第11話 七月中旬

 TWIN TWIN TWIN TWIN 


 朝からTWINがやけに激しい。


 俺はベッドの中から、そっか昨日あんな約束しちまったからなと一人頷いた。

 

 ついついノリで、というよりかは、大地が行くから俺も行くって言っちゃったしな。大地との初めての2泊3日の東京旅行か。くーなんだか恥ずかしいぜ。

 

 昨日、教室で起きた出来事を思い返すと、俺は枕に顔を埋めた。 


「大地、何見てんの?」

「あーこれ志望校のオープンキャンパスの案内」

「え。あの東京の?」

「そうだけど」

「行くの?」

「迷ってる。まだ一人で旅行したことないし」


「え、大地、それいつ?」

 春樹が違う大学の案内の紙を持ちながら俺の机に座ってきた。


「行くとしたら、8月3日と4日かな」

「俺のと一緒じゃん。でも、俺も迷っててさ。どうする、一緒にいく?」

 春樹が大地に旅の誘いをしているのに、少し嫉妬した。

「ちょっと玲花のも一緒なんだけど。あたしは親と行くけど」

 玲花がいつの間にか大地の隣の席に座っている。


「行こうぜよ」

 ついつい俺は歌舞伎調に口走ってしまった。


「竜二、行きたいの?」

 大地が子猫のような目で見てくる。

「おう。行きたい。みんなで東京。」

「いやいや、目的なんか違うから」

 春樹が忠告をする。

「いいじゃん。高校最後の夏の思い出作り!さっそくTWINグループ作るね」

 意外にも玲花がノリノリだった。

 

 あ〜やべ、昨日のこと思い出しながら携帯見返してたら、もうこんな時間。

 行ってきますと親に伝え、俺は家を飛び出した。なにせ、今日行けば明日から夏休みだからだ。


「竜二、遅い。しかも、なんでTWIN既読無視すんの?」

 駅に着いた途端、玲花にチャリを蹴られた。

「え。ごめんごめん、昨日さ、めちゃ眠くてさ、9時に寝ちまったんだよね。」

「小学生か」

 春樹に突っ込まれた。今日は春樹と大地の方が先に駅に着いたんだな。

「ホテルどこにするか決めてたのに」

 また玲花がチャリを軽く蹴る。

「竜二、どこがいいとか、ある?」

 大地が首を傾げながら聞いていた。

「どこでもいいよ、寝れれば」

 お前と二人っきりになれるならどこのホテルだっていいさ、大地よ。

「じゃあ昨日送った、学割が効く、ひとり一泊3980円の品川のココホテルにしようぜ」

 春樹のリーダーシップ、ほんと助かる。

「あたしもそこら辺でホテル予約するように親に言ってみるね」

 

 俺たちはどうやって行くか、何時に集まるか、東京に着いたらどうするかなど休憩時間毎に話し合った。ある程度のプランも決まり、俺はワクワクが止まらなかった。ただ、少し心配なことは、大地を目の前にして、夜に冷静を保ちながら、俺は寝れるのかということだけだった。


 6限目が終わるチャイムがなった。HR担当のハリマーが教室に入ってきた。


「えー明日から夏休みですが、くれぐれもハメを外さないように。高校3年の夏休みは受験勉強です。ここで勉強してないと取り残されます。なので、夏休みは土日祝日以外、教室を九時から十八時まで開放します。先生達も並べくいるようにするので、分からないことがあれば、職員室に来なさい、では解散!」


「よっしゃー夏休みスタート!」


「伊吹、お前は毎日学校にこい」


「ハリマー、勘弁してよ〜」


 クラスで笑いが起きる。

 

 大地が俺の方を振り向き笑顔で言われた。


「竜二、アイス食べて帰ろ」

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