第273話 仏性その八十二 死を恐怖することなかれ

 「しょう使得すてするに生にとゞめられず、死を使得するに死にさへられず。いたづらに生を愛することなかれ、みだりに死を恐怖くふすることなかれ。すでに仏性の処在なり、動著し厭却えんきゃするは外道なり。」

 自由自在に生きて生きることに滞留することはなく、死に向かい合って死に邪魔されることはない。いたずらに生を愛して執着してはいけない、みだりに死を恐怖してはいけない。すでに仏性と一体となって在るのだから、おろおろ動揺したり、嫌って遠ざけようとするのは仏教ではない別のものである。

 坐禅した身心で瞬間瞬間を生きていく。この時生死が意識に上る暇はない。ただひたすらに行動しているだけだ。我々は今この瞬間に何をするかしかないのだ。そして今この瞬間において自由自在なのだ

 生きたい生きたいとどんなに願ったところで、今この瞬間に間違ったことをすれば死ぬこともあるだろう。

 死にたくない死にたくないと死から逃げ回っても、今この瞬間に死を迎えてしまうかもしれない。

 生きたい、死にたくない、といくら考えたところでどうにもならない。

 だから今この瞬間を一生懸命に行動するしかないのだ。ここでの行動には、じっと我慢しているということも行動に含まれる。何がなんでも動き回るだけが行動ではない。

 どう行動したら良いかは坐禅が教えてくれる。

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