第九の論争 迷って、保って、人間性

半裸のまま彼は理性を無くし本能のままに動いていた。


(そうだよな!俺だって今まで我慢してきたんだ!もう俺に失うものなんてないんだ!アハハ…アハハハハ…)

(オメーは何も考えずに俺に迫ってきやがって!俺だって考えてんだよ!将来のことをよ!)

(『やめなさい!俺』)

(この声は…俺の中の良心!?)

(『そうよ!今ここでやってしまったら、いくら親の世話があるからって子供ができたら学校はいけないわよ!』)

(ううむ…でもほらゴムは付けるし…)

(『あなたみたいなクソ童貞早漏包茎に正しいつけ方なんてわかるわけないでしょ!』)

(俺泣くぞ?)

(『現実とAVは全然違うのよ!せめて彼女の意識がはっきりとしてる時にイチャラブックスにして手コキ足コキ教えてもらいなさい!』)

(この天使めちゃめちゃ品がないな!)

(ぼわわわーん『オラオラ、やっちゃいなって…』)

(そ、その声は!)

(『お前の心の中の邪心だぜぇ~?』)

(ここまでテンプレ)

(『ここまでお膳立てしてもらってるだ~やらねえわけにいかねぇ~だろ~?』)

(クッ…た、たしかに…)

(『出たわね邪心!あなたの思い通りにはさせないんだから!!』)

(『ほらほら!もたもたしてる間にもあいつは眠っちまいそうだぜ?』)

(そ、そうだな早いうちに誘わないと…)

(『だめよ!せめてもっと意識がはっきりとしたときになさい!じゃないと彼女も悲しむわ!イチャラブこそ至高よ!』)

(「別に今でも酔った彼女の本音が聞ける十分なイチャラブックスだろ~?こいつが今を逃して童貞臭満載でするなんて目も当てられないぜ?」)

(『駄目よ!こいつはただでさえクソ童貞で顔頭性格最悪の男なんだから今できるわけないじゃない!』)

(『ああ、まったくだ!こんなスポーン地点だけいいような野郎には無理だ!』)

(『『アッハハハ!!!!』』)

(お前らもう二度と出てくるな…ぐすっ…うぅ…)

(???『このまま彼女を起こさないように縛って責め苦を与えてみたらー?』)

(そ、その声は…リョナ公!?)

(リョナ公「そうだ!君の心に住まうリョナ公だ!」)

(『まて!純愛以外ありえねえんだ!』)

(そ、その声は…)

(『そうだ!通りすがりの純愛主義者だ!』)

(う…うわぁ!とうとう知らない人が…)

(『まて!ここは彼女を百合に仕立て上げ男は消えるんだ!』)

(そ、その声は…)

(『そうだ!百合に挟まる男を絶対に許さない会会長だ!』)

(う…うわぁ!!!お…俺の頭から出ていけぇぇ!!!)


――――――数分後

「はぁ…はぁ…どっと疲れた…」

しばらくずっと論争合戦の会場にされていた脳内が解放された。

「すぅー…すぅー…」

彼女が寝息を立てて寝る姿を見て彼が癒される。

「…はぁ…こんなとこで寝たら…風邪ひくぞ?」

彼女をお姫様だっこして持ち上げ彼女の布団にまで運び布団をかけてやると彼女が酔っぱらったせいなのか「うえっへっへ…」とかわいげのない笑い方をする。

(なんていうか…だましてこいつに酒飲ませてことに及ぼうとして…ひどいことしたな…こいつも酒は慣れてないだろうに…)

彼女の寝顔を見て更生する。

「それじゃあな…おやすみ」

と返事が返ってこないことを知ったうえで小さく呟いた。


彼が彼女の部屋から離れ彼の部屋でくつろいでいるとスマホのバイブが作動した。



『どうだい?そのままやったかな?』

はぁ…あのおっさんも大概ヤバいよな…いくら信頼してるからと言っても相手は世間知らずの見通しの甘い高校生のガキだぜ?

なんて思いながら返事をする。

『どうも!、おせっかいだよ!』

『酔わせてヤるなんて最低だぜ?それにあんたの娘だろう?酒も慣れてないってのにひでぇ親だな』

「っけ…」

らしくないまじめなことを言わされ胸糞の悪い気分でイラついているとしばらくして打ち込むのに時間がかかったのか長文が送られてきた。


『ははは…すまないね…実は君を試させてもらったよ…これで娘を酔わせて無理やりやろうものなら娘の幸せなんて全く考えないクズ野郎だと思ってしまう結果になるのではないかとひやひやしていたよ…。だがやはりわざわざ君を試す必要なんて最初からなかったね…君のような誠実でちゃんと見通しの通った人になら…娘も任せられるね…ふつつかな娘ですが…どうかよろしくお願いします…』


(なるほどね…俺がそんなことするわけねえっての!)(だいぶ迷った)

(この馬鹿一家に一杯食わされたってなると…少し悔しいな…)

(だが…かなわねぇな…)

彼女は彼にかけられた今までよりも暖かく感じる布団の中で彼の優しさに触れる夢を見ていた。

もしかしたら、彼の思いとやさしさが通じたのかもしれないね。






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