kgまでが目標だ…」

悲しそうに苦しそうに彼女は残りのサツマイモを食べる。


(俺としては揉みごたえがあってシコいけどな)

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