第249話 仏性その五十八 当たり前のこと

 「あるいはいふ、聴教のともがら仏性を談ず、参禅の雲衲はいふべからず。かくのごとくのやからは、真箇是畜生しんこししくさんなり。なにといふ魔黨まとうの、わが仏如來の道にまじはりけがさんとするぞ。聴教といふことの仏道にあるか、参禅といふことの仏道にあるか。いまだ聴教・参禅といふこと、仏道にはなしとしるべし。

 あるいは言う者がある。経典の教えを聴く者たちは仏性について話すが、坐禅をする修行僧は仏性について言うべきではない、と。このようなことを言う者どもはまさに真の畜生である。なんという魔物に憑りつかれた者が、仏道に交わって汚そうとしているのか。経典を聴くだけということが仏道にあるというのか、坐禅するだけということが仏道にあるというのか。聴教だけ、参禅だけとうことは仏道にはないと知らなければいけない。

 道元禅師は当たり前のことを繰り返しおっしゃっている。大宇宙の真実・真理というのは突飛な、超自然的な、超人的なことではない。当たり前のことである。太陽の周りを地球が回り、心臓は動いて血を全身に巡らす。当たり前のことが真実・真理だ。

 坐禅はしなければいけない。それは絶対だ。しかし仏道を学ぶためには経典を読むことも大事だ。坐禅しながら経典を、正法眼蔵を読む。どちらか一方ではだめだ。当たり前だ。

 仏性がわからないから、参禅の者は仏性を語らないなどと訳のわからないことを言って誤魔化そうとしてはいけない。

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