第34話 一月下旬
いよいよ水城大学の試験か。俺は赤本を閉じながら、一気に不安にかられた。合格できる自信がなかった。TWINがなり確認するとこないだ図書館で知り合った大輝からだった。
【明日試験が終わったら、一緒に遊ぼない? 連れて行きたいとこがある】
【どこ?】
【秘密、秘密。試験が終わったら正門で】
俺は入学試験を終え、水城大学の正門で大輝を待った。正直、遊びたい気持ちじゃなかった。
「お待たせ、どうだった?」
大輝は合格する自信があるのか、明るかった。
「う〜ん、どうだろ。分かんね」
「まあ、もう終わったことだし。あとは結果を待つのみ」
「で、今からどこ行くんだよ?」
「友達の家」
「友達の家?」
俺は聞き返した。
「そうそう。みんなに竜二、紹介したくてさ」
俺は友達が増えることに少し嬉しくなった。
大輝の友達という人の家の前で「びっくりしないでね」と大輝に言われた。
良く来てるのか、大地はインターホンも押さずに、ドアを開けた。そこには男の人が三人いて、お酒を片手に持って「よっ」って言ってきた。
「これ、竜二。めっちゃイケメンしょ?」
え。俺は大輝の方を見た。
「超、イケメンじゃ〜ん。まじタイプなんですけど〜」
男の一人が言った。
「大輝、この人たちって?」
「あ、安心して。みんなこっちの人だから」
「こっちの人って、いつ俺がこっちの人って分かったんだよ?」
俺は大輝にカムアしていない。
「最初から分かってたし」
俺はいつから歩くカミングアウトになってたんだとショックを受けた。
「いいじゃん、いいじゃん。竜二くん、こっちきなよ」
その人は隣の座布団の上をポンポンと叩き、俺を呼んだ。
「初めまして、竜二です」
「何ー、ちょーかわいいじゃん。あ、あたしら、ここの近所の大学二年、よろぴく」
俺は初めて自分のことをあたしと言う男の人と知り合った。どうしていいのか分からなかった。
「酒飲めるの?」と他の男に聞かれた。
「いや、まだ十八なんで」
「だよねー。大丈夫、強要しないから。犯罪には手を出しませーん」
俺はちょっと意外といい人なのかと思い始めた。俺はコーラをもらい、みんなの話を聞き、相槌だけを打っていた。明らかにノリの悪いやつと思われたに違いないだろう。
「あっ、ゆうちゃん来たよ、ゆうちゃん」
ドアが開く音が聞こえた。
「おまた〜」って言いながら登場してきたのは、なんと菊池祐介先輩だった。先輩はすぐに俺に気づき、一気に男らしくというか、いつもの俺の前での先輩に戻った。
「竜二、お前、なんでいんだよ?」
「え、いや、え」
俺は吃ってしまった。
「何、二人知り合いなの?」
大輝が面白がって聞いてきた。
「高校の後輩」
祐介先輩がちょっとめんどくさそうに答えた。俺は先輩にここにいる経緯を説明した。
「竜二、お前はもう帰れ」
「ちょっとなんでよ〜」
俺を気に入ってくれてた男の人が駄々をこねたが祐介先輩の言う通り、大輝を残して一人帰った。
俺は風呂に浸かりながら、玲花経由で先輩からTWINが届いた。
【ごめんな、今日は帰らして。でもお前、まだやらないといけないことがあるだろ。まずは大学に合格しろ。そしたらまたみんなで遊ぼうな。あいつらもお前のこと気に入ってたし】
ポチャン
あ、やべ。絶望という名の音が風呂中に響いた。
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