第8話 少女は、ラムネが飲みたい

今日は外に出るのが嫌になりそうな暑さで、外に行くのも怠い私達は、和樹の家にいた。

外からは、風鈴の音と蝉時雨がやかましく響いていた。


「ねえ、何しようか? お祭りもやってないし、外に出ても熱中症で倒れそうだわ」


「昨日暑くなかったのに、今日は暑いんだね」


「そうなりそうな気温は否定出来ないけど、何もすることがない」


「俺も何も思いつかないぞ。 大体こんなバカ暑い気温で俺らは何をするんだ? 悠希にギャグでもやらせて冷やすか?」


「なんで、俺はいつから和樹の中でよくすべるギャグ担当になったんだよ? ってか俺はギャグ担当になった覚えすらねえよ」


「冗談だよ、冗談。 誰もギャグなんて言えねえから、安心したまえよ、鈴木君。 俺も何も言えないし」


「ギャグ言っても、どうせ暑いだけだからダメだよ。 こんな暑い日ならやっぱラムネ飲むのが1番でしょ!」


水夏ちゃんは目をキラキラさせて言った。


「ラムネかあ…。 悠希、この近くにスーパーあったっけ?」


「スーパーはねえよなあ…。 近くにコンビニはあるけど、行くのですら面倒臭いし、動きたくねえ…」


「ラムネか、あるかなあ…? 」


そう言うと、和樹は立ち上がって冷蔵庫へ向かった。


「最近、祭りなんて佐倉であったか? 」


「祭りは無いと思うけど…」


「ラムネがあったぞ! しかもアイスもある!」


ラムネを見つけた和樹の声が私の声を遮り、悠希に話していた私の言葉は、彼には聞こえなかったみたいだ。


「でかした、和樹!」


今日の暑さにうんざりしていた悠希が、ラムネとアイスを見つけた和樹の元へ行く。その場には、女子三人しかいない。


「あの二人は元気ね…。 中学生の頃から全く変わらない2人だけど、それはそれで友情が見れて良いわね」


「あの二人の友情は、私は久しぶりに見たな。 でも、やっぱり見れるのは良いね」


「仲良しでいいね、あの二人。 私もああいう友達欲しいなって思っちゃった」


和樹と悠希は中学一年生の頃から仲が良かった。

私は、今では佐倉に住んでいるけど、当時は少ししか佐倉にいられなかったから、あとの二年間は彼らの友情は見れなかった。

だからこそ、この友情を見るのは好きだった。


「ラムネとアイス欲しい人は手挙げて!」


「はーい!」


皆が手を挙げて、和樹がアイスとラムネを人数分持ってきてくれた。


「なんで和樹の家に大量にアイスとラムネがあったの? 最近この近くで祭り無かった気がするんだけど」


「昨日、鎌ヶ谷の祭りにラムネとアイス売りに行ってた叔父の手伝いした報酬に貰ってきたぜ。 俺はラムネとアイスが好きだから嬉しいと思って、大量にもらった」


「鎌ヶ谷のお祭りか、私の夏が終わる前に行ってみたいな。 そこでりんご飴とか食べたい」


「良いね、俺も行きたい。 今度鎌ヶ谷で大きなお祭りあるから、俺ら五人で行こうぜ」


「良いね、和樹! 私賛成するわ」


「うちも賛成!」


「それじゃあ満場一致で、鎌ヶ谷の祭り行こう!」


「お〜!」


そんな話をしているうちに皿に乗った氷菓は、水になり、暑さも和らいで、風鈴の音が聞こえるようになった。


「今日はここでお開きかな」


「だな、また来いよ。 その時は美味しいかき氷でも作って、家で待っているよ」


「和樹の作ったかき氷は、いつも美味しいもんな。 俺はかき氷をちゃんと作れないから、和樹が羨ましい。 今度教えてもらおうかな」


「そう言ってくれて、嬉しいよ。 教えるのはいつでも喜んで」


和樹は笑いながらそう言った。


「じゃあ、帰るね」


「またな」


そうして、家を出た。

この五人でいられる日が、いつまで続くのかは分からない。

ならばこの瞬間を楽しもう。

















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