第4話 水

尻が痛くて気がついた。ここは、何処だ?


確か、俺は森の中で違法に設置されたら罠にかかり、更に弓で尻を射られて気を失った筈だ。


頭がボンヤリしている。矢尻に何か意識を奪うような薬が塗られてたに違いない。


ヒンヤリと湿った土の匂いがプンと鼻腔を満たした。森から何処か建物の中に運ばれたのだろうか?


目を開けて周りを見ようとするが、何も見えない?どういうことだ?


手足も動かない。手は背中側に回され両手首を、足も両足首をきつく縄で縛られている。


目が見えないのは目隠しされているからか。


喉がカラカラだ。身をよじりながら、掠れる声で「水」と声を絞り出した。


俺が意識を取り戻したのに気がついたのだろう、ザッザッと人が一人近づいてくる気配がする。


再び声を絞り出す。


「み、、、ず」


暫く自分を見下ろしていたであろう人間は、その後またザッザッと音をさせ何処かへ行ってしまった。


俺を助けてくれるのだろうか?水を持ってきてくれたらいいのだが。。。この状況ではあまり期待できない。。。


すぐに、今度は三人程であろうか、複数人の足音が近づいてきた。


そして、俺の横にドカリと座ると、大きなゴツい複数の男の手が、俺の身体をあちこちとまさぐり始めた。


「はじゃ、らけ!ほんじゃらふったった!」


俺の身体をまさぐりながら、男が突然、大声で何か喚いた。大量の唾液が体にふりかかる。


俺は恐怖ですくみあがった。


今度はぐしゃりと無造作に髪を掴まれ、顔を持ち上げられた。男が大声で怒声をあげる。


「はじゃっ!らけ、ほんじゃらべっだっだ!」


俺の顔にヨダレを飛ばしながら、顔の間近で訳の分からない言葉を喚いている。


目隠しされていて相手の顔は見えないが、物凄く怒っているようだ。。。


怖い。怖い。怖い。なんだこれは。口がワナワナと震え、涙が出てきた。


「あじゃっ、ばる!!こんじゃったべんで!」


ゴン。頭が地面に勢いよく叩きつけられた。


「た、、、す、け、て」


「ほもほもほんじゃる、ぐれおすべんで!」


今度は別の男が、ガシリと髪を掴み、俺の頭を持ち上げた。


すると、口に冷たいものが突き付けられた。


み、水だーーー!


必死で水を啜る。一気にゴクゴクと飲みたいが、髪を掴まれ、手が縛られているため中々飲みにくい。恋焦がれた水をゆっくりと飲む。


美味い!美味い!美味すぎる!!!


「ぐらいほんで!あんじゃってごらんぜ!」


俺に水を飲ませてくれる男が、先程から大声で怒鳴り続けている。


何を言ってるのかは分からない。不気味だが今はとにかく少しでも水を飲まなければ。


唇の感触からして木の容器だろうか?容器から水を啜り続ける。


容器が空になると、水を飲ませてくれた男は、無造作に掴んだ髪を放した。


ゴンと地面に頭を打ちつける。


「はら、ほげ、ごめで、ぼーぼーげ」


最後に捨て台詞を残して、男達は出て行った。


あまり芳しくない状況だが、水が飲めたことで当面の危機は脱した。


何か考えようとしたが、水を飲んだ安心感と疲労で、いつの間にか寝てしまっていた。


_ _ _


森?


いつから俺は森を彷徨っているのだろう。


なんで俺は裸なんだ?


誰が俺をここに運んだ?


駄目だ思い出せない。


どうして俺はここに居るんだ?


それより水だ水を探さないと。


水を見つけないと死んでしまう。


「ギャリオーーース!!!」


何だ!この森には熊がいるのか?


気がつけば夜じゃないか。


真っ暗だ。


ヤバい、何処かに隠れないと。


見つかる、見つかる、見つかる。


あぁ駄目だ!見つかってしまった。。。


暗闇の中に、何かいる。


あの暗闇の中で、息を潜めて、こちらを見ている。


姿は見えない。


だけど分かる。


逃げないと。逃げないと死ぬ、殺される。 


走れ走れ走れ!


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https://kakuyomu.jp/works/16816700427207084097

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