第306話 仏性その百十五 莫妄想

 「師いはく、「莫妄想ももうぞう」。この宗旨そうしは、作麼生そもさんなるべきぞ。妄想もうぞうするなかれ、といふなり。しかあれば、両頭俱動するに妄想なし、妄想にあらずといふか、たゞ仏性は妄想なしといふか。仏性の論におよばず、両頭の論におよばず、たゞ妄想なしと道取するか、とも参究すべし」。

 長沙禅師が言うことには「莫妄想」である。この言葉の大事なところはどういうことなのかと考えなければいけないところである。妄想するなと言っているのだ。そういうことであれば、二つとも動くことに妄想はない、妄想ではないと言うのか、ただ仏性というものには妄想はないと言うのか。仏性の議論、両頭の議論をするまでもなく、ただ妄想なしと言っているのか。このようによくよく考えなければいけない。

 莫妄想、妄想するなかれ。この一言について道元禅師は様々な視点、切り口を提示される。

 構想するなとは何に対して妄想するなと言っているのか。切れたみみずの両方とも動いていることについてなのか。仏性について妄想はないということなのか。ただ純粋に妄想するなとだけ言ったのか。

 「莫妄想」という一言にも様々な観点がある。

 この後さらに道元禅師の問いと解説が展開されていく。

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