第353話 即心是仏その四 外道の説く「心」②

 「この霊知、ひろく周遍せり。凡聖含霊ぼんしょうがんれい隔異きゃくいなし。そのなかに、しばらく妄法もうぼう空花くうげありといへども、一念相応の智慧あらはれぬれば、物ももうじ、境も滅しぬれば、霊知本性ほんじょうひとり了々として鎮常なり。たとひ身相はやぶれぬれども霊知はやぶれずしていづるなり。たとへば人舎にんしゃの失火にやくるに、舎主いでてさるがごとし。」

 (外道が説くには)この霊知(霊魂)は広くいたるところに存在している。凡人であるとか聖人であるとかに関係なく生きているものはすぺて異なることはない。そういう中で一時的に偽りの法の中に幻の花があるように見えるけれども、一念相応しい智慧が現れるならば物も環境もなくなってしまい霊知(霊魂)という本質的なものだけがはっきり常に変わらず存在しているのである。たとえ身体は破壊されても霊知(霊魂)は破壊されることなく抜け出すのである。例えて言うならば人家が失火して焼けてしまっても住人が家から出て去るようなものである。

 引き続き外道の考え方による「心」霊知・霊魂の説明である。

 死んで肉体は滅んでも魂は滅びず、永遠であるという。よく聞く話だ。時には仏教の坊さんまでが魂だとか霊魂は不滅だなどと言う。しかし道元禅師はそのような考え方は仏教ではないとおっしゃっている。

 仏教とはどういうものなのかがはっきりしなくなってきているのではなかろうか。困ったものだ。

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