第366話 即心是仏その十七 天が崩れ大地が裂ける

 「このゆゑに古人いはく、「若人識得心、大地無寸土(し人、心を識得せば、大地に寸土なし)」。しるべし、心を識得するとき、蓋天撲落がいてんぼくらくし、迊地裂破そうちれっぱす。あるいは心を識得すれば、大地さらにあつさ三寸をます。」

 このようなことなので(一心一切法、一切法一心)、古人が言うことに「もし人が心とは何かを知ることができたならばちょっとの土もなくなる」。知らなければいけない。心とは何かを知り得たならば、天全体が崩れ落ち、大地全体が裂けてしまうのである。あるいは心とは何かを知り得たならば、大地はさらにその厚さが三寸増すのである。

 心=大宇宙の全存在=真実・真理なのだから、坐禅してそのことが体得できた時は自分と大地との境目がなくなる。だから土が有るとか無いとか関係はなくなる。心=天であり大地であるから、心と天・大地は相対的な関係ではなくなる。だからこれまでの相対的な心と天・大地の関係が消えてなくなる。天全体が崩れ落ち、大地は裂けるのだ。また、そうなった時大地はこれまでと違った姿を現す。厚さが三寸増したように現れる。

 そしてこのことは、本来のありのままの姿、本来の面目を取り戻すということでもある。坐禅することでこのことが体得できるのだ。そう思っている。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る