2話 恋心

 学校の食堂で、チャーハンの大盛りを、


腹にしまいこんだ良太は、どこか、


物足りなそうに皿を見つめていた。


向かいの席では、関が「本日のスペシャルラーメン」を


もったいつけながら、食べ始めているところだった。


後に続いて、慎也がカレーを持ちながら、


「うわっ、もぅ食べ終わってるじゃん」と、


良太が食べ終わってるのを悲観しながら、席へと着いた。


「ハハッ、来るのが遅いんだよ」


「仕方が無いだろ、カレーは人気メニューだからな!!」




 良太が、カレーを配膳しているエリアに目をやると、


そこには、相変わらずの長蛇の列ができていた。


「よく、あんな長い列に並ぶ気が起きるよな?!」


見るからに並ぶ気が起きない、カレーのエリアから、


視線を戻しながら、良太は慎也に聞き返した。


「なんて言ったって、カレーは値段が、安いからな!!コスパ最高だぜ!!」


慎也はそう言いながら、最初の一口目をほお張った。


「ところでさ?!良太はいつ告白するんだ?」


何気ない慎也の問いかけに、良太は、一瞬、固まてしまったが…


「何で急にそんな話になるんだ?」


急な質問に、若干の焦りを感じても、


すぐに冷静になり、質問を切り替えした。


しかし、慎也は良太にさらなる追撃をする。


「今朝だって、何だかんだでいい雰囲気だったじゃん」


「いっそうの事、早く告白してしまえばいいじゃないか?」


「見てたのかよ?!」




 あの女子達に囲まれて、さらに、その女子たちに笑われてる状況の中、


慎也が自分を見ていた事に、良太は驚きを隠せなかった。


「いやぁ、確かに笑われてたのはきつかったけど…」


「良太のあの反応が、面白すぎて笑いを堪えるのに、必死に顔隠してたんだよ」


今朝の態度はあえて不機嫌な態度を見せていた、慎也であったが…


「えっ、今朝の事、怒ってなかったの?」


関が口にすると、


「怒ってたよ!!」


良太と慎也は、間髪入れずに関に言い返した。


「どっちなんだよ?!」


関は二人に言われた事で、困惑した表情を浮かべていたが、


すぐさま、何事もなかったのかように、ラーメンをすすり始める関であった。


良太と慎也は、互いに顔を合わせると、関の食欲に笑い出しそうになっていた。




 昼食が終わり、3人で教室に戻ると、


クラスの女子たちと、楽しそうに談笑している笹川が、目に入ってきた。




 笹川 心(ささかわ こころ)


誰ともでも仲良くし、クラスの皆に好かれている。


清楚(せいそ)な容姿に、男女の関係なく話す彼女は、


良太にとって、人生初めての意中の人である。


良太の密かな恋心を知っているのは、慎也だけである。


慎也も応援しているが、当の本人が、告白に踏み切れない事に、


もどかしさを感じている。




 良太は、机に頬づえを付きながら、笹川にみとれていると


「今が、ちゃぁ~んす」


耳元で、ささやく声が聞こえた。


「うぉっ」


驚いて振り向くと、そこには


ニヤニヤしながら、慎也が立っていた。


「見とれてても何も始まらないぞ!!」


慎也が、さらにささやいてくる。


「今、この幸せな時間を満喫できるのは、俺だけの特権だぞ!!」


と良太は言い返すが・・・


「ほほぅ、見てるだけで満足ですか?」


と慎也が詰め寄る。


「何々?何の話?」


と関が近づいてきた。


「いやぁ、良太にはですね…実は秘密が…」


慎也が関にそう告げた時、クラスメイトの小森が近づいてきた。


「面白そうじゃん!!俺にも教えてよ」




 小森 京介(こもり きょうすけ)


小森は、去年の2月ぐらいに東京から、神鳴町に引っ越してきた。


まだ、特定のグループに入っていないため、誰にでも話しかける


都会っ子。




 まさかの乱入に、慎也と関はどうしよう、


とばかりに視線で、良太に訴えかけている。


俺は、しょうがないなぁと、そぶりをして


「いや、大した事じゃないんだけど・・・」


そう言うと、良太は遠くを見つめながら


真面目な顔をして、


「関、慎也の関係を知ってしまって…」


「どうしたらいいか、わからないんだ」


「おぃおぃ、何をさらっと、うそをぶっこいてるんだ」


慌てて、慎也が訂正に入る。


「アハハハハハハ」


小森のツボに入ったのか、それとも、ただの空笑いか


小森の事を良く知らない良太には、判断ができなかった。


「今の真面目な顔で、そういう事を言うとは思わなかったよ」


どうやら、小森は純粋に笑ってくれたらしい。


「じゃぁ今度は僕が面白い話を聞かせるよ・・・」




 小森は、途端に真面目な顔つきになって、話を始めた。


「今、皆好きな人いる?」


顔を見合わせる3人組み


「気になってる人はいるけど、好きかどうかと言われると…何とも言えないな」


歯切れの悪い返答で、良太がはぐらかしたが、


小森は、良太にかまいもせずに話を続け始めた。


「今から話すことは、どうも、神鳴高校のうわさ程度の話なんだけど」


「絶対、好きな人と付き合える方法が、あるらしいんだ」




 良太は瞳孔が開き、若干前のめりで、小森の話に耳を傾けた。


もし、その、うわさが本当なら、実践してみる価値があるんじゃないかと・・・


笹川に告白できない良太にとって、


眉唾の話かもしれないが、


好奇心に負けて、いつにもなく、


良太は真面目な顔していた。

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