第21話 9月下旬
勉強も大事だが、高校生活最大のイベント、文化祭が一週間後に迫っていた。クラスで屋台組とお化け屋敷組に分かれ、準備することになった。俺たち四人はお化け屋敷を選んだ。
「めっちゃ怖いの作ろうぜ」竜二は気合いが入ってる。
「何かテーマある人?」文化祭実行委員がまとめてくれている。
「学校の七不思議とか良くない?」
「ゾンビ系とか怖くない?」
「やっぱ病院っしょ」
各々、思いついたら口に出していく。
多数決の結果、日本最大で有名なお化け屋敷を習って、病院系とゾンビ系を混ぜ合わせることにした。それから毎日、ネットや無料動画でお化け屋敷の作り方を学んだ。教室を机とパーテンションで区切って、道を作る。保健室から人体模型、美容室の息子からいらないマネキンも借りれることになった。おばけ役に竜二と向井、他に男子五名が選出された。俺と玲花は入り口で懐中電灯を渡す係になった。女子は全員ナース姿、男子は竜二以外、全員お古のパジャマを着て血糊を塗ることにした。
「ここもっと頑丈に作ろ」
「これ隠れれなくない?」
「音楽どうするよ」
「ダメ全然怖くない」
俺たちは試行錯誤し、文化祭前日に何とかお化け屋敷を作り上げた。
竜二は一番最後に客を追いかける医者ゾンビだから、一番怖く、不気味にするために、女子たちが竜二の顔を血糊、や自分達が持っきた化粧品でメイクを施した。
「ったくよ〜。本番は明日だっての」
竜二がトイレで洗顔フォームを使って、水で顔を洗っている。
「う〜さび、大地、タオル」
俺はタオルを渡した。竜二は顔をふき、黒や赤くなっているタオルを見てから、自分の顔を鏡でみる。
「げ、まだ取れてないじゃん、あいつら何使ったんだよ」
「もうこんな時間だよ、みんな帰ったじゃん」
時計は九時を回っていた。今日だけは夜十時まで文化祭の準備で残ることは許されていた。ただもう俺たちのクラスはみんな帰っていた。
「仕方ないだろ。なかなか落ちないんだから。あんな顔で帰れって言われても帰れねーだろ」
「確かに、それは、俺も一緒に歩くの嫌かな」
「大地、ちょい先、教室戻ってて。俺、もう一回顔洗うわ」
「うん」とは頷いたものの、お化け屋敷状態になってる教室に、一人でいるのは怖い。まあ電気つけてたら大丈夫か。
血糊で塗られたマネキンを眺めながら、竜二のことを教室で待っているといきなり電気が消えた。
「竜二、竜二でしょ? やめてよ、俺、本気で嫌だから」
応答がない。
ガタン
何か落ちた
コロコロコロコロ
空き缶がの音
誰かが持ってきたポータブルスピーカーから音楽が鳴り始めた。自分でもびっくりするぐらい、初めてこんなに大声を出した。急いで教室のドアをあけた。
するとそこには懐中電灯で、自分の顔をしたから照らしている竜二がいた。
人生二回目の恐怖の叫び。 竜二が腹を抱えながら笑っている。俺も怖いのか面白いのか、分からなかったが涙が出てきた。
暗くなった校舎を背に、月明かりを二人を照らす。竜二はチャリをパクられたらしく、最近はバスで登下校している。
「マジごめん! あんなに怖がると思ってなくてさ」
背中をポンと叩かれた。
「別に怒ってないよ。まじ今、思い出しただけで、笑けてくる」
自分であんなに怖がったのを思い出すとまた笑えてきて、涙がまた出てきた。
「大地、今日は月がまん丸で綺麗だな」
竜二が夜空を見つめながら言った。
「そういえばさ、竜二」
俺はずっとあのバースデーパーティーから抱いてる気持ちをぶつけた。
「俺がゲイってみんなにバレた時さ、何で竜二が「俺が守る」って言ったのか、ようやくわかった気がする」
「あ〜そうだな。蓮のこともあったしな」
「蓮くんを知らない俺がこんなこと言うのもアレだけどさ。きっと天国の蓮くんも、嬉しがってるんじゃないかな」
「そうか?」竜二は少し嬉しそうにしていた。
「人もいないし、手、繋ごっか」
「大地、時たま、大胆だよな」
俺たちは恋人繋ぎをした。
「てかさ、竜二、あのスピーカーどうやって遠隔操作したんだよ。第一、電源入ってなかったしさ」
「嘘だ〜電源入ってただろ。だってさ、Bluetoothに出てきたし。『三年七組』って」
「いや……竜二……あれ……そもそもBluetoothついてないから」
竜二が俺をすごい目で見てきて、「いやーーーーーー」って言いながら走り出した。俺の手を離さずに。
本当はついてるけどね、Bluetooth。
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