第318話 身心学道その六 回心明心

 「あるいは金襴衣きんらんえを正伝し、金襴衣を稟受ひんじゅす。あるいは汝得吾髄にょとくごずいあり、三拝依位而立さんぱいえいにりゅうあり。碓米伝衣ついめいでんえする、以心学心なり。剃髪染衣ていはつぜんえ、すなはち回心ういしんなり、明心めいしんなり」。

 あるいは釈尊が摩訶迦葉まかかしょうに金襴衣を与え、摩訶迦葉が金襴衣を受け取って法が伝えられ、あるいは菩提達磨から大祖慧可が「汝得吾髄(お前は私の髄を得た)」と伝えられ大祖慧可は三拝して自分の席に戻って立ったということがある。六祖の大鑑慧能だいかんえのうは米をついて日々を送っていたが袈裟(法)を伝えられた。これらは心を以て心を学ぶということである。剃髪して袈裟を着けることがすなわち仏道に心をめぐらせることであり、心を明らかにすることなのである。

 これらは仏法が正しく伝えられた時の様子である。これらのことはすべて真実・真理を知りたいという心、仏法を体得したいという心があればこそ実現したことだ。伝わり方は様々だが、心が肝要なのだ。

 真実・真理を知りたいということから頭を剃り袈裟を身に着けることは、これまでの心の状態を大きく転換し、仏法を知りたいという心を明らかにしていくことなのである。

 明心、心を明らかにするとは、頭の中の観念、頭の中に渦巻いている妄想を振り捨てることだと思っている。人間は頭の中の観念、妄想と現実の区別がつかなくなっていることがほとんどだ。それでは真実・真理から遠のくばかりだ。だから観念、妄想を振り捨てて心を明らかなものにしなければいけない。

 観念、妄想に絡めとられていた心を転回し、本来の心、大宇宙と一体である心とはどのようなものかを知らなければいけない。

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