前のエピソード――第364話　即心是仏その十五　即心是仏の心

「あるいは「即心是仏」を参究し、「心即仏是」を参究し、「仏即是心」を参究し、「即心仏是」を参究し、「是仏心即」を参究す。かくのごとくの参究、まさしく即心是仏、これを挙（こ）して即心是仏に正伝するなり。かくのごとく正伝して今日にいたれり。いはゆる正伝しきたれる心（しん）といふは、一心一切法、一切法一心なり。」

　あるいは「即心是仏」を懸命に学び、「心即心是」を懸命に学び、「仏即是心」を懸命に学び、「即心仏是」を懸命に学び、「是仏心即」を懸命に学ぶ。かのような懸命な学びは、まさしく即心是仏を取り上げて即心是仏を正しく伝えていくのである。このようにして今日に至っているのである。正しく伝えられてきた心とは一心＝一切法であり、一切法＝一心なのである。

　道元禅師は即心是仏の四文字を入れ換えて示しておられる。前回までに書いたように、即、心、是、仏はすべて大宇宙の全存在、森羅万象、真実・真理そのものである。だからどのように入れ換えても同じことなのだ。そう考えている。

　だから即心是仏つまり真実・真理を取り上げて即心是仏つまり真実・真理を伝えるのだ。

　今ここにある心は一切法つまり一切の全存在、真実・真理であり、一切の存在、真実・真理は今ここにある心なのだ。

　我々はちっぽけな存在であるけれども、今ここにある我々の心は大宇宙の全存在、真実・真理そのものなのだ。そしてそれは坐禅した瞬間に実現し、実感されるのだ。